日本神経学会は,医師のバーンアウトに対して先駆的な取り組みを行ってまいりました.そして,2019年10月,医師のバーンアウトに関連する要因を明らかにし,今後の対策に活かすためのアンケートを行い,脳神経内科医1,261名から回答を得ました.このたび,その結果が「臨床神経学」誌に報告されましたのでご紹介したいと思います.本研究は,日本人医師のバーンアウトに対する調査としては最大級のもので,今後のバーンアウト対策において重要な役割を果たすものと考えています.
まず評価尺度として選んだ日本版バーンアウト尺度の下位尺度の平均は,情緒的消耗感(情緒的な資源の枯渇)2.86/5点,脱人格化(患者に対する無情で,非人間的な態度)2.21/5点,個人的達成感の低下3.17/5点という結果でした.以前からバーンアウト研究の対象となってきた看護師と比較すると,情緒的消耗感は低く,個人的達成感は高いという結果でした.おそらく脳神経内科医は仕事から比較的高い達成感,効力感を得ており,それが消耗感ひいてはバーンアウトの抑止につながっているものと考えられました.
また本研究で注目すべきは,本邦の脳神経内科医のバーンアウトは,労働時間や患者数といった労働負荷ではなく,「自身の仕事を有意義と感じられないことやケアと直接関係のない作業など」と強く関連していたことです.これらを改善する対策を,個人,病院,学会,国家レベルで進めていく必要があると考えられました.加えてバーンアウトにおける男女の違いも重要なテーマですが,これについては久保,饗場らによる第2報で詳細な検討を行っています.
本研究は新型コロナ・パンデミック前に行われた調査ですが,バーンアウトが「自身の仕事を有意義と感じられないこと」と関連することから,自身の専門と異なる新型コロナの診療に従事する医療者では,バーンアウトのリスクが高まることが想像されます.以下は本論文にない個人の意見ですが,パンデミック前からバーンアウトのリスクに曝されてきた医療者は,現在,さらに厳しい状況にあるものと考えられます.病床数の不足などハードウェアの面ばかり報道されていますが,むしろ医療者をバーンアウトからいかに守るかの議論が必要だろうと思います.本論文は以下からDLできますので,ご一読いただき,この問題に関心を持っていただければと思います.
脳神経内科医におけるバーンアウトの現状と対策―第1報―.臨床神経Jan 26, 2021
まず評価尺度として選んだ日本版バーンアウト尺度の下位尺度の平均は,情緒的消耗感(情緒的な資源の枯渇)2.86/5点,脱人格化(患者に対する無情で,非人間的な態度)2.21/5点,個人的達成感の低下3.17/5点という結果でした.以前からバーンアウト研究の対象となってきた看護師と比較すると,情緒的消耗感は低く,個人的達成感は高いという結果でした.おそらく脳神経内科医は仕事から比較的高い達成感,効力感を得ており,それが消耗感ひいてはバーンアウトの抑止につながっているものと考えられました.
また本研究で注目すべきは,本邦の脳神経内科医のバーンアウトは,労働時間や患者数といった労働負荷ではなく,「自身の仕事を有意義と感じられないことやケアと直接関係のない作業など」と強く関連していたことです.これらを改善する対策を,個人,病院,学会,国家レベルで進めていく必要があると考えられました.加えてバーンアウトにおける男女の違いも重要なテーマですが,これについては久保,饗場らによる第2報で詳細な検討を行っています.
本研究は新型コロナ・パンデミック前に行われた調査ですが,バーンアウトが「自身の仕事を有意義と感じられないこと」と関連することから,自身の専門と異なる新型コロナの診療に従事する医療者では,バーンアウトのリスクが高まることが想像されます.以下は本論文にない個人の意見ですが,パンデミック前からバーンアウトのリスクに曝されてきた医療者は,現在,さらに厳しい状況にあるものと考えられます.病床数の不足などハードウェアの面ばかり報道されていますが,むしろ医療者をバーンアウトからいかに守るかの議論が必要だろうと思います.本論文は以下からDLできますので,ご一読いただき,この問題に関心を持っていただければと思います.
脳神経内科医におけるバーンアウトの現状と対策―第1報―.臨床神経Jan 26, 2021