『夜哭烏 羽州ぼろ鳶組』 今村翔吾著 祥伝社文庫
シリーズ第2作目です。
シリーズ1作目『火喰鳥』の重要な背景だった“明和の大火”から1年、江戸の街は復興の途上にあり、賑わいも戻りつつあります。
が、またまた不穏な火事が相次ぎます。
新庄藩火消、通称羽州ぼろ鳶組の頭取松永源吾はじめ配下の頭立った者たちは陰謀の匂いを嗅ぎつけます。
そして、源吾の好敵手である加賀鳶の大頭大音勘九郎が標的に…
悲愴な覚悟を決めた勘九郎と勘九郎を助け、陰謀を未然に潰そうとする源吾たち。
源吾の過去に関わりのある町火消の頭も新たに登場します。
1作目と2作目を読んでみて、私が好いなぁと思っているのは源吾さんの奥方深雪さま。
この方、実によく出来た奥様です。
美人でしっかり者で料理上手で情があって、行動力もある。
その上、算盤勘定に秀でている
この深雪さまの楽しいところは、源吾さんが自宅に配下の頭分を集めて会議をするとき、お茶を出したり食事をふるまったりしますが、その代金をひとりひとりから徴収するところです、もちろん夫の源吾さんからも取ります。
そうするのには深雪さまなりのきちんとした理屈が通っているんです。
取ってばかりではなく、取らない場合もあります。
そのときは、何故取らないかをちゃんと説明してくれます
「今日の旦那様は私人として力になろうとしているだけ。ただです」
「星十郎さんはお土産のお礼です。御馳走しますね」
彦弥さんと寅次郎さんは気の利いたお上手を言って支払を免れます。
ここで失敗しちゃうのが新之助さん。
彦弥さんと寅次郎さんにならってお上手を言おうとします。
「――――、そう、この“さより”のようにすらりとしておられます」
「私がさよりのようだと…」
「はい。――――瓜二つです」
なぜ深雪さまがご機嫌斜めになったのかわからない新之助さんに星十郎さんの一言。
「さよりは腹が真っ黒な魚です」
「」
作品自体は火と戦う男たちの命がけの物語で、陰謀も渦巻いてはらはらしますが、ところどころにこんな楽しく笑えるシーンがあります。
深雪さまは新之助さんをいじって楽しんでるんですね
2作目終盤では源吾さんとの過去のわだかまりを解消した、元町火消万組の頭魁の武蔵(たけぞう)さんがぼろ鳶組の仲間になります。
またひとり、凄腕の火消が仲間に加わって、ぼろ鳶組の陣容は厚みを増していきますね。
このシリーズ、最新刊は10作目まで出ているんです。
ハマっちまったんだもん、しようがないよね、ね…。