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経済の最新情勢から、世界の裏側、そして大人の為のアニメ紹介まで、体当たりで挑むエンタテーメント・ブログ。

世界が熱狂するバーチャルアイドル・・・「初音ミク」が切り開く未来

2012-03-03 13:19:00 | アニメ
 

■ 「初音ミク」ってご存知ですか ■


[[youtube:WzYssX-CcSY]]


「初音ミク」と言っても多くの方はご存知無いでしょう。
「オタク」を自認する私も、キャラクターこそ知っていますが、
「音ゲー」なるものが、どうやって遊ぶものか皆目分かりません。

・・・というか、白状すると私ゲーム嫌いなんです。
根気が無いので、1回2回プレーして上手く行かないと
早くも投げ出してしまいます。

だいたい、人の決めたルールの上で遊ぶ事が気に入らない。
会社のルールも気に入らない、社会のルールも気に入らない・・・
あれ?これって社会人失格では無いですか・・。

思わず熱くなってしまいました。
話がソレてしまいました。「初音ミク」の話でした・・・。

先日、スポーツジムのランニングマシンで走っている時、
マシンに付いているTVを何気無く見ていたら
NHKで「初音ミク」のロサンゼルス・コンサートの話題を放送していました。

エー?「音ゲー」のキャラクターがどうやってコンサートなんて開くの?
まさか着グルミが出てきて歌うのか??
そんな「セーラームーン・ショー」みたいなのでアメリカ人は喜ぶのか?

興味深々でTVを見ていたら、ステージに据付られているのは
大型のリアプロジェクション・スクリーンの様です。
CGの映像と歌に合わせて、なんとナマのバンドが演奏しています。

そして、ロスアンゼルスのオタク達が大勢、
日本語の歌に合わせてペンライトを振っているではないですか?

人生46年間生きてきて、何度か驚く光景を目にしましたが、
この光景にはビックリだぁー。
人間止めようかと思っちゃった・・・・。

■ 合成音声技術の粋を集た「初音ミク」 ■

しかし「初音ミク」って結構上手に歌うのでビックリ!!
はじめは、映像に合わせてアニソン歌手が裏で歌っているのかと思いましたが、
番組の中で「合成音声」による歌だと解説されていました。

合成音声って、あれだよな、タドタドシイ日本語を話すやつ・・・。
そういう認識はもう古い様です。
「初音ミク」の合成音声技術は、
日本語の発音と発音の間にある変化に着目した技術だそうです。

「オハヨウ」は単純に4つの音で合成すると不自然になります。
それを「オ」「ゥ」「ハァ」「ァ」「ヨォ」「ゥウ」(適当ですが)の様に
発音と発音の間の変化まで、音声化して組み合わせると
自然な発音に聞こえるというのです。

この様に「発音」から「発音」の組み合わせを500パターンくらいプログラミングして
歌詞を文字の単なる打ち込みから、「発音の変化の配列」に組み替え、
さらに音程の上下による変化のパターンを組み込むと、
「自然な歌」を合成音声で歌わせる事が出来るのだそうです。

ビックリだぁー!!

■ 最新技術をオタク文化に投入する日本人 ■

番組では合成音声技術の利用方法として、
咽頭ガンで声帯を無くした人の会話補助への活用や、
筋力が低下して会話を出来なくなる難病の患者の
意思疎通ツールへの活用が紹介されていました。

先端技術の活用としてはそちらの方が正統とは思うのですが、
オタク文化に投入して、これだけの支持を集めてしまう所が日本らしい。
いえ、むしろ日本の産業の未来を予見しているようです。

■ バーチャルアイドルの歴史は失敗の歴史 ■

実は「初音ミク」以前にもバーチャルアイドルの試みは存在しました。



「伊達杏子」は1996年にホリプロがデビュー?させたバーチャルアイドルです。
3DのCG技術が目覚しく進歩してきた時期で、
実際の人間に近いビジュアルを与えて、
将来的に現実のアイドルとして育てようとしました。

しかし「伊達杏子」さんは私個人としてはどうも「キモチワルイ」。
「カワイ」くないというか、感情移入出来ないというか・・・
なまじ現実の人間に似ているだけに、
本能的にニセモノを受け入れないのかも知れません。

ホリプロ的には、様々なメディアへの露出で知名度を上げていって、
将来的には、コマーシャルなどもこなす「タレント」に育て上げるつもりだったのですが
この試みは見事に失敗します。

■ 2Dに徹した「Chappie」(チャッピー) ■



一方、徹底して2Dでシンプル化した
バーチャルアイドル(クラクター)もデビューします。

京都のデザイナー集団「グルーヴィジョンズ」が作り出した「Chappie」です。
「チャッピー」のキャラクターと商品企画やCMをタイアップさせて、
世の中に「浸透」させてゆく試みが為されました。

ちょうどその頃、「Post Pet」というピンクのクマが、
メール配達キャラクターという本来の使用目的から飛び出して、
独立したキャラクターとして活躍していた時代でしたので、
チャッピーも広告などでその姿を見る事が出来ました。

「Chappie」のデビューは1994年。
「着せ替えキャラクター」という位置付けでしたが、
CDを発売するなど、アイドル的な戦略も取られています。

「現代アート」の手法としては意欲的な「Chappie」ですが、
アイドルとして成功したかと言えば、答えはNoとなるのでしょう。

■ キャラクターに情緒を感じるられるか=萌えられるか ■



「萌え」と言う言葉は遣い古されて、擦り切れていますが、
これに変わる言葉はなかなか発明されません。

バーチャル・アイドルが成功するかどうかは、
「萌え」を感じられるかどうかに掛かっていると私は考えます。

「萌え」という感情を文字化するのは難しいのですが、
「対象物に自分の情緒を投影して、心がホッコリする感じ」と私は捉えています。
本来、ヌイグルミやペットなどに人が感じる感情に近いものがあるかも知れません。
「感情の交換が成立しない対象に、擬似的な人格を与えて、空想の中で交流する」行為かもしれません。

例えば「Post Pet」はしっかり「萌え」の対象になりますが、
「伊達杏子」に「萌える」人はちょっとアブナイ人・・・そんな感じです。

「Post Pet]は元がヌイグルミですから「萌え」の対象になり易いのです。
「ヌイグルミ」に話しかける行為は、子供のみならず大人の女性も良くやります。

一方、リアルが売り物の「伊達杏子」は、
どうしても反応にナマっぽさが付きまといます。
そうなると、バーチャルである事がむしろマイナスに働き、
リアルなアイドルに憧れる方が、合理的な行為に感じられます。

さて、「初音ミク」はどうかと言えば、
これは完全にアニメキャラクターの延長線上にあります。
ジャンルが「音ゲー」というだけで、
多くのファンはそのキャラクターに「萌え」を感じているのでしょう。

兼ねてから「歌って踊る」アニメキャラクターは沢山存在しました。
「ミンキーモモ」などが代表例で、それなりの需要もありました。
しかし「初音ミク」は、ユーザーの入力に従って歌って踊ってくれる、
まさに、オーダーメードのアイドルという強みを持っています。

そして、志を同じくする多くのファンが優れた曲を提供するという仲間意識も手伝って、
日本人のみならず、海外にまで多くのファンを獲得したのでしょう。

■ AKB48はリアル版「初音ミク」? ■

「初音ミク」の成功の原因の一つに、徹底的なシンプル化もあるかと思います。
「初音ミク」はあまり多くのビジュアルバリエーションを持っていません。
これはキュラクターのイメージをあくまでもステージ上のアイドルに限定する為でしょう。

一昔前のTVに出てくるアイドルは、徹底してアイドルを演じています。
あまり私生活的なイメージを持たせると、アイドルとしてのアイコンは希薄化してしまいます。

これと同様にひたすらアイドルを演じているグループがいます。
AKB48です。
彼女達は制服というコスチュームを身にまとい、
アイコン化に徹している様に思えます。
(グラビアなどでは水着姿やキワドイ姿も披露しますが・・)

前田敦子のドラマが不評なのも
ステージ上の彼女のイメージと乖離した役をファンが望まないからかも知れません。
変な「ナマ」っぽさは、「萌え」の邪魔になるのでしょう。

大島優子の方が、前田敦子よりも演技は上手ですが、
彼女程度の演技ならば、誰でも出来ます。

結局、制服を脱いだ「オニャンコ・クラブ」が、存在を確立できなくなった様に、
制服というアイコンから離れたAKB48も存在理由を失うのでしょう。

■ 「単純化」という日本のお家芸 ■

ちょっと強引かも知れませんが、日本の「萌え」文化は、
浮世絵の時代から続く、「単純化」の文化に強く結び付いているのかも知れません。

根強い人気を誇る「キティーちゃん」もシンプルこの上ないキャラクターです。

アニメキャラクターも、精密な3Dに比べれば、単純な造詣です。
そして設定されている性格も、居たって類形化されています。
要は、高度に記号化が進んでいるのです。

受けて側は、記号化された情報に対して、
約束通りの反応を返しているとも言えます。

歌舞伎の世界にも通じる、「役者と客の間の約束事」が、
アニメキャラとオタクの間にも成立している様に思えます。
この、一種、安定した関係、所謂「お約束」こそが
「萌え」の構造を支えているのかも知れません。

■ 世界に拡大する「お約束」 ■

ロスアンゼルスのコンサートホールで、
CGの「初音ミク」の歌に合わせてペンライトを振るアメリカのオタク達は、
この「お約束」を既に日本人と共有しています。

アメリカだけ出なく、日本アニメを見て育った多くの海外の若者が、
「お約束」によって世界的規模で繋がっています。

これこそ、今後日本に与えられた最大のインフラなのかも知れません。

しかし、このインフラは論理的に解析できるものではありません。
多くの企業が狙って、そして外しています。
「情緒」の数値化は難しく、論理から乖離した所に存在するからです。

「お約束」を共有しない人には理解出来ない世界なのです。

ですから、今後の世界を生き抜こうと思われる方は、
是非アニメを見て、オタクになる必要があります。
これからはオタクしか生き残れないのです・・・・。


と、オタクの自己擁護にしか聞こえない、本日のブログでした・・・。