■ 医療用X線フィルムの感光 ■
「反原発デマには気を付けろ・・・善意の暴力」の拍手コメントを頂いた方が色々な情報を教えてくださいました。
その方は、「福島の放射線は危険」と思われている様なので
私が今から書くことは、その方に意に沿わないかも知れません。
その事を最初にお断りして、頂いた情報を検証してみたいと思います。
福島原発周辺の医療施設で未使用のX線フィルムが放射線によって感光している様です。
これはフィルムの保存状態にもよりますが、
頂いた情報によれば、鉛製の箱に入れられていたフィルムだそうです。
この事実は、医師の方達より、国に連絡がいっているそうです。
α線は紙一枚で遮蔽されます。(但し、二次的な崩壊でβ線やγ線が発生します。)
β線はα線よりは浸透力はありますが、金属で遮蔽できます。
X線フィルムを感光させたのはγ線核種であるセシウム137でしょう。
但しある程度の厚みを持った鉛板は、γ線を遮蔽しますので、
X線フィルムが保存されていた鉛の箱の板圧は、それ程厚いものではないと予想されます。
飛行機に搭乗するときに手荷物検査でX線検査を行いますが、X線はγ線と同等です。
カメラのフィルムはX線で露光してしまう為、鉛の薄いシートの袋に入れる事は良く知られています。
X線フィルムがどの位の放射線による感光をしたのか詳細は明らかではありませんが、
ネットでは他の医師の方も、X線フィルムの露光の情報を載せられています。
鉛板で遮蔽された箱の中のX線フィルムのγ線による感光は、
確率的に発生すると思われます。
鉛板圧が薄ければ、鉛を透過するγ線が確率的に発生します。
そして、その頻度は、線量に比例します。
X線フィルムは当然、室内で保管されていたでしょうから、
室内にセシウム137が漂っていた事が分かります。
■ γ線の強度が重要 ■
問題となるの放射線による空間放射線線量です。
http://engawa.kakaku.com/userbbs/124/picture/detail/ThreadID=124-241/ImageID=124-78/より
上のグラフは原発事故直後の南相馬市で測定された空間線量ですが、
γ線の最大は、計測されている数値では3月12日の20(μGr/h)です。
測定されていない日時で、もう少し高いデータもあったかも知れませんが、
最大を記録するのは多分、3号機の水素爆発(?)の直後か思われます。
され、データからは比較的短時間に20(μGr/h)を記録した後、
データは概ね、5(μGr/h)以下で推移しています。
この20(μGr/h)というのがどの程度の放射線量かと言えば、
20(μGr/h)x24(h)x365(DAY) = 175.2(mGr/Sv)となります。
これは1年間20(μGr)の外部被曝が継続し場合の年間線量ですが、
1回のCTスキャンで発生する対幹部(体の中心は放射線強度が高い)の
被爆量に2~4倍程度でしょうか?
この数値を高いと見るか、低いと見るかは意見の分かれる所です。
私は1旬の20(μSv/h)などという被曝は、取るに足らない被曝と考えます。
レントゲン検査で浴びるX線(γ線)の線量は、50(μSv)と言われていすが
仮に1秒間で50(μSv)を照射するならば
1時間当たりに換算すれば182.5(mSv/h)となります。
レントゲン撮影に使われる放射線の線量は、1秒単位で言うならば
20(μSv/h)の9125倍の強度を持っているのです。
当然、放射線の影響は積算しますから、
20(μSv/h)を2日間浴び続ければ、0.96(mSv/2日)という被曝をします。
ところで、健康被害が確認されている広島や長崎に被爆の量が
100(mSv)の一瞬被曝だといされています。
放射線によるDNAの損傷が2日程度で修復すると考えると、
20(μSv/h)の数日の被曝が、健康に影響を与えるとは考え難いものがあります。
ですから枝野官房長官の「ただちには影響の無いレベル」という発言は間違いではありません。
■ 20(mSv/年)の影響 ■
この様な事を書くと、「チェルノブイリでは大勢の子供が甲状腺癌になった」と指摘を受けます。
さらにチェルノブイリの強制非難区域の指定は5(mSv/年)だとも指摘されます。
チェルノブイリの強制移住の指定が行われたのは事故後5年経ってからです。
冒頭にグラフでも分かる様に、空間放射線は事故直後の
放射性ヨウ素131など半減期の短い核種が崩壊する時が高く、
その後、セシウム137や134という半減期が
30年以上ある様な核種が崩壊する過程では、事故直後に比べて低くなります。
1) チェルノブイリの強制非難地域指定(約5(mSv/年))は事故後5年の空間線量
2) チェルノブイリの強制非難地域における事故直後の空間占領は
ヨウ素131の崩壊過程では、5(mSv/年)よりも遥かに高い
3) 食品の摂取規制がされなかったので高濃度にヨウ素131で汚染された牛乳を
子供達は事故直後に飲んでいる
南相馬市のデータでは、事故後直ぐに空間占領は5(μGr/h)を下回り、
その後は緩やかに減衰して、1(mSv/年)という基準値も下回っています。
飯館村など、風向きによてはこのデータよりも高い地域は存在するのでしょうが、
汚染レベルとして、格納容器が存在せず、
原子炉が露出して燃え盛ったチェルノブイリ事故と
福島の事故を同一視するのは、私的には問題たあるかと思います。
福島の放射性物質の多くは、冷却水によって地中に浸透し、
その一部は、海に流出しています。
ですから大気中への放射性物質の放出は少ないのです。
■ 放射線の影響を常識よりも低い ■
福島原発事故は、政府が発表しているよりも重大事故ですが、
チェルノブイリに比べれば、放射性物質の陸上への飛散は少なくい。
放射線の健康に対する影響は、ICRPの防護基準が放射線の影響を1000倍程度過大評価しているので、政府が発表していよりも格段に小さい
これが、このブログの基本スタンスです。
(福島原発事故の項目で、まとめて見る事が出来ます)
確かに放射線の影響は未知数の所が多いのですが、
放射線の影響を1000倍も過大評価している基準や法律が守られている限り、
福島周辺においても、放射線による健康被害は今後とも発生しないと考えます。
放射線の影響が比較的大きいといわれる胎児においても、
データを見る限り、世間で言われている程には影響は大きくないと個人的には考えています。
「胎児はどのくらい放射線に弱いのか・・・統計データの見方」
http://green.ap.teacup.com/pekepon/643.html
この様な観点から私は次の様に主張します。
福島周辺で原発事故による被害を拡大しているのは、
過剰な防護基準値であって、決して放射線自体では無い
私が個人のブログでいくら主張しても大勢は変えられませんが、
多少なりとも不安が緩和されるのであれば、このブログも無駄では無いと考えています。
最後になりますが、福島原発周辺のペットや家畜に過酷な運命を強いたのも、
過剰な放射線防護基準だという事を知っていただけたらと思います。
ただ、事故初期には事故がどんな重大事故に発展するか不明でした。
20Km,30Kmという強制非難は政府としては避けられない対応であった事は理解して下さい。
原発災害の鉄則は、事故直後はとにかく遠くへ逃げろ。
事故が収束する過程では、あまり怖がり過ぎる事はせず、しかし注意は怠るな・・です。