■ 税金を払う喜び ■
今年も確定申告の季節がやってきました。
サラリーマンの方にはあまり縁の無い行事ですが、
自営業の私達にとっては、一年を締めくくる大事なイベントです。
決算書類をまとめ上げ、税金を計算して皆さん一喜一憂する訳ですが、
多くの方は「税金はなるべく払いたく無い」と考えているでしょう。
自営業者などは「税金を払うのはバカ」くらいに思っている方も大勢居ます。
しかし私などは一枚一枚図面を描いて稼がせてもらっているので、
損失こそ発生しませんが、利益率がとても低い労働集約型の最たる職種です。
だから決算書をまとめて「税金が払える」事が分かるとホッとします。
今年も「まともな社会人で居られた」という証明が成された気がします。
■ 納税者という意識に乏しいサラリーマン ■
日本人は政治に無関心です。
この最大の原因は納税制度にあると私は考えています。
アメリカなど諸外国ではサラリーマンであっても確定申告をします。
ですから、皆さん、「納税者」という意識を強く持っています。
自然と自分の収めた「税金が正しく使われているか」気になります。
一方日本では確定申告を会社が代行してくれます。
多くの方は、年末調整用に生命保険や火災保険の証明書を
会社に提出するだけですが、実はその後の作業は、
会社の事務の方が代行してくれているのです。
給与明細には所得税と住民税、そして厚生年金や健康保険などの金額が記載されています。
給与の総支給額と手取りの差に、憤りを覚える方も多いはずです。
「自動徴税」されていると、「納税の喜び」など決して味わう事は出来ません。
■ 財務省の最大の発明はサラリーマンから確定申告を遠ざけた事? ■
日本における最大の職種は「サラリーマン」でしょう。
彼らから確定申告を遠ざけた事で、
日本における最大の集団から「納税者」の意識を遠ざけた事は、
日本の政治システムの最大の特徴かも知れません。
その証拠に、納税意識の高い自営業や農業に方は、
政治意識がサラリーマンよりも高く、
特に利害が絡む地方政治には、直接的な利権者として積極的に参加します。
■ サラリーマンは損はしていない ■
サラリーマンの方は良く、「自営業は経費がつかえて好いよね」と言います。
しかし、サラリーマンの方にも経費は認められています。
上の表は「給与所得控除」です。
年収500万の場合、(500万円x0.2)+54万円=154万円となります。
サラリーマンの通勤交通費は所得としてカウントされ課税対象ですが、
それらの金額は給与所得控除によって、基本的には控除されています。
余程のオシャレさんでもない限り、スーツ代もこの範囲に収まるでしょう。
自営業の場合、打ち合わせの交通費はバカになりません。
一日の何件か都内を回る場合、一か月の交通費が5万円くらい掛かります。
出張してもその経費は自分で払いますし、ノート一冊、ペン一本も自分で払います。
取引先へのお中元やお歳暮も、取引先への接待も自分で払います。
サラリーマンが出金伝票を切って会社に請求する金額が、
自営業者の「経費」に相当します。
儲かっている人の事は分かりませんが、
あまり儲からない職種で派手に接待などしたら自分の首を絞める事になります。
すべては自分の懐から出て行くお金ですから・・・。
■ サラリーマンは納税者としてもっと主張すべき ■
日本のサラリーマン納税者意識が薄いので、
政策に対する不満が「感情的」になる傾向があります。
要は「マスコミ」に操作され易い。
例えば、消費税など分かりやすい税金の変更には敏感に反応しますが、
所得税率や住民税率、控除額の細かな変化には無頓着です。
所得税の5%アップに相当する税額は、
所得控除の数字を少し操作するだけで捻出出来ます。
例えば、年収500万の人が年間400万円の消費をするとして、
消費税を5%アップして増える税額は年額20万円です。
ところで、先ほどの給与所得控除の計算で所得に掛ける数字を5%減らすと、
所得税5%UP以上の増税が可能になります。
もし給与所得控除が減額されるとして、マスコミはどう報道するでしょうか?
たぶん「今年から控除額が減らされる事になりました」という報道になるでしょう。
皆さんは、消費税5%UP異常の税額負担が増えるにも関わらず、
「ヘー、また税金が増えるんだ」程度の感想しか持たないと思います。
■ 消費税の問題は逆累進性の問題 ■
消費税の問題は税額では無く「逆累進性」にあります。
金持ちに比べ、低所得者は所得のほとんどを消費に使わざるを得ません。
先ほどの「給与所得控除」は所得額に応じて控除額の所得比率が減ります。
逆に所得税率は所得が高くなる程、高くなります。
これを「累進課税」と呼び、多く稼いだ人程、税額負担の比率が高くなります。
高額所得者には可哀そうにも思える「累進課税」ですが、
彼らがお金を多く稼げるのは、低い給与で働く人達がいるからと考えれば
相応な負担とも言えます。(ここらへんは人により解釈は違うでしょう)
それに対して、日本の消費税はあらゆる消費に薄く広く掛けられています。
これは所得のほとんどを消費に回さざるを得ない低所得者に不利な税制です。
海外では主要な食品などには消費税が掛かりません。
パンなどに15%もの消費税を掛けてしまうと、
低所得者の負担が高くなりすぎるのです。
ですから、15%や20%は一見高い様ですが、
低所得者の税額負担は実際的には低く抑えられています。
日本でも一昔前は「物品税」として贅沢品程高い税率が掛けられていました。
例えば、照明器具ではランプの数が6個までは一般の器具扱いで無税ですが、
7個からは「シャンデリア」という贅沢品になり、物品税が掛かりました。
「物品税」はある種の累進性を持っています。
「高級品を買うのは金持ちだから多く税を負担してもらう」のは当然とも言えます。
ところが、高級品は利潤率が高いのでメーカーは安物よりも高級品を売りたがります。
ですから、メーカーとしては「物品税」は迷惑な税金でした。
丁度日本も高度成長期の末期に差し掛かり、
庶民の消費も「生活必需品」から「高級品」にシフトしてゆく時代と重なり、
「物品税」の廃止は、中流家庭の消費の高級化を後押しする事にもなりました。
消費税率が3%や5%ならば、それで大した問題は発生しません。
ところが、10%、15%ともなれば、低所得者には死活問題となります。
ですから消費税率のアップには、消費税が掛からない品目を設ける必要があり、
もしそれが不可能であるならば、ベーシックインカムの様な戻し税とセットで無ければ
低所得者の生活が破綻する事につながります。
■ 消費税UPに抵抗しているのは比較的豊かな人達 ■
日本において政治意識の高いのは「老人」と「豊な人」です。
これは世界的にも同様な傾向が見られます。
要は、政治に熱心なのは「既得権者」なのです。
その証拠に、所得の低い若者世代は「選挙」にすら行きません。
ネットでは色々不満をぶちまけますが、
「選挙で投票する様な候補者が居ない」といって投票しない人も多いでしょう。
それでは若者や低所得者の生活は犠牲になるばかりです。
「確定申告」を自分でしない国民の、当然の帰結だと
強引に結び付けて本日は終わりにします。