■ 参議院選挙で自民党が大勝、捩れ解消へ ■
参議院選挙は予測通り自民党が大勝しました。
アベノミクスによる景気回復の期待感が自民党の勝利を後押ししました。
これによって長らく続いた「捩れ国会」も解消し、
法案成立が容易になる事から、アベノミクスが本格的にスタートします。
■ 日銀の異次元緩和に助けられた勝利 ■
アベノミクスを掲げて自民党が民主党から政権を奪還したのが昨年の11月。
この時、安倍首相は、「金融緩和」「国土強靭化(財政出動)」「構造改革」を政策として掲げています。
さらには「TPP」参加には慎重姿勢を示していました。
これはの公約は明らかに選挙対策の口約束でした。
最初に破られたのは、「国土強靭化(財政出動)」でした。
補正予算では10兆円の上積みをしましたが、
13年度予算では、公共事業費はむしろ削られています。
次に破られたのは「TPP参加」の慎重姿勢です。
アメリカで日米首脳会談が開かれた途端、参加に前向きになってしまいました。
第三の矢である「構造改革」や「規制緩和」は、抵抗勢力の影響で骨抜きが続いています。
結局、安倍政権が実行した公約は日銀に大規模な金融緩和を実行させただけだと言えます。
日銀緩和を見越した外資の株の買上げと、消費税増税を織り込んだ円安によって
景気回復感が醸造された為、アベノミクスが景気回復に繋がると国民は誤解し、
マスコミがその誤解を後押しした結果が、今回の自民党の勝利に繫がりました。
日銀の異次元緩和の真の目的は、FRBの緩和縮小の下地作りでしょうから、
結局、自民党はアベノミクスの実績では無く、イメージの波に上手く乗ったと言えます。
いえ、マスコミを始めとして、そういうイメージ戦略が行なわれたのです。
■ 本当のアベノミクスが始まる ■
「国土強靭化」や「財政出動」に期待していたのは、麻生氏を始めとする自民党の土建利権です。
安倍首相は三橋貴明を持ち上げるなどして、彼ら土建屋を上手く取り込んでいます。
彼ら、古い自民党(吉田派・田中派)の生き残りの力は自民党内では弱体化しており、
しばらく選挙も無いので、自民党のばら撒き派もしばらくは選挙対策から開放されます。
「財政出動」の掛け声は、参議院選挙の勝利によって後退するでしょう。
一方で「プライマリーバランスの回復が信頼回復に繋がる」として、
安倍政権は、財政状況の改善を重視する姿勢を見せ初めています。
10月に消費税増税が決まるかどうかが注目されますが、
景気回復にグレーな数字が並んでも、増税を決行する様なら、
安倍政権は言っている事とやっている事が相反する内閣になります。
一方、衆参で過半数を獲得したので、
構造改革や規制緩和関係の法案が国会を通りやすくなりました。
今後は安倍政権の本当の目的である、「アメリカに市場を開放する政策」が実施されるでしょう。
自民党の清和会である安倍政権の本来の目的は、
小泉改革の総仕上げであるはずです。
中韓に対する挑発的な言動で「日本の為の首相」と騙されている国民が多いのですが、
これとて、小泉元首相と似た姿勢に他成りません。
■ どうして国民は簡単に騙されるのか? ■
明らかに「真っ黒クロ」な安倍氏ですが、国民の人気は高い。
どうして、国民に負担を強いるであろう首相がこれ程までに人気なのか?
それは、安倍氏が「甘い囁き」しかしていないから。
「成長無くして日本の復活はありません」は、
言い直せば「改革無くして成長は無し」と言った小泉改革のキャッチコピーと同じです。
しかし、小泉首相が国民に「痛み」を強いたにに対して、
安倍氏は国民の「利益」をことさら強調し、「痛み」を上手に隠蔽します。
金融緩和も、財政拡大も、構造改革も、リスクもありますし、損をする人も当然多い。
TPPなどは、不利益の方が明らかに大きい。
しかし、その「不利益」をあえて口にしない事で、
国民が勝手に安倍政権に期待を寄せています。
ここら辺が衆愚政治たる民主主義の限界なのでしょう。
困窮や不満が高まる程、国民は痛みを嫌い、利益だけを求める様になります。
■ 52.61%という投票率 ■
全国の参議院選挙の投票率は52.61%と戦後3番目の低さでした。
私の住んでいる浦安市では、50.2%と、ほぼ全国平均でした。
市内での投票率のばらつきは大きく、
かつての新興住宅地がそのまま高齢化した地域では60%を超える投票率です。
又、比較的裕福な市民が多い新浦安周辺でも60%を越えています。
一方、アパートや賃貸マンションの多い地域の投票率は最低の36%を始め軒並み30%台。
3人に2人が棄権しています。
これが現在の日本の政治の縮図です。
本当に行政のサポートが必要な人達は政治には興味が無く、
既得権者達は、権利を守る為にせっせと選挙に通います。
結果的に民主主義は、富める者により多くの富を与え、
貧しい者からは、その機会すらも奪います。
これは1970年代に、アメリカの経済学者のガルブレイズが既に言い当てています。
■ 自壊する民主主義 ■
貧富の差を拡大する民主主義は、次第に社会の格差を修復不可能なまでに拡大します。
既にアメリカではその兆候があり、先週の黒人達のデモはその先駆けとも言えます。
本来、絶対的多数の中間層によって効率的に機能する民主主義や資本主義は、
富や権利の局在化によって、その存在意味を失います。
民主主義に失望した人達は、やがて選挙や政治に興味を失いますが、
次の段階では、暴力的手段によって自分達の権利を主張し始めます。
こうして、社会の規範は徐々に崩壊し、限界に達した時、革命や暴動が始まります。
穏やかな日本人には予想すら出来ないかも知れませんが、
アメリカの最大の政治リスクは、暴動です。
これは、中国でも同じですし、ヨーロッパでも同様です。
結局、最後は民主主義的に数の暴力が国家を飲み込んで行きます。
アメリカがその結末に辿り着くまでに普通に考えれば、10年とか20年とかを要しますが、
金融崩壊が発生すれば、時間は一気に短縮されるかも知れません。
これも、「個人の利益の追求」という民主主義の本来の姿なのかも知れません。
アベノミクスの正体が分かるのは1年後かも知れませんが、
将来的にアベノミクスがもたらすものが、失意と諦めなのか、
それとも民主主義の純粋は発露なのか、興味は尽きる事がありません。