とても楽しい時間を作ろうと努力している。作り手の誠実さが伝わってくる作品だ。だから、僕はこの芝居に対してどうこう言う言葉をもたない。面白いとか、つまらないとか言う話ではないと思う。確かにたわいないし、作品に奥行きがあるわけではない。別役作品とは思えないくらいの単純さだ。でも、それがこの芝居にはちょうど良い。
シルクロードを旅するツアーの一行と、なぜかそこにやってくるまるでやる気のない三蔵法師 . . . 本文を読む
8篇からなる短編集である。だが、最初は連作か、と思った。どこを切り取っても、どこかで見た佐伯一麦の小説と同じで、どこかで読んだ話をまたしてる、という印象だ。しかも、相変わらずのメリハリのなさで、淡々とどこを切り取ってもいいような日常が綴られるばかりだ。では、つまらないのか、というと、そうではない。とても面白いのだ。
夫婦の暮らし。季節の流れ。日々のスケッチが、ただ漫然と描かれるように見える。 . . . 本文を読む
生まれて初めてうちの娘から本を借りて読んだよ。これは歴史的快挙。だいたいあの子が本を読むなんて、それだけで凄いことだ。ファッション雑誌とかにしか興味がないし、20数年の今までの人生で、一度だって真面目に小説なんか読んだことがないのではないか。でも、最近は会社の社長から言われて経営のむずかしい本とか読まされているようだ。今回のこの本もその一環で買ったそうだが、本人曰く、「これなら、私にもわかるし、 . . . 本文を読む
無への入り口。まるで、夢の中にいるような気分でこの悪夢を見守ることになる。ここはいったいどこだ。日本の東京という大都市らしい。遠い異国からこの都市にやってきて、ここで暮らす異邦人たち。主人公の青年もそのひとりだ。まるで夢の中の世界のような夜の迷宮をさまよう彼らは現実感覚を失い埋もれていく。やがて消えていく。
ドラッグの売人となり、夜の街を浮遊する。自らもドラッグ中毒となり、実体のない虚無の世 . . . 本文を読む
高校1年生の女の子を主人公にした、小さな初恋ですらないようなお話からスタートする。リレー形式で描かれる6つのエピソードは、それぞれ主人公が違うし、描かれるシチュエーションも様々である。しかし、そこには共通するものがある。子役タレントであった「ゆうちゃん」が芸能界にもまれながら成長していく姿がドラマの中に挟み込まれてあることだ。子役からアイドルタレントに、やがて本格女優として成長する。そんな彼女を . . . 本文を読む
音楽劇と銘打たれてあるが、ミュージカルを目指した往来の新作だ。最初は敢えてミュージカルとは言わなかった。それは、歌うシーンはたくさんあるが、ダンスシーンが連動しないから、ミュージカルと呼ぶのは幾分しんどいと判断したからだろうか。(でも当日パンフにはミュージカルと書かれてあったが)
さて、今回の芝居である。残念ながら全体のテンポが悪くて退屈する。15分の休憩を挟んで2部構成3時間の大作である。 . . . 本文を読む
こんなにも感動させられるとは思いもしなかった。これはまさに映画の王道をゆく傑作である。昔ながらの日本映画の伝統をしっかり受け継ぎながら、今の映画として成立している。懐かしいタッチなので、これは古臭いヒューマニズム映画なのかもしれない、と思わせる。だから最初は少し警戒した。1989年というあからさまな時代背景もどうだろうか、と思った。しかし、そんな杞憂は一瞬で吹っ飛ぶ。
堤真一演じる医者がこの . . . 本文を読む
物事の本質を捉えようとする。とても真剣に。その姿が僕たちの心の奥深くに沁みいる。作、演出は保木本佳子さん。彼女のストレートな姿勢は時に息苦しくもある。真面目すぎて痛い。だけれども、その真摯さが、普段は見向きもしない目の前のひとつひとつのことに僕たちを対峙させる。そのことで、確かに見えてくるものがそこにはある。『生まれてくること。生きていること。死んでいくこと。』確かにあまりにストレートすぎて戸惑 . . . 本文を読む
とてもオーソドックスで、芝居らしい芝居だと思う。ただし、作品世界はあまりに狭く閉ざされてしまっていて、ドラマに広がりがない。オチとなる部分が明確になったところからその先がほんとうは見たかった。
なのに、友人の女の子との関係や、彼女のことを待っていてくれる恋人、彼らとの現在進行形のドラマが、作品全体の彩りにしかならないのはもったいない。主人公である漫画家と母親との関係を描くドラマがメーンである . . . 本文を読む
リーディングスタイルを取ることで、このリアルな現実がより生々しく伝わることになった。素材と表現方法が見事に一致して伝えたかったことがストレートに届く。報道されることのない現実を事実の中から伝える。これは芝居というメディアで可能な事への挑戦だ。
パレスチナ難民のことを僕たちは知らない。60年にわたる苦難の歴史は今もまだ現在進行形で続く。戦争は終わることなく続くのである。そんな中でたくさんの人た . . . 本文を読む
この芝居には全く意味がない。さすが青木さんだ。やるときは徹底的に、である。本当に気持ちがいいくらいに、全くもって何の意味もない。何かをここから考えようとすることすら拒否するくらいの潔さだ。だいたい恋である。そんなものにご大層な意味はいらない。電撃的にドキューンと恋してもらいたい。好きになったらなんでもありだ。頑張れ!
ところで、これってそんな話だったっけ。最初は占いの話だった、はずだ。いいか . . . 本文を読む
2話からなる連作。「昭和を生きた庶民の哀歓を綴る」というが共通テーマで、2000年秋から冬を舞台とする。平成となりさらには20世紀も終わっていくという時間の中で、昭和は確かに終わったのだと実感する。年老いた2人の男女をそれぞれ主人公にして、市井のどこにでもいる庶民の姿を通して彼らが生きた時代って何だったのだろうかを検証していく。もちろんそんな大袈裟なことではない。2つのシチュエーションをさらりと . . . 本文を読む
こんなタイトルだが、原作は吉本ばななではない。間違えないようにサブタイトルとして、『3人のレシピ』とある。このサブタイトル通りにこれは3人の男女のお話だ。とても清潔でおしゃれな映画である。ここに描かれる清冽で透明感溢れる空気は、気持ちがいい。その結果、映画の中で描かれる三角関係もドロドロしたものではなく、なんだかとてもサラサラしていて、きれいなのだ。なのに、それってリアリティーを欠くというのでは . . . 本文を読む
吉田大八監督の第2作。1昨年の『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』と、今年の『パーマネント野ばら』という2本の傑作の間に作られた野心作。でも、見事に失敗している。このとんでもない詐欺師の日々を追いかけた映画は、著しくリアリティーを欠く。
一生懸命つまらない結婚詐欺のために不断の努力を重ねるクヒオ大佐(堺雅人)の涙ぐましい努力を見ていると、こんなにも頑張れるのならば、そのエネルギーをもっとまとも . . . 本文を読む
この映画の正式タイトルはなんと『仮面ライダー×仮面ライダー×仮面ライダー THE MOVIE 超電王トリロジー/EPISODE RED ゼロのスタートウィンクル』というらしい。いくらなんでもこれはないだろ、と思うので、上のタイトルに勝手に変更した。
今回の『電王』は3本の連作で、2週ずつずらして順次公開する。きっとファン垂涎の企画なのだろう。だが、僕にはなんか、観客をバカにした企画のように . . . 本文を読む