習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

くじら企画『夜が掴む』

2012-07-17 22:37:52 | 演劇
25年も前の作品となる。犬の事ム所時代の作品だ。これは20年振り、2回目の再演となる。今改めて見ると、これは作品としては甘い。でも、そんなことは当たり前のことだ。まだ大竹野が20代だった頃の作品である。そこに完成度を望むなんてナンセンスな話だ。そんなことよりもこの作品も孕み持つ不穏な空気や、熱気と勢いの方を大事にしたい。それは若さゆえではなく、大竹野正典という作家の資質の問題であろう。だからこそ . . . 本文を読む
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『さらば復讐の狼たちよ』

2012-07-14 22:41:13 | 映画
 なんですか、このアホなタイトルは! きっとこの傑作映画を誰にも見せないための誰かの陰謀に違いない。その証拠に封切り2日目の土曜に見たのだが、難波の小さな劇場はがらがらだった。それにしてもチャン・ウェン監督作品だから見たのだが、ここまでやるとは思いもしなかった。衝撃の傑作である。中国本国では歴代1位を記録した国民映画で、なのに日本ではこのタイトルでひっそり公開、である。いつものことだが、もったいな . . . 本文を読む
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『BRAVE HEARTS 海猿』

2012-07-14 21:56:41 | 映画
 絶対あきらめない。このあまりに単純バカな覚悟が主人公の仙崎(伊藤英明)を支える。伊原剛志の先輩特救隊員から、その嘘くさい正義感を疎ましく思われる。考え方も、立場も違う2人は対立する、とかいう構図がよくあるパターンなのだが、大人であるふたりはちゃんと距離を置いて接することが出来る。だから、つまらない喧嘩のシーンなんかない。だが、やがて彼らは救助活動を通してひとつになっていく。  全編こんな感じで . . . 本文を読む
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ステージタイガー『協走組曲 第3楽章』

2012-07-13 23:23:50 | 演劇
 序章、第2章に続く第3楽章なのだが、これはあくまでも続編ではない。先日のリンクス04で上演された20分ほどの短編が、第2章なのだが、今回は、あれのロングヴァージョンであり、完全版であるはずだ。だが、実はそうでもない。  上演時間1時間という長さが、今回の作品の尺である。これは通常の芝居としては異例の上演時間ではないか。これは大河ドラマであるはずの内容だ。にも拘わらずこの上演時間に収める。盛りだ . . . 本文を読む
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ともにょ企画『エンカウントLOVE!』 

2012-07-13 22:43:04 | 演劇
 大傑作である『さいはて』に続くともにょ企画の新作だ。前作からこんなにも短いインターバルで作品を作りながら、また今回も凄い作品を作ってしまったりすると、怖いな、と、ドキドキしながら、見た。正直言って、ほっとした。これが極ふつうの芝居だったからだ。  貶すのではない。でも、もちろん褒めるのではない。ただ安心したのだ。鈴木さんの有り余る才能は高く評価するのにやぶさかではない。だが、続々と想像を絶する . . . 本文を読む
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有吉玉青『僕たちはきっとすごい大人になる』

2012-07-11 20:36:56 | その他
 僕はきっとすごいことをする。今はこんなふうに、ただくすぶっているけど、きっとそのうち、ブレイクしてやる。そんなふうに信じる若者って、今時いるのだろうか。野心を抱く、って若者の特権だったはずだった。しかし、こんな時代になり、誰も未来に夢や希望を持たなくなっているような気がする。ただ、なんとなく生きれたならいい。そんな気分が横溢する時代に、このタイトルである。思わず、手にして、すぐに読み始めてしまっ . . . 本文を読む
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『ベルセレク 黄金時代篇II ドルドレイ攻略』『図書館戦争 革命の翼』

2012-07-11 20:33:35 | 映画
 このアニメーションは、とてもよく出来ている。シネスコのアニメ映画って、久々ではないか。スケールの大きなこの作品にシネスコはとてもよく似合う。3部作の第2部だから、途中から始まって、途中で終わる、というハンディーを抱えるけど、『スターウォーズ』の昔から、3部作は、第2部が一番面白いという黄金律を、この作品も踏襲して、シンプルなストーリーだが、とてもよく出来ている。たった3000の兵が、3万の大軍と . . . 本文を読む
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突劇金魚『蛇口からアイスクリーム』②(「絶対の村上くん」「しまうまの毛」)

2012-07-08 07:16:41 | 演劇
 まずは、『絶対の村上くん』から。これは『絶対の村上ちゃん』と同じ台本を使い、こちらは男性2人に演じさせる。演出も変わらないのだが、なぜかこちらのほうが、幾分重い作品になってしまう。ラストの自殺も女の子版よりも明確なものになった。村上ちゃんはあんなにも軽やかだったのに、村上くんはこんなにも重い。  感覚的な作品になった『村上ちゃん』に対して、理論的な『村上くん』は、悲劇に向かって一直線に突き進む . . . 本文を読む
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『ワンデイ 23年のラブストーリー』

2012-07-08 07:07:04 | 映画
 23年間に及ぶ23回の7月15日という1点のみを切り取ってつないで見せていく。1年の中のたった1日だけから、彼らの20代から30代の日々を綴る。ひとつのエピソードが、ほんの数十分くらいの出来事の部分もある。2人きりで旅に出て過ごすという特別な1日もあるけど、反対に、会うこともなく、別々の場所で過ごした年のエピソードもある。要するにいろんなことがある、ということだ。しかも、それが、同じ7月15日の . . . 本文を読む
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『LOVE まさお君が行く』

2012-07-08 07:03:21 | 映画
この手のプログラムピクチャーは、かつて日本では果てしなく量産され消費されていた。映画は2週間でどんどん番組を変え、2本立上映される。これは昔なら(僕のよく知っている70年代のことだが)その2本立映画の添え物として作られたような作品なのだ。  売れない芸人(香取慎吾)と犬(もちろん、まさお)の友情を描く映画なんて、今時の映画とはとても思えない企画だ。しかも、それを高橋泉脚本、大谷健太郎監督で作る . . . 本文を読む
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『大竹野正典劇集成Ⅰ』

2012-07-06 23:25:23 | 演劇
『大竹野正典劇集成Ⅰ』が完成した。出来あがった本を手にして、なんだか感慨無量である。こんな立派な本を出版してもらえて、大竹野本人は草葉の陰で驚いていることだろう。出来ることなら、本人に見せてあげたい。でも、そんなことは不可能だし、もし、本人が生きていたなら、こんな本は作られることはなかった。  不思議なものだ。この本を読んで、何が凄いかというと、まず、これは戯曲のはずなのに、とても読みやすいのだ . . . 本文を読む
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突劇金魚『蛇口からアイスクリーム』(「絶対の村上ちゃん」「夏の残骸」)

2012-07-06 23:03:14 | 演劇
今回の短編集の総合タイトルとなった『蛇口からアイスクリーム』というシュールなイメージがとてもいい。今のサリngさんの気分をとてもよく伝える。ミスマッチをねらったわけではない。とても自然な取り合わせだ。でも、この違和感。楽しそうで、不気味。甘くてドロドロしたアイスクリームを手でつかむような感触。ねばついて、気持ちはよくない。この作品集をとてもよく象徴している。本公演のベースとなる『絶対の村上ちゃん . . . 本文を読む
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『君への誓い』

2012-07-06 22:38:38 | 映画
 もう一度、最初からやり直そう。出会ったときから始めて、恋をしよう。事故により2人の記憶をすべて失った妻を取り戻すために、彼は2人で作ってきた記憶を胸に抱いたまま、何も覚えていない彼女と、出会いから始めることにする。  こういう地味な映画がちゃんと劇場公開されるって、凄い。でも、公開から数週間で消えてしまう。もうどこでも、上映していない。けっこういい映画なのに、もったいないなぁ、と思う。実は数週 . . . 本文を読む
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『ソウルサーファー』

2012-07-06 22:37:24 | 映画
 『ファミリーツリー』に続いて、これもまたハワイ映画である。今回はサーフィンの話。でも、これはなんとも強烈だ。しかも、実話。サメに片腕を食いちぎられた少女の話である。それでも彼女は海を怖がることなく、片手でサーフィンを続ける。サーファーであることが、自分のアイデンティティーで、一切そこにはつけ入る余地はない。もうサーフィンなんて無理かも、とか悩んだりはしない。腕が治ったら(傷口が、である。食い千切 . . . 本文を読む
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ハレンチキャラメル『ステテコホテル』

2012-07-03 22:14:31 | 演劇
 このバカバカしいタイトルには笑った。前回公演パンフで次回作が、このタイトルだと、知った時から、期待した。神原さんがどんなふうにこのふざけたタイトルから無限の翼を広げて、おかしな世界を見せてくださるのか、とても楽しみだったのだ。ちゃんとふざけて、その先に何を提示してくれるのか、そこが成否のポイントであろう。  昭和の終わり(1985年)を舞台にして、明治2年と、2つの時間を往還し、話は展開してい . . . 本文を読む
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