ランニング徒然

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イノベーションのジレンマ

2015-02-12 20:20:00 | 日記

​今日は休養日としましたし、アルペン世界選手権の放送もないので、たまには真面目なお話しを投稿します。


元気がない日本企業を象徴するような決算発表が先日あったのでこれについて書きます。

任天堂の第3四半期決算が発表されました。
基本的には黒字化達成ということですが、14年度通期での利益見込は約半分に下方修正しているようです。

任天堂の経営状況は

ハーバード・ビジネススクール教授であるクレイトン・クリステンセンの著書


イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき
(Harvard business school press) 単行本 ? 2001/7
クレイトン・クリステンセン (著), 玉田 俊平太 (監修), 伊豆原 弓 (翻訳)

を知っている人なら「ぴたったり当てはまる」事例だと考えるでしょう。

「イノベーションのジレンマ」とは、

企業にとっての強みである「顧客ニーズに沿った持続的イノベーション」が、やがて自らをがんじがらめに縛り、鼻にもかけなかったような取るに足らない技術や新興企業に足元をすくわれるというビジネス分析です。

クリステンセンは「破壊的技術」、「破壊的イノベーション」という言葉を用い、一時的に性能指標は下がっても、

 圧倒的に安い
 汎用化技術の寄せ集めで容易に参入できる
 小さく軽い

といった特徴を持った製品に、絶対と思われた製品が駆逐されていくという例を示しています。

私の専門領域であるコンピュータの世界でいえば

大型汎用機で栄華を誇ったIBMが、ミニコンと呼ばれる製品でDECに市場を席巻され、
そのDECやデータゼネラルが汎用的な部品の寄せ集めで作られ、オープンソースのはしりであるUNIXで動作するサンマイクロシステムズのワークステーションに市場を奪われ、

サンマイクロシステムズはやがて高性能化したパソコンや真のオープンソースといえるLinuxサーバに市場を奪われる

といった図式で業界の盟主が入れ替わっています。

いまやパソコンもタブレットとスマフォに浸食されています。

冒頭の任天堂も「家庭用ゲーム機」という枠内で、ソニープレステ、マイクロソフトXboxと
 解像度
 処理速度
 操作性
といったユーザが求める性能を追求した競争(持続的イノベーション)を繰り広げている間に携帯ゲームという「破壊的イノベーション」に浸食され、スマフォゲームにダメ押しされてしまったという状況です。

フルハイビジョン対応の高画質ゲームが、わずか5インチ程度の画面で行うゲームにユーザを奪われるということは臨場感といった尺度だけでみれば信じられないと思いますが、これこそ「破壊的技術」の極みです。

もっと私達の生活に近いところで言えば、

最初は低画質だったデジタルカメラがどんどん高画質になり銀塩カメラにとって代わり、

そのデジタルカメラもVGA(480×640)程度の低画質だった携帯電話のカメラ機能に押され、高画質化しクラウドやYouTubeとリンクしたスマフォにとどめを刺されました。

いまやカーナビすらもスマフォにとって代わられています。

自分も以前の車には30万円近い2DIN‐HDDナビを装着し、CDを自動で取り込んでくれる機能に満足していましたが、今の車にはナビを装着せずBluetooth接続したスマフォで音楽を再生し、遠出の際はYahooカーナビアプリを使っています。

クリステンセン教授は、企業が生き残るための策も示しています。
それは
「破壊的イノベーション」を内部から起こしていくこと。
「自殺による生き残り」と称されるものです。


ページプリンタ(レーザプリンタ)市場で支配的な位置にいたHP(ヒューレットパッカード)社は
 “遅い”

 “解像度が低い”

 “印字コストも高い”

インクジェットプリンタを「破壊的イノベーション」と捉え、既存プリンタ事業部とはまったく別のところで開発を進め、圧倒的に安価なインクジェットプリンタを
市場に投入し大きなシェアを獲得しました。

レーザープリンタ市場は小さくなるかもしれませんが、代わりに家庭やSOHOという巨大市場を手に入れ、インクカートリッジで大きな収益を上げることに成功しています。

もしも、カーナビ製造メーカーがいち早く無料スマフォアプリで広告収入を得るビジネスモデルを構築できていたら業績は悪化していなかったかもしれません。
でも、自らの主力製品の売り上げを下げるような開発とビジネスモデルを内部から動かすことはなかなかできないことです。

現代は一つの技術で企業が収益を上げ続けることができる期間がどんどん短くなっていますし、少子高齢化が市場をどんどん変化させていきます。

柔軟な発想とそれを製品に生かすことができる組織体制を臨機応変に変えていけるかが日本の浮上に必要なことかもしれません。