この確信が、最後のきめ手にもなった。彼は、それがおかしくてちょっと苦笑しながら立ちあがり、ささえになるものならベッドにでも壁にでもドアにでもつかまりながら、もうとっくに別れの言葉を述べたかのように、挨拶もしないで出ていった。
☆この確信は決定的だった、そうするうちに復讐心や願い(乞い)とべつの束縛、べつのもくろみに(気づき)驚いて立ち止まり、ビュルゲルは挨拶もなしに外へと別れを告げた。
『プロフィールの自画像』
黒色の紙の上に色紙を添付
身分証明として携帯できるような大きさである。
黒色を認識すると横顔であるが、色紙の方を見ると何かの切れ端のようにしか見えない。つまり、既知のデーターにない形である。
色紙は黒色の紙の上に乗っているに過ぎない。ゆえに黒色の紙は本来意味のないベタであると同時に、添付された色紙の形も意味を見いだせず、二枚の紙が別々に置かれたならば意味の浮上は出現しない。
もちろん意図された構成ではある。
しかし、何かの推測さえも拒否するような二枚であり、いわば偶然の重なりが意味を生んだとも言える。
横顔は《有るが無い》、そして《無いが有る》
見えることと見えないことの偶然性。存在すらもその領域を浮遊しており、確認は幻視ですらあるかもしれないが、わたし達は見ることを確信している。(その確信さえも…)
写真は『DUCHAMP』ジャニス・ミンク(www.taschen.com)より