このフリーダは、ときおりクラムにビールの給仕などをしておったのです。いまは、べつの娘が酒場にいるようです。もちろん、こんな移動なんか、どうだってよいことです。おそらくだれにとってもそうでしょうが、クラムにとっては、たしかに問題にもならんことにちがいありません。
☆フリーダ(自由・平和)はクラム(氏族)に、実直に多くの汚点を話した。今は来世で別の伝説になっているようです。ただこの変化は多分クラムにとって完全に信じるほど重要ではありません。
『エナメルを塗られたアポリネール』
修正レディ・メイド、エナメル看板に彩色。
APOLINERE・・・A pole in air (空中の軸)を暗示しているという。空中の軸、有るかもしれないが、見えず、無いとしか認識できないものである。
ANY ACT RED (すべての赤い行動)…躍動・活気だろうか。
化粧台の鏡に女の子の後ろ髪が書き加えられている。
ベットらしき物の形態も不自然であるが、簡略化(図案化)ということか。
アポリネールは早くも1913年に、デュシャンが「知的総括ではなく、集合体としての形と色、つまり知識にならないうちの知覚を自然からもぎ取ることをめざして」芸術を創ろうとしたと書いている(説明文より抜粋)
眼に見える自然の形態以前、意識下の曖昧模糊、混沌を取る。つまり学習されたデータ・概念の集積からの解放を削除するという、深層を把握するべく図ろうと考慮している。
色を塗られた(見えるようにした)空中の軸、空間を何気に歪めた画面に登場する未経験・未知である無垢な女の子の設定はデュシャンを刺激したに違いないし、性的な暗示の指摘も肯ける。
存在の原初。
色、形、見える光景への否定、否定の向こうに見えるはずの肯定への挑戦。まさに『エナメルを塗られたアポリネール(空中の軸)』このスペルの並びには大いなる教示があり、またレディ・メイド(既製品)であることも重要なポイントとしてデュシャンの意図に合致している。
答えは社会の中に偶然性をもって潜んでおり、ほんの少し修正を加えることで、より明らかに本質を衝いてくる。
写真は『DUCHAMP』ジャニス・ミンク(www.taschen.com)より
「何だと、ぼくがセロを弾けばみゝづくや兎の病気がなほると。どういうわけだ。それは。」
野ねずみは眼を片手でこすりこすり云ひました。
☆化(形、性質を変えて別のものになる)談(話)の図りごとを描く記也。
現れる片(二つに分けたものの一方)に趣(ねらい)を運(めぐわせている)。
「あなたにお伝えしておかなくてはならんことは、つぎのことです。この家の酒場に、もとフリーダという女が勤めていた。わたしは、名前しか知らず、本人に会ったことはありません。わたしに関係ないことですからね。
☆その事件についてですが、と彼は言い、かつての信ずべき自由の使いです。わたしは、ただ噂だけしか知らず、彼女を知りませんし、彼女はわたしを心配していません。