池永寛明氏大いに語る
江嵜企画代表・Ken
西宮文化協会、十月行事、文化講演会が、「五感によるひとづくり、ものづくり、まちづくり」と題して講師に池永寛明氏を迎えて、令和元年10月7日(月)午後1時半から西宮神社会館で開かれ楽しみにして出かけた。会場の様子をいつものようにスケッチした。
山下忠男、西宮文化協会会長さんから「池永寛明さんは、大阪市立大学ご出身、大阪で育った生粋の大阪人、関西人でもあります。現在、大阪ガス、エネルギー・文化研究所顧問、マネジメントも担当された。大阪をテーマにしながら西宮とのご縁にも触れていただきます」と冒頭挨拶された。
「大阪ガス、エネルギー・文化研究所は30年前に出来た。本日は1時間の予定となっておりますが3時間分のお話をすることになりますので早口にしゃべります。レジメをご用意しましたのであとでご覧願えれば幸いです。」と池永さんは話を始めた。
質問時間を入れて講演は3時前に終わった。講演の最後に池永さんは会場正面にプロジエクターで5枚の絵を順番に見せ「白い砂に一石入れると石が砂を支配する。黒のシャツに一点白を入れると、白が全体を支配する。山の風景画に桜の木が一本咲くと絵全体を支配する。それが五感です。」と解説した。「この五感という感性は上方の風土につつまれ、触れることで育まれていった。五感が都市を、住まいを、ビズネスを洗練させるのです。」「大阪の商家は女性相続システムです。江戸時代の寺子屋は男女比率が3対2(全国4対1)で圧倒的に女性文化だった。女性が上方の「五感」を作り出した。地味で質素ながら上品な文化を作り出した。上方が復興しないといけないのは「女性」文化。世界中の優秀な女性が集まり、女性たちが活躍する都市を目指すのです」と池永さんは力を込めた。
「学び合う都市を目指す。今、人を惹き付ける力が圧倒的に不足している。人に魅力がなさすぎます。何故でしょうか。学びが足りないからです。だから、話をしていても面白くない。「ほんまか?(真偽を見分ける)」、「要はこういうことなんや(本質をつかむ)」、「なんでや?(背景を知る)」という言葉が大阪から減り続けている。「先入観」、「過去の栄光への固執」が、「正しいこと」、「本物」を見い出せなくしている。「何がすごいのか」を見出す。「すごいやん」と想うこと。「ありがとう」と感謝することなんです。」と、池永さんの講演は終わった。
池永さんの講演冒頭の話に戻す。「現在の行政区分は成立してわずか150年。旧令政国区分は1300年前の奈良時代に遡り1200年続いてきた。地形・風土、地域の歴史のなかで培われた生活習慣や文化は現代にも根付いている。西宮は摂津国区分だった。」えべっさんの物語をどう読むか。池永さんは「不具で生まれ、流された子を神様として祀り、1700年もたった今も、えべっさんとして、篤く信仰している。「寛容と融和」という日本の心を見ることが出きる。西宮は「日本的優しさ」の聖地です。」と話した。
話は中国、深圳に飛ぶ。「深圳は30年前、30万人の漁村だった。いま1,400万人の世界都市に発展した。深圳の成長の本質は日本に学び、忠実に実践してきたことです。そのことを日本人が忘れてしまっている。」と話した。
今、中国の書店には、日本の本が並ぶ。村上春樹、東野東吾。谷崎潤一郎の「陰影礼賛」は中國のデザイナーの必読書になっている。清少納言の「枕草子」が中國でブームになっている。漢・唐文化を知り尽くした聡明・利発・前向きなテキパキした1000年前の日本女性の感覚に中国人女性は感動している。」
「漢・隋・唐の文化が、今、日本の上方にある。インバウンドの急増は爆買い目的だけでない」と池永さんはここでも力を込めた。空海は「般若心教」を、「極楽浄土」を、日本的に翻訳した。「翻訳」とは海外のコード(本質(暗号化されている)を日本的なもの「モード」(様式・方法論)に転換して行くことだ。日本人は海外の1のものを翻訳して100のものに高めた。ところが、今、大阪は、翻訳力が低下してきている。コードをモード化できなくなっているのですと池永さんは話された。
力感溢れる講演会をご用意いただいた西宮文化協会事務局の皆様にひたすら感謝である。(了)