旧住吉幼稚園が更地に姿を変えました
画・江嵜 健一郎
旧神戸市立住吉幼稚園がほぼ更地になった。取り崩したコンクリートの
塊の一部が小山になって大型のシャベルカーの足元にいまも
少し残っている。数日中にきれいに無くなるのだろう。
1月23日に当欄で工事が始まったころの様子をスケッチしている。
いちばん怖れていた毎年春になると元気をもらった桜の木の姿が
跡形もなく消えてしまったことが一番寂しい。藤棚も見えない。
2月24日(木)朝10時ごろ所用があり跡地の傍を通った。先を
急いでいたので桜の木が倒される現場は見ていない。それが
まだしも救いである。
道路に沿って数本並んで立っていた樅の木の伐り倒しが始まる
瞬間だった。シャベルカーの先端に付いた削岩機の刃が左右に手を
拡げた太い枝めがけて上から一直線にガーんと落された。あっけなく
幹もろとも下に落ちた。当スケッチ左下隅に見える切り株が樅の木の残骸である。
ここ1か月、自宅マンションの窓から旧住吉幼稚園校舎が解体される
光景を見てきた。シャベルカーが事細かに対応していることが分かった。
建物の解体といった大ぶりの働きに加えて土の下に隠れた基礎の取り出し、
出て来た瓦礫をこと細かく潰していく様を目撃した。
大きなコンクリートの塊を取り出したあとドカーンと一撃を加えない。
シャベルの先端に取り付けられた二股に分かれた刃先で塊をつかむ。
まるで鳥が獲物を捕まえて仕留めるように、左右の刃で挟み付けて細かく
潰していく。潰されて小ぶりになった塊が積み上げられては、次々
大型トラックが運び出していく。
潰す時、当然粉塵が出る。係員が、その都度、水をかけながら次に
進めていく。粉塵の対応に神経を使っていることが一連の動作で
よく分かる。歩道にも粉が飛ばないように水かけを怠らない。
解体作業の問題点は粉塵と今一つは騒音である。工事現場裏に
お住みの方の声を聞いていないので軽率に物は言えないが、
予想以上に時間をかけ、静かに工事が進められているような
気がする。
本日は日曜日で作業はない。跡地にどんな建物が建つのか想像も
つかない。町の姿が次々と変わっていくのは世の習いなのかも
しれないが、寂しい限りである。(了)