画・江嵜 健一郎
梅雨の晴れ間の8日午後、例の更地に出かけて桔梗と桔梗の背中から私も入れてと顔を出したグラジオラスをいれてスケッチした。そろそろ描き終わるころ雨がぽつぽつ降ってきた。
桔梗は好きな花の一つである。毎年暦通り咲いてくれる。どの花もそうであるが年1回お礼肥しをやるだけである。律儀に咲いてくれるのが嬉しい。下草だけは丹念に取ってやることにしている。どの花も居心地よさそうにしているのがすぐに分かる。
物の本によれば植物さんは根を通してお互い情報交換していることを知った。葉は光合成するため欠かせないことは小学校の教科書にも出ている。根を通して「話し合っている」ことを知ってから一層親しみを感じるようになった。
桔梗の花ことばは「永遠の愛」、「変わらぬ愛」、「気品」、「誠実」とヤフーのブログに出ていた。言葉に不足はない。4月に入ると芽を出す。ゆっくり成長する。グラジオラスの方が花をつける時期は少し早い。まるで「二人」が申し合わせたようにグラジオラスがそろそろ
仕舞風呂かなというときに桔梗は急にピッチを上げ、つぼみが薄紫色の風船のように膨らむとほぼ翌日咲く。花持ちは結構いい。
グラジオラスはピンクをベースに赤くほほに紅をさしたように咲く花が好きだ。震災のあと植木屋さんでかれこれ20年前ほどに苗を買って植えた。2~3年前からなぜか芽を出さなくなった。今咲いているグラジオラスは子供か孫であろうか。おそらく飛んだ種が根を下ろしたのかもしれない。親とそっくりだから鳥の落とし物ではなさそうだ。
グラジオラスの花ことばは色によって違う。ピンクの花ことばは「たゆまぬ努力」、「ひたむきな愛」、「満足」と出ていた。どれをとっても言葉に不足はない。
スケッチをしていたところ通りから「大きくなりましたね」と男の人の声が聞こえた。植えた時から想像もできない。一回りも二回りも大きくなった金木犀を指さしていた。秋になるといつも香りを楽しんでいると話していた。
駅の真ん前に更地がある。結構な数のひとが花を見ているに違いない。袖触れ合うも多生の縁という仏教の言葉がある。人も花もそれは同じではなかろうかと人生もそろそろ仕舞風呂に近づいてますます実感する。
花を描いているといつも元気をもらえる。外から声もかかる。花からいただいたご縁にひたすら感謝である。(了)