思索の日記 (クリックで全体が表示されます)

武田康弘の思索の日記です。「恋知」の生を提唱し、実践しています。白樺教育館ホームと共に

デイヴィス指揮ーベルリオーズ「レクイエム」のライブ

2009-07-15 | 趣味
ベルリオーズの音楽を愛聴して40年。
この想像力そのもののような音楽は、わたしに精神の自由を与えてくれた。

彼の音楽は、形式を踏まえた音楽とは対極の、情熱と抒情性の音楽だ。
ただし、横溢するロマンは、ロマン主義とはならず、古典的とさえ言える論理を持つ。

わたしは、長いこと、ベルリオーズが、自身の最高傑作を「レクイエム」だと述べたことが腑に落ちなかった。

しかし、昨年あるCDとの出会いが、その謎を氷解させてくれた。

長年、ベルリオーズに特別の思いを持ち続けるイギリスの指揮者、サー・コリン・デイヴィスが、1994年2月14日に行った「ドレスデン爆撃戦没者追悼演奏会」のライブだ。オーケストラは、シュターツカペレ・ドレスデン。

このレクイエム(鎮魂歌)は、東京大空襲と同時期に起きたイギリスとアメリカによるドレスデンへの無差別爆撃による死者を悼むために奏されたのだが、1960年代~70年代にかけて数々のベルリオーズの名演奏をなし、近年また頻繁にCDを出しているデイヴィス(そのLPとCDのほとんどをわたしは聴いている)は、この特別の演奏会で、今までとはまるで違う「霊感」に憑かれ、この曲の真価をはじめて十全に現した。

わたしは、ベルリオーズのレクイエムが巨大な編成を必要とするは、大音響による効果のためではなく、消え入るような弱音の美と深い叙情性を生み出すためであることを、深く了解した。

なるほど、これは比較を絶した驚くべき音楽だ。深い人間性の悲しみは、実に美しい。


武田康弘
コメント (2)
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