自分で自分を騙(だま)す自己欺瞞をすると、自分の意識の奥深くが壊れてしまい、「外的人間」(内面のない人形)に陥りますが、これを知らないために、自分を自分で滅ぼしてしまう人が多いように思えます。
自分を騙すことで他者をも騙し、形だけを整えた固い自己になると、生き生きとした「私」は消え、世界は灰色になってしまうでしょう。
これは、【根源的な損】としか言えませんが、世間的な価値を絶対化してしまう人は、この不幸からの脱出がとても難しいようです。外的人間には、心の真実がなく、いつも内なる世界を外なる価値で固める志向で生きるために、「私」は死んでしまい、後には外形だけしか残りません。
充実した生、豊かな生、幸福な生は、【意味】に満ちている生ですが、意味とは、外的価値の呪縛を解き、内面の声を聴きつつ生きるところからしか生じないはずです。これは心の原理です。自己欺瞞ほど人間をダメにするものはない、これを知らないと、一生が無駄になるのではないでしょうか。
武田康弘