思索の日記 (クリックで全体が表示されます)

武田康弘の思索の日記です。「恋知」の生を提唱し、実践しています。白樺教育館ホームと共に

原理の自覚化の必要。「あなたを国の軍神として祀る」が多数派であれば、従うのが「公共」?

2010-11-16 | 恋知(哲学)
下の13日のブログ・【『公共』の本質とは、「互いの自由を承認し合う」こと】 に対するコメント(mixi)ですが、
民主主義の原理について明晰化するために有用だと思いますので、記事にします。ご検討ください。


なお、途中でよしくんばっとさんの言われる
「あなたを国の軍神として祀る」(靖国神社)が多数派の意見であれば、それが「公共」であり、それに従うのが民主主義ですね。は、
民主主義とは異なる「公共」には当て嵌まります。戦前の日本における「公共」はそうでした。
しかし、それは、【人権思想を基盤とする主権在民の民主主義】における「公共」ではありません。念のため。



すかぶら 2010年11月13日 13:28
違いを認める事も大事ですよね。
人も国も、
当たり前の事ですが
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タケセン 2010年11月13日 23:32

論理上、互いに自由を認め合わないと、公共は成立せず、自由は、現実にはならず、強者の一方的な自由のみがある(勝手)、という事態になります。
「自由の相互承認」とはへーゲルの概念で、近代市民社会の原理ですが、それは「民主的な公共」の本質を一言で言い表すもので、核心中の核心と言えるでしょう。
その原理(根源ルール)を承認し合った上でなければ、自由とは絵に描いた餅か、一部の人間のものに過ぎなくなるのですね。
すかぶらさんのいう通り、違いを認める(対等な人間として互いを遇する)ためには、大元の約束を守り合うことが条件で、それが曖昧だと、必ず特権者・強者の自由だけがある、という結果になってしまいます。
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よしくんぱっと2010年11月14日 00:29

すかぶらさん、

>違いを認める事も大事ですよね。

おっしゃるとおり当たり前のことですが、これがなかなかできないですよね。

「互いの自由を承認し合う」より、「互いの違いを承認し合う」ことの方がより根源的で重要だと私には思えます。

互いの違いを承認し合い、その上で、「あなたを国の軍神として祀る」が多数派の意見であれば、それが「公共」であり、それに従うのが民主主義ですね。それに従いたくないのなら、従いたくない人がその共同体(日本国)から出て行くべきでしょう。
一個人が、その人独自の考え方を多数派に強要しようとしたり、その考え方に反する人を“処罰”しようとしたりするのは、公共に反する行為であり民主的ではありません。
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Sam 2010年11月14日 22:09
よしくんぱっとさん

>互いの違いを承認し合い、その上で、「あなたを国の軍神として祀る」が多数派の意見であれば、それが「公共」であり、それに従うのが民主主義ですね。それに従いたくないのなら、従いたくない人がその共同体(日本国)から出て行くべきでしょう。

これは民主制を思想抜きに、単純に多数決の制度と見る見方であり、形式論理に偏った考え方です。
年金制度をどうするかといった問題であれば、極めて公共性の高い問題であり、最終的には多数決によって決められるのは妥当です。
ですが、個人の信条は別問題で公共とは関係ありません。個人の信条を侵犯するような上記の発想・発言は互いの自由を承認する民主制の原理を踏み外しています。この問題は多数決とは関係ありません。
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タケセン 2010年11月14日 22:56
よしくんばっとさん

近代市民社会はいかにして誕生したのか?
泥沼の争い(主に宗教戦争)から、近代民主主義の原理は誕生したのですが、それは「自由の相互承認に基づくルール社会」です。
わたしは、この原理を覆すことはできないと思いますが、それを超えるアイデアがおありならば、ご提示をお願いします。
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よしくんぱっと 2010年11月15日 00:49

申し訳ないですが、私には「論理上」と言って説明される“正しい論理”と、「形式論理」と言って否定される“誤った論理”との違いが分かりません。

「互いの自由を承認し合う」考えを持っていない人を人間扱いしなかったり“処罰”しようとしたりすることが正しい考え方であるとは私には思えません。



>近代市民社会はいかにして誕生したのか?
>泥沼の争い(主に宗教戦争)から、近代民主主義の原理は誕生したのですが、それは「自由の相互承認に基づくルール社会」です。
>わたしは、この原理を覆すことはできないと思いますが

今我々が住んでいる社会は、上で定義されている「近代市民社会」ではない、というのが原理を覆す理屈になると思います。原理が誕生したことと、その社会が誕生したこととは異なります。

「自由の相互承認に基づくルール社会」がいかに美しいものであっても、それを原理とする社会が実在していないのであれば、それは“絵に描いた餅”です。その原理を自らの原理にしないで生きている人を、その餅基準で人間でないような扱いをするのは正しくない、と私は思っています。

誤解していただきたくないのであえて書きますが、「自由の相互承認に基づくルール社会」は素晴らしい社会で私もそれを目指しているつもりです。
そして、自分が目指すだけでなく、他人にも目指して欲しいと願うと同時に、その原理を原理にせずに生きている人の価値観も尊重しないといけないとも思っています。
それができなければ、「自由の相互承認」という名の下に、『他者が、いやだ・困るということを「強要」したり、「誘導」したりする』という矛盾した生き方をしていることになります。
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タケセン2010年11月15日 12:31
よしくんばっとさん

「原理」は、あくまでも原理を考える次元で成立するもので、「現実」ではありません。
しかし、それがなければ、現実の法律や社会制度や、あるいは基本的な道徳も、みな成立しないのです。
その意味で、原理が何かを意識化しないと、個々の問題への対応もよくできません。

「互いの自由を認め合い、守り合う」ためには、基本的な考えの承認が必要であり、それが「人権」という思想を生みましたが、【個々人の人権は、多数決により奪うことはできない】という考え方を原理としています。

その原理までも覆す、という思想を持つことも自由ですが(=存在論レベルでの自由)、それを現実化すること(=経験的・現実的レベルでの自由)は、許されないのです。だから、「他者がいやがることを無理にやる自由」は、禁止です。そのような自由を認めれば、民主制社会は、元(=原理次元)から崩れてしまいます。

「原理」は 理想とは意味を異にするもので、絵に描いた餅のように現実になるのではなく、さまざまに異なり、矛盾し、軋轢を起こしている「現実」(理想という絵に描いた餅にならないから現実と言われます)をそれでもなお一番底で支える【土台】となるものです。それがなければ、人間社会の現実が沈んでしまうという根源ルールなのです。
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よしくんぱっと 2010年11月16日 03:45

では、その原理が誕生する前の人間社会では、現実が沈んでしまっていたんですか?「沈む」という表現で意味されていることが、私にはよくわかっていませんが、少なくとも現実は存在していたし、公共も存在していたと思います。

その原理が誕生したとたんに、一挙に全人類がそれに従わなければならないのですか?そんなことはないとしか私には思えません。その原理が誕生したことと、その原理を強制してよいということとは別です。その原理の誕生によって、その原理に従わない人を人間として尊重しなくてよい特権をタケセンさんが持ったとは私には思えません。
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タケセン 2010年11月16日 12:45

わたしが述べているのは、近代市民社会の誕生に伴う、近代民主主義国家の原理です。古代王制や貴族制や封建性や独裁制の社会についてではありません。
日本でも韓国でも欧米でも、いま、わたしたちは、近代民主制の社会に生きていますから、そこでの共通の約束事(根源的なルール)に従って生きるのですが、もし、それを拒否したいのであれば、異議申し立ては誰でもできます。ただし、人類が長い間かけて作り上げてきた「揺るがし難い」基本規則について覆すことは、現実には不可能です。それが、「人権思想」であり、端的には「『他者の自由を認めない』自由」は認められないという思想なのです。

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コメント

『原理』という語の意味 (古林 治)
2010-11-16 19:22:14

『原理』を「理想」とか「真理」に置き換えて解釈するために、『原理』そのものを否定しさり、結果的に相対主義やら形式論理にこだわるといった、わけのわからない議論に陥ることが多く困ってしまいます。
確たる思想も理念もなく流される現代の日本のあり様の根源にこの問題が横たわっているのかもしれません。
実際に、学者の多くがそのように勘違いしていますから、わけのわからない理論が横行するわけです。
『原理』についてのこの話、繰り返し深化させていく必要があると思います。



コメント (1)
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