思索の日記 (クリックで全体が表示されます)

武田康弘の思索の日記です。「恋知」の生を提唱し、実践しています。白樺教育館ホームと共に

「決断なき原爆投下ーー米大統領71年目の真実」(NHK) 最優秀番組です。再々放送を!

2016-09-04 | 学芸

一昨日の深夜に放送された「決断なき原爆投下ーー米大統領71年目の真実」(NHK)は、見事なルポでした。

17発の原子爆弾を用意したアメリカ軍。

直前までの軍の方針=まず1発目は一般市民多数が住む京都へ投下。
これは、スティムソン陸軍長官(文民側)の強い反対により回避。
しかし、広島は日本軍の街という軍部の報告にだまされたトルーマン大統領。

トルーマンは、ポツダムからの帰りの船中ではまだ軍のウソに気付かず、ホワイトハウスに戻り、はじめて事実を知り、
「こんな破壊行為をしたのは、大統領のわたしの責任だ」と言い、うな垂れた。
その半日後、わすかの時間差で止められなかった長崎投下。

トルーマンは、8月9日の手紙に書いているー「人びとを皆殺しにしてしまったことを後悔している」と。

3発目以降の軍の計画は中止させたが、
トルーマンは、大統領として軍の最高責任者でもあり、2回の投下を正当化せざるをえなかった。
長崎投下の24時間後、全米のラジオ放送で、「戦争を早く終わらせ、米軍の犠牲者を減らすために投下した」という放送の直前に加えられた「ウソ」と、それを流布せざるをえなかった現実。ナチスのみならず、ここでも「悪」の凡庸。


赤裸々に真実に迫るこのルポは、
軍人と政治家の対立という問題を超えて、
人間存在の愚かさと悲しさ、
国家と戦争の現実を深く想わせ、
言葉を失う。
怒りや悲しみと共に、静かで奥深い感動に襲われる。

 

この《最優秀番組》(制作はNHK広島)というほかない見事なルポ、再放送とのことですが、再々放送も。
これは、いまの中学生以上は、皆が見るべき深い内容の番組だと思いますので、学校でもぜひ。
真実のもつ力。

武田康弘

 





 

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五輪報道ー「まるで全体主義国にいるような気分になった。」  ドナルド・キーン

2016-09-04 | 社会批評

日本人以上に日本文化を愛している日本文学研究者のドナルド・キーンさんが書いています。今朝の東京新聞一面です。



ようやく終わった。

リオ五輪ではない、台風のような五輪報道である。

連日、ほとんどの新聞は一面から社会面まで、日本人の活躍で埋め尽くされた。

どれもこれも同じような写真が並んだ。どのテレビ局も似たような映像で伝えたのは、日本人の活躍だった。

まるで全体主義国にいるような気分になった。

 

五輪の理念は、国境を超えたスポーツを通じての世界平和への貢献である。国別対抗ではないことが憲章に明記され、獲得メダル数の公式ランキングもない。五輪が国威発揚の場とされた過去から学んだと聞いた。

にもかかわらす、メディアが率先して民族主義に陥っているかのようだ。



 

直接は関係しません(間接的には深い関係があります)が、日本の学校、とりわけ中学校は、まさに全体主義そのもので民主主義国の学校ではありません。

なぜ、いつまでも、「部活動」が象徴する画一主義ー強制する教育(教育とはとても呼べない)から抜け出せないのでしょう。

日本がどれほど遅れているか、世界をなぜ見ないのか。 いま先進国はみな自分の頭で考えー自由対話す教育(広義の哲学授業)を導入しています。

いつまで自閉という病の中で全体主義を続けるのでしょうか?


武田康弘

コメント (5)
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