数年前のCD発売時に購入し感激した最高の「春の祭典」(初演時の楽譜と楽器による演奏)が、そのためにロトがつくったフランス人によるオーケストラのレ・シエクルと共に来日。アジアツアーの一環としてだが、日本では昨日の東京オペラシティ(新宿)一回のみの公演。
前半のドビュッシー「牧神の午後への前奏曲」と「遊戯」、ラヴェルの「ラ・ヴァルス」からして、もう美そのもの。フランスの明晰さ、透明さ、オシャレ。しかも、それは、よきフランスを感じさせる「自然さ」に満ちている。シャープで凜として立つが、ナチュラルで土の臭いをもち、人間味にあふれている。AIの自動演奏のような、とは対照的にヒューマンな音楽だ。
う~~~ん、フランス音楽とはこれだ! この味、色、香りは、他のオケでは真似できない。もう一度、フランスにブラボー! 痺れた。
後半、「晴の祭典」は、もう、全身に鳥肌が立ちっぱなしで、ストラヴィンスキーの頭に浮かんだ作曲時のイメージをそのまま音にしてしまった!ようなものすごい演奏で、口が開きっぱなし。ロシアの大地と共にパリの都会的な洗練も感じさせる。神田生まれのわたしは、粋だね~、というのが好きだが、まさに「粋」。粋とは、現代の都会(地方出身者が都会に憧れてつくった都会)とは全然違い、ふだん性や何気なさに現れるセンスのこと。
アンコールの「アルルの女」から は静謐で透明。
全身が美に染まった。なんという素晴らしい演奏会であったことか。ただ感激あるのみ。
オケのメンバーは、演奏会後には、男女関係なく抱き合い、頬を寄せ合い、とても仲がよい。強い自立心をもつ個人の国だからこそのよろこびの触れ合いは、見ていて羨ましくなる。自由の国だな~~。
※日本で最初にロト&レ・シエクルの「春の祭典」を批評したのは、わたしです(自慢)ー-この年のレコードアカデミー大賞を受賞しました。
武田康弘