★さちゅりこん――渡邊史郎と縦塗横抹

世界が矛盾的自己同一的形成として、現在において過去と未来とが一となるという時、我々は反省的である。(西田幾多郎)

月に憑かれて年さかる

2010-11-17 21:41:34 | 文学


こぞ見てし秋の月夜は照らせども相見し妹はいや年さかる(人麻呂・万葉集211)

相手と死別していなくとも、こういう気持ちになることはあろう。実際に歳を重ねないとこういう感情は起こらない気がするけれども。私は、「月夜は照らせども」あたりに、錯乱のたねがあるように感じる。月光に焦点が合わない「月夜は」、といわれていることによって(月夜はそれだけで月光のことであると辞書にはあるけどさ)、頭が一瞬何も動かなくなる感じを覚えるからである。あるいは「月夜」という状況自体がいろいろと照らし出してしまうものなのであろうか。

サンデル化計画1

2010-11-17 07:04:08 | 大学


最近、NHKでハーバード大のマイケル・サンデル教授の授業が何回か放映されて、話題になっているようである。400人ぐらいの大学1、2年生に向かって、「正義」やら「公共性」をテーマとして、プラトンやらカントを参照しつつ、ハーバード大に入ったからといって下の階級より普通の人より多くの収入を得てもいいのかとか、正義のための殺人は許されるのか、とか、自慰行為は結婚と見なされるのか同性どうしの結婚はありか、とかについて語ったり、学生に意見を聞きながら、サンデルの意見に巧妙に誘導する考える授業である。

(ハーバードの学生が、サンデルの授業の前に、数冊の哲学書を読んだ上で参加する小討論会を含め、猛烈な予習をやらされていて、講義の後も毎回レポート提出が課せられていることをなぜNHKは報道しないのか。コミュニケーションの前に原典講読ですよ。出席している学生の顔色からしてサンデルの授業は比較的他の授業より予習復習が楽なのかもしれぬ……が……)

ポケットに手を突っ込みながら、「はい、そこのきみっ」とあてる姿がりりしく、当然私も先週共通科目の100人に向かってポケットだけまねしてみたのだが、××大学の学生はあまりに授業に集中していたせいか、誰も気づかなかった。

というか、×川大学で××××がサンデル教授になるためには、まずダイエットから始め、頭髪も調整しなければならない。これは、×川大学の学生がカントヘーゲルを読んで私の恋愛小説の授業に参加する以上に難しいであろう。