裏の草原に行かねばなりません 2013-07-12 13:58:20 | 文学 「今から裏の草原に行かねばなりません。どうぞ遊びに入らっして下さいね」 と云ううちに、二人の姿は消えてしまいました。うた子さんはハッと眼をさましましたが、この時やっと気がつきまして、 「それじゃ、水仙の精が遊びに来てくれたのか」 と、夜の明けるのを待ちかねて草原へ行ってみました。 草原は黄色く枯れてしまっている中に、水仙が一本青々と延びていて、青と赤と二いろの花が美しく咲き並んでおりました。 ――夢野久作「青水仙 赤水仙」