★さちゅりこん――渡邊史郎と縦塗横抹

世界が矛盾的自己同一的形成として、現在において過去と未来とが一となるという時、我々は反省的である。(西田幾多郎)

テロには屈しないそうですが、がんばってください

2015-02-05 23:40:30 | 文学
「ナオミ!ナオミ!もうからかうのは好い加減にしてくれ!よ!何でもお前の云うことは聴く!」
何を云ったか全く前後不覚でした、ただセッカチに、早口に、さながら熱に浮かされた如くしゃべりました。それをナオミは、黙って、まじまじと、棒のように突っ立ったまま、呆れ返ったと云う風に睨みつけているだけでした。
 私は彼女の足元に身を投げ、跪いて云いました。
「よ、なぜ黙っている!何とか云ってくれ!否なら己を殺してくれ!」
「気違い!」
「気違いで悪いか」
「誰がそんな気違いを、相手になんかしてやるもんか」
「じゃあ己を馬にしてくれ、いつかのように己の背中へ乗っかってくれ、どうしても否ならそれだけでもいい!」
私はそう云って、そこへ四つン這いになりました。

(谷崎潤一郎「痴人の愛」)



屈したくなる場合がある……

しかし、安倍首相は、敵に屈しない人である。「イスラム国」に謝りたくない気持ちは分かる。ただ、後藤さんや湯川さんの親族だけでなく、救出作戦に失敗したことを謝らないとなると、たぶん、日本国民の大多数も彼にとっちゃ敵に見えている可能性がある。テロと国民には屈しない、というわけだ。国会決議までやりやがって……がんばってください。