「ナオミ!ナオミ!もうからかうのは好い加減にしてくれ!よ!何でもお前の云うことは聴く!」
何を云ったか全く前後不覚でした、ただセッカチに、早口に、さながら熱に浮かされた如くしゃべりました。それをナオミは、黙って、まじまじと、棒のように突っ立ったまま、呆れ返ったと云う風に睨みつけているだけでした。
私は彼女の足元に身を投げ、跪いて云いました。
「よ、なぜ黙っている!何とか云ってくれ!否なら己を殺してくれ!」
「気違い!」
「気違いで悪いか」
「誰がそんな気違いを、相手になんかしてやるもんか」
「じゃあ己を馬にしてくれ、いつかのように己の背中へ乗っかってくれ、どうしても否ならそれだけでもいい!」
私はそう云って、そこへ四つン這いになりました。
屈したくなる場合がある……
しかし、安倍首相は、敵に屈しない人である。「イスラム国」に謝りたくない気持ちは分かる。ただ、後藤さんや湯川さんの親族だけでなく、救出作戦に失敗したことを謝らないとなると、たぶん、日本国民の大多数も彼にとっちゃ敵に見えている可能性がある。テロと国民には屈しない、というわけだ。国会決議までやりやがって……がんばってください。
何を云ったか全く前後不覚でした、ただセッカチに、早口に、さながら熱に浮かされた如くしゃべりました。それをナオミは、黙って、まじまじと、棒のように突っ立ったまま、呆れ返ったと云う風に睨みつけているだけでした。
私は彼女の足元に身を投げ、跪いて云いました。
「よ、なぜ黙っている!何とか云ってくれ!否なら己を殺してくれ!」
「気違い!」
「気違いで悪いか」
「誰がそんな気違いを、相手になんかしてやるもんか」
「じゃあ己を馬にしてくれ、いつかのように己の背中へ乗っかってくれ、どうしても否ならそれだけでもいい!」
私はそう云って、そこへ四つン這いになりました。
(谷崎潤一郎「痴人の愛」)
屈したくなる場合がある……
しかし、安倍首相は、敵に屈しない人である。「イスラム国」に謝りたくない気持ちは分かる。ただ、後藤さんや湯川さんの親族だけでなく、救出作戦に失敗したことを謝らないとなると、たぶん、日本国民の大多数も彼にとっちゃ敵に見えている可能性がある。テロと国民には屈しない、というわけだ。国会決議までやりやがって……がんばってください。