精神的な事を求める人たちの一般的傾向として、今までの現在に至る自分の人生に満たされないものが有る、何かの問題を抱えている…だからこの現状を何とかしたいと思っている人が多いようです。
そして自分の辛かった過去を封印したい…そうでなくとも過去は過ぎ去ってしまったんだし、これからを見据えていく事が大事なんだ…とまあ、過去というのは顧みない傾向が多いですね。しかしこれを又飛び越してこない先の人類の未来とかに飛んで行ってしまう人も多いんですが…
ところが、私の知り合いで”すぎた”という、何かと古いものを有難がっている変わった男が居ます。(まあ、私の知り合いというのは一人としてマトモなヤツなど居ないんですが…あっちはあっちで私のことをそう観てるんでしょうけどね)
とにかく彼の趣味の話ときたら、映画、音楽、プロレス、ボクシング、漫画…もう、すべて年代がかってないものは無い、その語り口ときたら、歴史の語り部といった風です。そりゃあ、私だってそれなりの、というか、かなりのオジンですよ。 だから共感できるところは確かにありますよ。
だけど、彼ときたら…例えば好きなジャズのレコードはと訊けば ”ジェリー・ロール・モートンとレッド・ホット・ペパーズ、キング・オリバーとディキシー・シンコペーターズ(共に1920年代の楽団)”なんですと! なんだ、そりゃ!”生まれるはるか前のことなど誰が知るか”ではありませんか? こうなると彼のあだ名はもう、決まりです ”ミスター・レトロ”!
このレトロさんから、最近とても普段接してる彼の口からは、想像出来ないような話を、彼から呼び出されて中央線沿線のとてもレトロな喫茶店で聞きました。
そして私は、少し興奮気味に出た彼の言葉に耳を疑いました。
「ひょっとして僕は目覚めてしまったのかもしれない…いつか君が話していた、そのお…なんだ…雷に打たれたと思ったら、火山が爆発して、あっちがこっちになった、とか…訳わかんなくて話半分に聞いていたものだったけど…”あれ”はそういう事だったのか…ってね」
―ヘエ…君は何時の間に裏側の住人になったんだ。何で又そんなことになったんだい?
「それはだね、これなんだよ!」(と彼はおもむろに何やら怪しげな箱を見せてくれました)
―何々、なんか書いてあるぞ…”過去は封印されていない!開けてみよ!”だってえ…胡散臭いなあ…どれどれ(…と開けて見ます)紙切れが一枚入っているぞ…」
「ゆっくり読んでみたまえよ…」(するとわずか数行こんなことが書かれていたのです)
あなたの今までの現在に至る人生で、最も愛を感じたことを想起せよ!
肉親、恋人、ペット、自然…どんな関わりでもよい、丹念に、具体的に、アリアリとその情景、感じたことが浮かび上がるように…
―たったのこれだけか? これだけで覚醒だとか、何とかとつながるんだろうか? それ風な事は何も書かれてないじゃないか…
「そうだよ! だけど、これは例えば瞑想に関する手引き書なんかより、はるかに強力なツールだと思ったよ!それにだね…本当のことを言えば、僕は分かったんだ!僕は確かに目覚めたのかも分からないよ…だけど、それは愛に目覚めたんだ、という事が…この愛がアリアリと蘇って来たんだよ!そこから離れた覚醒体験なんかただ”ぶっ飛んだ”というだけのことじゃないか!ってね」
―これは驚いた!まるで骨董屋さんで売ってる、年代物の猫の置物が、”ニャー”と可愛く泣き出したような話じゃないか!
「君は確か、こういう話になるといつも決まって”今ここ、今ここ”って何かの呪文のように、僕に聞かせてくれたよね。だけどこのツールには不思議な魔法が有って、封印され、葬った筈の過去がその今に化けて出るんだ…」
―そ、そうなのか!うーん…いくら考えても君が愛の伝道師になるなんてことはあり得んだろうけど…ところで、その君のおそらくはあまり縁が無かったであろう、愛を感じたことっていうのは?
「そう、51年前、物心ついて僕の前に世界が突然開けたことだった…それまでは生きる事がどんなことで、世界がどんなものかも分からなかった…
そうだ、何処に居ていいかも分からなかった…そして突然、その時分どっかからか声なき声がこう告げたんだ”お前はここに居ていいんだよ”とね…
―そ、そういうことなのかあ…これはそんなに得難いシロモノだったのか…一体何処で仕入れたんだ?
「サニーサイド…いや違った、それはこっち側のことだった…アザーサイド・オブ・ライフとかいう会社の未分(まだわかれ)さんという人、なんでもこの人はどうしても姿を見せられないというので、その代理の部判(ぼうはん)という人からもらったんだ…
―おかしいな、あそこで扱っているものは日の目を見てはいけないはずなんだけどなあ…ここで大っぴらに話すのはまずいんじゃないか…
「もう、どっかで文章化されてるんじゃないかなあ…」
―ああ、それなら大丈夫だ。よっぽどのもの好きじゃないと読まないだろうから…そうでなかったら世界中で火山が爆発しちゃうからなあ…。
そして自分の辛かった過去を封印したい…そうでなくとも過去は過ぎ去ってしまったんだし、これからを見据えていく事が大事なんだ…とまあ、過去というのは顧みない傾向が多いですね。しかしこれを又飛び越してこない先の人類の未来とかに飛んで行ってしまう人も多いんですが…
ところが、私の知り合いで”すぎた”という、何かと古いものを有難がっている変わった男が居ます。(まあ、私の知り合いというのは一人としてマトモなヤツなど居ないんですが…あっちはあっちで私のことをそう観てるんでしょうけどね)
とにかく彼の趣味の話ときたら、映画、音楽、プロレス、ボクシング、漫画…もう、すべて年代がかってないものは無い、その語り口ときたら、歴史の語り部といった風です。そりゃあ、私だってそれなりの、というか、かなりのオジンですよ。 だから共感できるところは確かにありますよ。
だけど、彼ときたら…例えば好きなジャズのレコードはと訊けば ”ジェリー・ロール・モートンとレッド・ホット・ペパーズ、キング・オリバーとディキシー・シンコペーターズ(共に1920年代の楽団)”なんですと! なんだ、そりゃ!”生まれるはるか前のことなど誰が知るか”ではありませんか? こうなると彼のあだ名はもう、決まりです ”ミスター・レトロ”!
このレトロさんから、最近とても普段接してる彼の口からは、想像出来ないような話を、彼から呼び出されて中央線沿線のとてもレトロな喫茶店で聞きました。
そして私は、少し興奮気味に出た彼の言葉に耳を疑いました。
「ひょっとして僕は目覚めてしまったのかもしれない…いつか君が話していた、そのお…なんだ…雷に打たれたと思ったら、火山が爆発して、あっちがこっちになった、とか…訳わかんなくて話半分に聞いていたものだったけど…”あれ”はそういう事だったのか…ってね」
―ヘエ…君は何時の間に裏側の住人になったんだ。何で又そんなことになったんだい?
「それはだね、これなんだよ!」(と彼はおもむろに何やら怪しげな箱を見せてくれました)
―何々、なんか書いてあるぞ…”過去は封印されていない!開けてみよ!”だってえ…胡散臭いなあ…どれどれ(…と開けて見ます)紙切れが一枚入っているぞ…」
「ゆっくり読んでみたまえよ…」(するとわずか数行こんなことが書かれていたのです)
あなたの今までの現在に至る人生で、最も愛を感じたことを想起せよ!
肉親、恋人、ペット、自然…どんな関わりでもよい、丹念に、具体的に、アリアリとその情景、感じたことが浮かび上がるように…
―たったのこれだけか? これだけで覚醒だとか、何とかとつながるんだろうか? それ風な事は何も書かれてないじゃないか…
「そうだよ! だけど、これは例えば瞑想に関する手引き書なんかより、はるかに強力なツールだと思ったよ!それにだね…本当のことを言えば、僕は分かったんだ!僕は確かに目覚めたのかも分からないよ…だけど、それは愛に目覚めたんだ、という事が…この愛がアリアリと蘇って来たんだよ!そこから離れた覚醒体験なんかただ”ぶっ飛んだ”というだけのことじゃないか!ってね」
―これは驚いた!まるで骨董屋さんで売ってる、年代物の猫の置物が、”ニャー”と可愛く泣き出したような話じゃないか!
「君は確か、こういう話になるといつも決まって”今ここ、今ここ”って何かの呪文のように、僕に聞かせてくれたよね。だけどこのツールには不思議な魔法が有って、封印され、葬った筈の過去がその今に化けて出るんだ…」
―そ、そうなのか!うーん…いくら考えても君が愛の伝道師になるなんてことはあり得んだろうけど…ところで、その君のおそらくはあまり縁が無かったであろう、愛を感じたことっていうのは?
「そう、51年前、物心ついて僕の前に世界が突然開けたことだった…それまでは生きる事がどんなことで、世界がどんなものかも分からなかった…
そうだ、何処に居ていいかも分からなかった…そして突然、その時分どっかからか声なき声がこう告げたんだ”お前はここに居ていいんだよ”とね…
―そ、そういうことなのかあ…これはそんなに得難いシロモノだったのか…一体何処で仕入れたんだ?
「サニーサイド…いや違った、それはこっち側のことだった…アザーサイド・オブ・ライフとかいう会社の未分(まだわかれ)さんという人、なんでもこの人はどうしても姿を見せられないというので、その代理の部判(ぼうはん)という人からもらったんだ…
―おかしいな、あそこで扱っているものは日の目を見てはいけないはずなんだけどなあ…ここで大っぴらに話すのはまずいんじゃないか…
「もう、どっかで文章化されてるんじゃないかなあ…」
―ああ、それなら大丈夫だ。よっぽどのもの好きじゃないと読まないだろうから…そうでなかったら世界中で火山が爆発しちゃうからなあ…。