我が因縁

人にはそれぞれ、今の自分に至るまでどうしても辿らなければならなかった道、受けなければならなかった因縁というものがある。
学生時代、ある宗教に入っていた。他の宗教のことはまったく知らなかった。
そこで、初めて神というものがどういう存在で、何故信じなければならないか、ということを教えられた。
その神は、それまで他の宗教で信じられていた神とは違い、それが真の神なのであり、その神を信じなければ、私も人類も救われないのだと言う。
それを通じて“神力”が発動するという、ペンダント状の器物をかけさせられ、それを落としたり、水で濡らしたりすると、効果が無くなり、自分も神から戒告を受けるのだと言う。
それが真の神の神力なのだろうか？、そんなことで恐ろしい戒告を受けてしまうのだろうか？
だけど、信じなければならない！...周りの人は信じている。そして救われているのだろう...
疑うことは、救いから外れることでタブーなのだ。
でも、いくら信じようとしても、信じなければならないと思おうとしても、心の底から頷けられるものは感じなかった。
信じようとすることは苦痛でしかなかった。
本当の神様とはそういうものなのか？...それを信じるくらいなら救われなくてもいいのではないか？...最後の審判で裁かれて、地獄へ落とされてもいいのではないか？...そんな神様ならば！
いや、ひょっとして僕は既に地獄に落ちているのではないか？！
信念だとか観念で覆われていて、光が差し込まない世界！
ああ、速くここから出たい！
“本当の“真の神様！...あの人たちが信じている神様じゃない！、人がそう言っている神様じゃない！...どうかこの苦境から出して下さい！、そして、僕に直接語りかけて下さい！
そうでなければ、どうしても、こうしても僕は生きる意味を見い出すことは出来ないのです！
超えてはならないタブーなどどこにあるだろうか？
信じなければならない？...信じられなければ信じなければいい！...
疑いようのないものがきっとある！(それが本当の神か？）
この思いだけの世界を超えた世界がきっとある！
きっと！
そう信じている、信じようとはもう言うまい！
僕の知らないどこかで、僕は見ているんだ、見させられているんだ！
だから...きっと会える！
どうしても、こうしても会わずにおれないあの御方に！

これは一体どういう因縁、カルマなのだろうか？
宗教的因縁？
どうしても受けなければならない因縁だった。
それからはどうしても逃れることは出来なかった。
いや、それによって逃れることが出来たのか？、解放された？
どうしても、“信じなければならない“因縁から逃れられない者も居るだろう...
何が善い因縁で、何が悪い因縁だかは知らないが...
安らぎがあるかないかが違う。
そしてこの違いは、天と地ほども違うのだ！