宇野線は干拓の歴史を秘めた地を走っている。
車窓からは、そんな干拓地の風景を眺め見ることが出来る。
この辺りの標高250m以下の丘陵は、往時の海に浮かぶ島々の名残だ。
備前片岡、迫川、常山、八浜など、沿線の小さな駅で列車を降り、少し
駅から離れてみると、そこには広大な農地の広がりが見え、かつての島の
名残である丘陵を目にすることが出来る。
八浜の駅前で、「たこ焼・たい焼」と書かれた、赤いテントの目立つ小さ
なお店を見つけた。間口が数メートル、奥行きはその半分ほどの店である。
訪ねてみると入口近くで、白衣を着た店主が一人、たい焼きを焼いていた。
驚いたことにここは、何枚も同時に焼く大型の焼き器では無く、丁度鉄の
「やっとこ」を大きくした挟みのような一丁焼きの火箸で、一つ一つ丁寧に
手焼きする。
写真を撮らせてもらうと、店主は「何が珍しいんだか・・・、訪ねて来て
は写真を撮って行く人が多い。どうするんかねぇ・・・」などと、手を休め
ることもなく語ってくれた。
近頃はやりの“インスタ映え”と言うやつらしい。
焼き上がったたい焼きは薄皮で、ぎっしりと詰まった中の黒い餡が透けて
見えるほどだ。ここは小さな店ではあるが、創業60年を越える老舗である。
度々テレビや新聞などでも紹介される、地元では超有名店だ。
八浜を出た宇野線は、その先で児島半島を避けるように大きくカーブで南
に進路を変え、尾坂峠のトンネルを抜け、備前田井を通り、左前方に臨海部
の工業地帯が見えてくると終点の宇野に到着だ。
かつて広大なヤードを有した終着駅に昔日の面影は無く一面二線のホームに、
短編成の列車が出入りするばかりである。(続)
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