桜花に黒霞けむる列島か<本澤二郎の「日本の風景」(4747)

<鍬持ち一息ついて東山を茫然と眺める晴耕雨読の春爛漫>

 梅の花が散ると、横合いから椿の花が咲き出した。隣地の梅林で紫の玉蘭

が天に向かっている。庭の隅には水仙が春を待ち構えていて、女性のように清純さを競っていていい。ボケの花も素敵だ。我がパソコンを観察している菜の花は、以前から風雨を蹴散らして咲いたままだ。地上は何もかもが燃え滾っている。桜花の便りも聞こえてきた。春爛漫である。だが、我もかれも心はすっきりと晴れない。

 

 春霞というよりも黒霞がお似合いだ。50年前を思い出す。隣地の畑を耕すおじさんのことだ。毎日鍬をもって畑の雑草取りをしていた。目が合っても、彼は茫然自失の体である。何やら口ずさんでいる。1キロ先の山をながめているではないか。その繰り返しだった。茫然と東山を見る!

 先日、彼の親類の60歳になった夫人が教えてくれた。「フィリピンのレイテ戦から帰国したものの、精神の病にかかっていた」「中央大学に入ったあと学徒出陣して廃人にさせられた」という。マラリアに違いない。戦争の恐怖を今に伝えている。学校ではどうか?

 おじさんもヒロヒトの戦争に狩り出された被害学徒の一人だった。ヒロヒトの官僚としてA級戦犯になった岸信介の亡霊政権が、目下、戦後77年を経て再び43兆円かけて戦争準備を始めた。春霞がたなびく日本列島ではない。

 

 先にナカトミのエンジン耕運機のことを紹介した。エンジンがかからない。自動車レベルと勘違いしていた人間に問題があったのか。まだ2年足らずだ。自動車ではこんなことはない。猫の額ほどの家庭菜園だ。大して使ってもいない。それでいて故障。購入したコメルは「うちでは修理不可能。長野県の本社に宅送して修理。時間もかかる。大金もとられる」に衝撃を受けてしまった。日本のものづくりの劣化を象徴する出来事である。

 

 やむなく鍬やスコップなどを取り出した。油断すると、腰を痛める。ヘルニアは石原慎太郎の専売特許と思い込んできた人間である。往年の馬力などない。

軽いマンガにしても疲れが速い。腰を上げてしばし山を見る。啄木のように「故郷の山はありがたきかな」と都合よく心が晴れることはない。レイテ戦のおじさんのように「茫然と山を見る」である。その先に江澤ブルーベリーランドがあるはずだ。

 おじさんは死屍累々のレイテ戦の仲間の戦死者のこと、命令したヒロヒト以下の侵略指導者のことで頭がいっぱいだったのだろう。

 

<司法試験合格の弁護士も失業する弁護士氾濫の21世紀>

 関西方面で夫婦円満そろって真面目な弁護士活動をしてきた珍しい御仁は、

中央大学OBである。「せっかく資格を取りながら仕事がなく廃業する弁護士が少なくない」「弁護士もピンからキリまでいる」という、最近まで知らなかった

哀れな実情を語ってくれた。

 というのも、レイテ戦から生きて帰国したものの、精神が壊れていた身内のおばさんは「夫の弟の子供が早稲田大学社会学科に入学し、司法試験を目指して頑張っている」と目を輝かせて話してくれた。しかし、現実はたとえ資格を取ってみても厳しい、厳しすぎるらしい。

 事務所を開設しようにも先立つカネがないと困難。既設の法律事務所で働く「イソ弁」から始める。いくつかの企業団体の顧問弁護士にならないと生活ができない。

 弁護士も金次第という。第一、能力は不明だ。新聞記者でも10年、大工も10年である。経験豊富な弁護士、真面目に働く弁護士を見つけるのは容易ではない。肩書に誤魔化されると詐欺に遭遇しかねない。

 筆者でさえも「医療事故のプロ」という宣伝文句に引っかかって30万円を無駄にした。いい加減すぎる弁護士がいくらでもいる。実力と真面目と正義を兼ね備えた人物を見つけないと、勝てる勝負にも敗れることになる。

 安直に依頼するととんでもないことになる。

 

<房総半島の木「岩つつじ」を豊平・福江夫妻からいただく>

 数日前から「春一番」が見事な花を咲かせて散歩する人たちの目をくぎ付けにしている。このあたりで20町歩近い水田と換金野菜で注目を集めている柴崎分家からいただいたものだ。

 不思議な縁で柴崎本家の豊平・福江夫妻が「岩つつじ」を持ち込んでくれた。我が家では、この木を東芝病院で不運な最期を迎えた次男正文の木と称して

大事にしてきた。彼が早稲田の学生のころ、珍しく養老渓谷近くの旧家の背景で写した写真に、この木が紫色に輝いていた。拙著「医師失格」(長崎出版)にこの写真も載せたという経緯もある。

 樹木の育成に特別の才能を発揮する柴崎本家の豊平さんが、この木を種から育てていた。既に2本ほどいただいて植えていたのだが、また5本も追加してくれた。

 

 昨日は「上(かみ)」との屋号もある本家の墓の掃除を手伝わさせてもらったのだが、そばの大きな塚にもこの岩つつじが沢山植えてあった。さすがは本家の墓地は立派である。福江さんの実兄・故良平さんが建立したものだ。周囲の墓碑銘に目をやると、信女が多く目に付く。概して日本では女性の地位・生活ぶりの困難さを象徴している墓標か。女性の自立はやはり遅れている日本である。

 

 フランスの著名な経済学者は「生産性の高い持続可能な経済を作るために財源を確保して、医療や教育へ大規模な投資をしていかなければならない。社会の一体感を維持するには、最も裕福な層が税を負担することが不可欠なのだ。その際、税の負担は所得や資産など、客観的でわかりやすい指標にもとづいて決めなければならない」と。しかりだ。

 黒霞から本来の春霞たなびく日本列島にする責任が、今を生きる世代に課せられている。

2023年3月17日記(政治評論家・日本記者クラブ会員)

 

 最近届いたメールの数々(参考資料)

 

マイナンバーカードのウソ

https://twitter.com/ranranran_news/status/1633572986187034624?s=20

マイナンバーカードの恐怖

https://twitter.com/ranranran_news/status/1624674256067133441?s=20

マイナンバーカードのウソ=電子政府の嘘

https://twitter.com/ranranran_news/status/1633572986187034624?s=20



保険証廃止しマイナ一本化、閣議決定 | 共同通信

https://nordot.app/1005620683941707776





 

 

 

マイナンバーカードの契約書

https://twitter.com/rose_lenten/status/1632634863810646016?s=53&t=FJEcVkVHbrHqGva9ODvW-w