前回のエディ・ハリスに続き、今日はエディ・ヒギンズです。名前はよく似ていますがこちらは白人のピアニストです。ヒギンズと言えば日本のジャズファンにとっては、90年代以降ヴィーナス・レコードに残した大量の作品群で知られているのではないでしょうか?日本のレコード会社が企画したそれらの作品は、スタンダード曲をピアノで弾くという一般受けするスタイルでかなりヒットしたようです。ただ、何せ私は自分の生まれる以前の古いジャズにしか興味がないという偏屈者ですので、それらのCDは1枚も手に取ったことはありません。きっと悪い演奏じゃないんでしょうけどね・・・
そんなヒギンズですがキャリアは意外と古く、50年代後半からシカゴで演奏活動を行っていたようです。シカゴのレコード会社であるヴィージェイ・レーベルにはいくつか録音を残しており、リー・モーガン「エクスプービデント」やウェイン・ショーター「ウェイニング・モーメンツ」にも参加しています。アトランティックに残した本作は1965年の録音で、リチャード・エヴァンス(ベース)、マーシャル・トンプソン(ドラム)をバックに従えたトリオ作品です。
アルバムは全8曲でスタンダードとメンバーのオリジナルを交えたバラエティ豊かな内容。タンゴのリズムを取り入れたエキゾチックな“Tango Africaine”、美しいイントロからスインギーなピアノソロへと続く“Love Letters”、愛らしいメロディの“Shelley's World”、ラヴェルのボレロを意識したであろう“Soulero”、思わず♪卵からプロテア~と歌いたくなるフォスターの名曲カバー“Beautiful Dreamer”などいずれも佳曲揃いです。ヒギンズの演奏は白人ピアニストらしい美しいメロディセンスとシカゴジャズのファンキーさを併せ持ったスタイルで、“Soulero”でもラストの“Makin' Whoopee”でもゆったりしたイントロから中間部では一転してファンタスティックな早弾きを聴かせてくれます。ラテン美女(?)のジャケットも印象的な隠れ名盤ですね。