ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

ジョルジュ・アルヴァニタス/ソウル・ジャズ

2012-09-22 11:28:52 | ジャズ(ヨーロッパ)

今日はちょっと路線を変えてヨーロッパ・ジャズの名盤を紹介したいと思います。ジャズ好きの人なら皆さん澤野工房というレーベルをご存じだと思います。大阪の小さなレコード会社ですが、ヨーロッパの知られざるジャズメン達の録音を発掘し、続々とCD化してきました。タワーレコードなど大きなCDショップに行けば専門のコーナーがありますね。基本は今活躍しているジャズメン達の録音が中心ですが、何枚かは50~60年代の復刻版があり、本日紹介するジョルジュ・アルヴァニタス「ソウル・ジャズ」はそのうちの1枚です。録音は1960年、オリジナルの発売元はフランスコロンビアだそうです。



本作のメンバーは全てフランス人。リーダーのジョルジュ・アルヴァニタス(ピアノ)、ベルナール・ヴィテ(ビューグル)、フランソワ・ジャノー(テナー)、ミシェル・ゴドリー(ベース)、ダニエル・ユメール(ドラム)から成るクインテットです。ビューグルという楽器は聴き馴染みがありませんが、ラッパの一種ですね。おフランスのジャズということでさぞかし上品でエスプリの利いた演奏、と思ってしまう方もいるでしょうが、CDのプレイボタンを押した瞬間に聴こえてくるのはバリバリのファンキーチューン“This Here”。本家キャノンボール・アダレイ・クインテットに勝るとも劣らないホットな演奏に意表を突かれること間違いなしです。その後に続くのもセロニアス・モンク、バド・パウエル、ソニー・ロリンズ、マックス・ローチ、オスカー・ペティフォードなどビバップの名曲のカバーばかり。演奏もそれらバップ曲のフランス風解釈などではなく、全てど真ん中直球勝負。つまり、これは当時のフランスのジャズメン達の本場アメリカの黒人ジャズへの熱い想いが凝縮された1枚なのです。

オリジナルは1曲もなく全てカバーですが、当時のフランスの俊英達が集まっただけあり、演奏の質は文句なし。どの曲もアルヴァニタスの華麗なピアノソロが存分に堪能できますが(特にハードドライビングな“Oblivion”は最高!)、共演陣も素晴らしく、特にテナーのジャノーは“Sonnymoon For Two”でロリンズばりの骨太なブロウを、“Monk's Mood”では哀愁感たっぷりのプレイを聴かせてくれます。ユメールがマックス・ローチを彷彿とさせるドラミングを披露する“Mister X”もいいですね。締めくくりはメンバー全員が軽快なソロを取る“Bouncin' With Bud”。単なる本場の物マネに終わらず、確かな演奏技術と質の高いアドリブに裏打ちされた真のハードバップ名盤となっております。

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