ヴォーカルシリーズ第4弾ですが、本日はビヴァリー・ケニーを紹介したいと思います。ルーストとデッカに合計6枚のアルバムを残し、28歳の若さで夭折(死因は自殺と言われています)した薄幸の美人シンガーです。本作は1956年、ルーストに残したデビュー第3作です。白人の女性ボーカルと言えば、アニタ・オデイ、クリス・コナー、ヘレン・メリル、ジューン・クリスティあたりが代表格になろうかと思われますが、彼女らに共通するのは皆ハスキーボイスということですね。やはりポップスと違ってジャズボーカルは多少声がしゃがれている方が大人の雰囲気が出るからでしょうか?ただ、このビヴァリー・ケニーはどちらかと言うとキュートボイス系。声量もそれほどあるとは思えませんし、歌い方も軽くフェイクさせる程度なのでポップシンガーに近いかもしれません。
では、なぜ私がこのCDを購入したかと言うと、ずばり伴奏メンバーが凄いんですね。タイトルにあるベイシーアイツ(Basie-ites)は造語で和訳すると「ベイシー楽団員」、つまり黄金のカウント・ベイシー楽団から選りすぐりのメンバーがサポートしているのです。御大ベイシーはさすがに参加せず、ピアノは歌伴の名手ジミー・ジョーンズが務めていますが、後はジョー・ニューマン(トランペット)、フランク・ウェス(テナー)、フレディ・グリーン(ギター)、エディ・ジョーンズ(ベース)、ジョー・ジョーンズ(ドラム)とオールスターメンバーが素晴らしい演奏を聴かせてくれます。
全12曲、どれも2分~3分の短い曲ばかりですが、随所にジョー・ニューマンのブリリアントなトランペットとフランク・ウェスの雄大なテナーが挟まれており、聴き応え十分の仕上がり。ひたすらリズムを刻むフレディ・グリーンのギターも相変わらずですね。肝心の主役であるビヴァリー・ケニーのボーカルなんですが、最初はやや線が細いかな?と思いましたが、繰り返し聴くうちに透明感のある歌声がベイシーアイツの演奏とうまく溶け合って心地よく感じられるようになりました。特に幻想的なムードの“I Never Has Seen Snow”、ラストのバラード“Can't Get Out Of This Mood”のアンニュイな感じが魅力ですね。後はニューマンとウェスの素晴らしいソロが聴ける“Nobody Else But Me”“A Fine Romance”“Isn't This A Lovely Day”“My Kind Of Love”がお薦めです!