ユナイテッド・アーティスツと言うレーベルがあります。もともとは同名の映画会社が設立したレコード会社で、ブルーノートやプレスティッジ、リヴァーサイドのようなジャズ専門レーベルではないので、専属のアーティストはおらず、カタログも充実しているとは言えません。ただ、大手映画会社なので金払いは良かったのか、ちょいちょい豪華メンバーの作品が紛れ込んだりしています。今日ご紹介するミルト・ジャクソンの「バグス・オパス」もそうですね。1958年12月29日録音の本作、共演者がアート・ファーマー(トランペット)、ベニー・ゴルソン(テナー)、トミー・フラナガン(ピアノ)、ポール・チェンバース(ベース)、コニー・ケイ(ドラム)というオールスターメンバーです。注目すべきは翌年にジャズテットを結成することになるファーマーとゴルソンの参加で、特にゴルソンは自作の2曲を提供するなど存在感を発揮しています。ドラムのコニー・ケイはご承知のとおりミルトとはMJQの同僚ですし、あえて言うならジョン・ルイスのいないMJQに未来のジャズテットが加わり、そこにフラナガン+チェンバースのデトロイトコンビが参加した感じでしょうか?一体どんな感じやねん!とツッコまれそうですが、こういう他のレーベルでは見られない珍しい組み合わせがユナイテッド・アーティスツの特長とも言えます。
全6曲。アルバムはまずスタンダードの"Ill Wind"で始まります。この曲はファーマーもゴルソンも参加せず、ミルトがムードたっぷりのバラード演奏を聴かせてくれます。2曲目”Blues For Diahann"はミルト自作のブルース。Diahannとは黒人歌手のダイアン・キャロル(Diahann Carroll)のことでしょうか?いかにもミルトらしいファンキーな曲でゴルソン、ファーマー、フラナガン、チェンバースが順にソロを取った後、満を持してミルトが縦横無尽のマレット捌きを見せつけます。3曲目”Afternoon In Paris"はミルトのMJQの盟友であるジョン・ルイス作の名曲。題名通りパリの情景を思わせる優美なメロディーでこういう曲だと同じミルトのヴァイブも上品に聞こえます。4曲目"I Remember Clifford"は亡きクリフォード・ブラウンに捧げたゴルソンの代表的名曲。ただし、ゴルソンもファーマーもソロは取らず、全編に渡ってミルトの独壇場です。5曲目”Thinking Of You"ではミルトは逆に脇役に回り、アート・ファーマーが情熱的なバラードプレイを聴かせてくれます。6曲目”Whisper Not”もゴルソンの代表曲で、ミルト→ファーマーのカップミュート→ゴルソン→フラナガンとソロをリレーして作品を締めくくります。
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