肝心のラリーンのボーカルですが、これはもう素晴らしいとしか言いようがないですね。サラ・ヴォーンを少し低くしたようなふくよかな歌声で、声域の広さといいアドリブの巧みさといい文句なしです。こんなに上手いシンガーでも結局メジャーになれなかったという所にアメリカのジャズの奥深さを感じずにはおれません。全部で11曲ありますが、全般的にミディアムからスローな曲が中心。スインギーな“My Kinda Love”、オールドファッションなベイシーナンバー“Blue & Sentimental”もお薦めですが、何と言っても抜群なのは感情豊かに歌い上げるバラード。“Crazy He Calls Me”“Then I'll Be Tired Of You”“Fool That I Am”“We'll Be Together Again”といずれ劣らぬ名唱揃いです。あえてケチをつけるとすれば録音状態がやや悪いぐらいですが、それを差し引いてもヴォーカルファンを満足させること間違いなしの隠れ名盤です。
肝心のラリーンのボーカルですが、これはもう素晴らしいとしか言いようがないですね。サラ・ヴォーンを少し低くしたようなふくよかな歌声で、声域の広さといいアドリブの巧みさといい文句なしです。こんなに上手いシンガーでも結局メジャーになれなかったという所にアメリカのジャズの奥深さを感じずにはおれません。全部で11曲ありますが、全般的にミディアムからスローな曲が中心。スインギーな“My Kinda Love”、オールドファッションなベイシーナンバー“Blue & Sentimental”もお薦めですが、何と言っても抜群なのは感情豊かに歌い上げるバラード。“Crazy He Calls Me”“Then I'll Be Tired Of You”“Fool That I Am”“We'll Be Together Again”といずれ劣らぬ名唱揃いです。あえてケチをつけるとすれば録音状態がやや悪いぐらいですが、それを差し引いてもヴォーカルファンを満足させること間違いなしの隠れ名盤です。
曲は全12曲。タイトル曲の“Comin' Home Baby”とラストの“Right Now”はハービー・マンのヒット・チューンで女声コーラスも入ったポップス風の作り。残りは西海岸の名トランペッター、ショーティ・ロジャース率いる10人編成の小型ビッグバンドがバックを務めており、私は後者の方が断然好きですね。曲はハードバップ好きなら誰もが知っている名曲ばかりで、ボビー・ティモンズ作曲の“Dat Dere”“Moanin'”、ランディ・ウェストン“Hi-Fly”、マイルスの演奏で有名な“Walkin'”、ベニー・ゴルソン“Whisper Not”などのファンキーチューンをトーメがいつものベルベット・ボイスで歌い上げます。黒人ジャズメンの曲が多いせいか、白人のトーメのボーカルも心なしか黒っぽく聞こえるのが不思議です。
1961年録音の本作はギター入りカルテットをバックに従えたライブ録音。メンバーはピアノのピム・ヤコブス、その弟でベースのルート・ヤコブス、ギターのウィム・オーヴァーハウという地元オランダの3人に、ヨーロッパに移住していたドラムのケニー・クラークが加わっています。バップ・ドラムの開祖であるクラークの参加が目を引きますが、ピアノのピム・ヤコブスもヨーロッパのジャズシーンでは相当有名な存在らしいので演奏の質は保証できます。何より彼とリタは前年に結婚したばかりの新婚ホヤホヤですから、当然呼吸もピッタリです。
曲目はお馴染みのスタンダードが中心。バラードからアップテンポまでバラエティ豊かですが、お薦めはミディアムテンポのスインギーなナンバーで、特に“I'm Gonna Sit Right Down And Write Myself A Letter”“Poor Butterfly”“Tangerine”などが秀逸。随所に挟まれるピムのピアノソロもいいですね。他はアップテンポの“Cherokee”“I've Got You Under My Skin”も捨てがたい。この2曲ではオーヴァーハウのギターソロがキラリと光ります。ライスの歌声はやや鼻にかかった独特の声質で、迫力こそないものの高音の伸びが素晴らしい。歌い方はアドリブで軽くフェイクさせる程度ですが、バックのコンボの軽妙な演奏とうまくマッチしていて、とてもお洒落なヴォーカル・アルバムに仕上がっております。いかにも60年代風のカラフルなデザインのジャケットも素晴らしいですね。
前回のエディ・ハリスに続き、今日はエディ・ヒギンズです。名前はよく似ていますがこちらは白人のピアニストです。ヒギンズと言えば日本のジャズファンにとっては、90年代以降ヴィーナス・レコードに残した大量の作品群で知られているのではないでしょうか?日本のレコード会社が企画したそれらの作品は、スタンダード曲をピアノで弾くという一般受けするスタイルでかなりヒットしたようです。ただ、何せ私は自分の生まれる以前の古いジャズにしか興味がないという偏屈者ですので、それらのCDは1枚も手に取ったことはありません。きっと悪い演奏じゃないんでしょうけどね・・・
そんなヒギンズですがキャリアは意外と古く、50年代後半からシカゴで演奏活動を行っていたようです。シカゴのレコード会社であるヴィージェイ・レーベルにはいくつか録音を残しており、リー・モーガン「エクスプービデント」やウェイン・ショーター「ウェイニング・モーメンツ」にも参加しています。アトランティックに残した本作は1965年の録音で、リチャード・エヴァンス(ベース)、マーシャル・トンプソン(ドラム)をバックに従えたトリオ作品です。
アルバムは全8曲でスタンダードとメンバーのオリジナルを交えたバラエティ豊かな内容。タンゴのリズムを取り入れたエキゾチックな“Tango Africaine”、美しいイントロからスインギーなピアノソロへと続く“Love Letters”、愛らしいメロディの“Shelley's World”、ラヴェルのボレロを意識したであろう“Soulero”、思わず♪卵からプロテア~と歌いたくなるフォスターの名曲カバー“Beautiful Dreamer”などいずれも佳曲揃いです。ヒギンズの演奏は白人ピアニストらしい美しいメロディセンスとシカゴジャズのファンキーさを併せ持ったスタイルで、“Soulero”でもラストの“Makin' Whoopee”でもゆったりしたイントロから中間部では一転してファンタスティックな早弾きを聴かせてくれます。ラテン美女(?)のジャケットも印象的な隠れ名盤ですね。
最近ずっとアトランティックの名盤シリーズを集めているのですが、このレーベルには正統派ジャズとは一線を画したR&Bやソウル・ジャズ系の作品がたくさんあります。以前にも紹介したデイヴィッド・ニューマン、ハンク・クロフォード、そして今日取り上げるエディ・ハリスなんかがそうですね。エディ・ハリスと言っても正直あまりピンと来ない人が多いと思いますが、電気サックスを駆使し60年代後半から70年代にかけてジャズ・ファンク的な作品で一世を風靡した人らしいです。と言われても普通のモダンジャズ好きはまず食指が動きませんよね。私もレス・マッキャンとの共作「スイス・ムーブメント」で彼のプレイを聴きましたが、正直ファンク過剰できちんと評価する気にはなれませんでした。
ただ、1965年に録音された「ジ・イン・サウンド」はファンク路線に転向する以前の意外と正統派なハリスのプレイを聴くことができます。そもそもこの段階では電気でない普通のテナーサックスを吹いてますし、演奏フォーマットもワンホーンカルテットが3曲、トランペットを加えたクインテットが3曲と実にオーソドックス。収録曲も6曲中4曲が有名なスタンダードです。“The Shadow Of Your Smile”“Born To Be Blue”での哀愁漂うバラード演奏、トランペットを加えたドライブ感満点の“Love For Sale”、ボサノバ調の“'S Wonderful”と、どの曲でもメロディアスなハリスのテナープレイが堪能できます。後にマイルス・デイヴィスがカバーした“Freedom Jazz Dance”だけはやや前衛的な演奏ですが、全般的に見て普通と言えば普通すぎるくらいのジャズです。メンバーはリズムセクションがシダー・ウォルトン(ピアノ)、ロン・カーター(ベース)、ビリー・ヒギンズ(ドラム)。どれも当時のジャズシーンを代表する一流所ばかりです。6曲中3曲に参加するレイ・コドリントン(トランペット)だけは謎めいた存在ですが、リヴァーサイドにリーダー作を残した幻のグループ、JFKクインテットの一員と言えばよほどマニアな人ならわかってくれるかも?