
肝心のラリーンのボーカルですが、これはもう素晴らしいとしか言いようがないですね。サラ・ヴォーンを少し低くしたようなふくよかな歌声で、声域の広さといいアドリブの巧みさといい文句なしです。こんなに上手いシンガーでも結局メジャーになれなかったという所にアメリカのジャズの奥深さを感じずにはおれません。全部で11曲ありますが、全般的にミディアムからスローな曲が中心。スインギーな“My Kinda Love”、オールドファッションなベイシーナンバー“Blue & Sentimental”もお薦めですが、何と言っても抜群なのは感情豊かに歌い上げるバラード。“Crazy He Calls Me”“Then I'll Be Tired Of You”“Fool That I Am”“We'll Be Together Again”といずれ劣らぬ名唱揃いです。あえてケチをつけるとすれば録音状態がやや悪いぐらいですが、それを差し引いてもヴォーカルファンを満足させること間違いなしの隠れ名盤です。