広く浅く

秋田市を中心に青森県津軽・動植物・旅行記などをご紹介します。

菱餅/ひなっこもち

2014-03-03 23:38:43 | 秋田の季節・風景
今日3月3日はひなまつり。
秋田など東北地方では、春が遅い(3月3日は雪が多く残っている)ためか、月遅れの4月3日もしくは旧暦の3月3日に行う(行っていた)地域もあるものの、それらの地域でも現代では3月3日が主流だろう。

こういう日本の年中行事が、21世紀になっても受け継がれていることは素晴らしいこと。
しかし、マスコミや流通業界によって、地域ごとの伝統的なしきたりが薄れて全国どこでも画一化されたものになりつつある一方、しぶとく地域限定で残る風習もある。
節分を例に取れば、前者が東日本における恵方巻き(元々は西日本の風習)で、後者は秋田などの落花生で豆まきをすること。
秋田では、お盆にモナカの皮状のものを吊るすことや月見団子よりも月見まんじゅうが一般的なことも後者だろう。


さて、ひなまつりの食べ物といえば、何があるでしょう。
ひなあられ(東日本と西日本で別物)、白酒(飲み物か)、ちらし寿司、ハマグリのお吸い物なんかが有名だろうか。
ほかには京都では生菓子(ねりきり、引千切などあんこを使ったもの)が食べられたり、それが北前船で伝わった山形県庄内地方でも、生菓子や落雁の「雛菓子」があるそうだ。

もっとも有名なひなまつりの食べ物といえば、「ひし餅(菱餅)」ではないでしょうか。
餅好きな僕は、子どもの頃、ひし餅を食べたいとよく思っていた。淡い色が付いた餅の塊が、妙においしそうに思えたのだ。
だけど、ひなあられは毎年のように食べていたけれど、ひし餅を食べたことはおそらくないはず。

調べてみると、ひし餅は「ひな壇に供える」のを主眼とした食べ物で、「ひなまつりに食べる」ことはあまり考慮していないような雰囲気もありそうに感じた。そういえば、雛人形の段飾りには、作り物のひし餅がセットされたものもあり、実物はなくてもいい場合が多いかもしれない。
ひなまつりを代表する食品であり、多くの人が知りながら、実際にはあまり食べられないのが、ひし餅ではないだろうか。


ひなまつり前、全国のいくつかのスーパーのネットチラシで、ひなまつり関連商品を見た。
どこの店も、ちらし寿司やその材料、オードブル、さらにはケーキなどのパーティーメニュー的なものを中心に展開していた。
和風のお菓子としては、桜餅(道明寺を含む)や草餅を掲載する店が多かった。ひし餅を掲載する店はかなり少なく、ねりきりやゼリーをひし餅形にしたものが少々あった。
※桜餅を桃の節句に食べるのって、季節が合っていないようにも感じるが、雛菓子の1つではあるそうだ。

秋田市内のいくつかのスーパーを実際に回ってみると、お盆や正月よりは小さいものの、専用コーナーを設けて、ひし餅を売っている店があった。と思ったら、ひし餅ではなかった!
落雁のような干菓子をひし餅の形にしたものだった。たけや製パンの製品で「ひし菓子」という値札が出ていた。→詳細は続編にて
一般的にひし餅は上からピンク・白・緑が重なっている(もっと色数が多い場合もあるそうだ)。たけやのひし菓子もそうだが、もう1種類があり、それは大きいひし菓子1組の上に、少し小さいのがもう1組載っているのもの。鏡餅に色を付けてひし形にしたような感じ。

正月の鏡餅では、現在は餅の形の透明ケースの中に入って密閉されたものが主流。これにより、長期保存と飾った時の違和感の少なさを両立できている。
ひし餅でも、同じ方法ができそうだが、大手鏡餅メーカーである「越後製菓」では、袋に2つ入れて真空パックにしたものしか作っていないようだ。「佐藤食品工業(サトウの切り餅)」では、ひし餅自体がない模様。
やはりひし餅の需要って少ないのだろうか。


確認した秋田のスーパーの中で唯一、ホンモノの(餅の)ひし餅を扱っていたのが、マックスバリュ東北。
3月1日に岩手県の「マックスバリュ北東北」を吸収して、5県で展開することとなり、その合併第一号のチラシに掲載されていたので、買ってきた。
これこそひし餅!
製造元は、なんとあの青森の「工藤パン」。「ひし餅(小)」という名称だから、「大」もあるのか?
たけやで作っていないのに、工藤パンではあったとは!

マックスバリュ東北各店舗のチラシを見てみると、岩手県を除く店舗(青森、秋田、山形、新潟)で掲載されていた。(岩手では代替商品もなし)
工藤パンの和菓子が青森県外で売られること自体珍しいと思うが、はるばる新潟でも売られたらしい。

また、イトーヨーカドー弘前店では、岩手の白石食品工業(シライシパン)のひし餅を売っていた。したがって、青森と岩手では地元大手メーカーによる餅のひし餅が流通していることになる。


工藤パンのひし餅は、一辺7センチ。厚さ2.5センチ弱。脱酸素剤入りの袋に入っていて、3月13日が賞味期限。
ふにゃふにゃと柔らかく、原材料は「砂糖、上新粉(アメリカ産・国産)、…」と上新粉が使われていることからしても、正確には「餅」でなく「すあま」か。秋田でいうところの「鶴の子餅」。ヨモギは使われていない。

念願のひし餅だけど、まだ食べていないので、食べたら追記するつもりです続編にて


年中行事を欠かさない、アニメ「サザエさん」。
昨日2日放送の3話目・作品ナンバー7061「ひな人形がそろうまで」(脚本:谷本和弘)に、ひし餅が出ていた。
作中で描かれるひし餅(タイトル画面と磯野家の雛壇に置かれたもの)は、3色のもので、上の餅ほど小さいピラミッド状。たしかにこういう形のひし餅も存在するようだが、珍しいかも。
最後から2つ目のエピソード(原作からの転用か)は、カツオくんが、こっそりひし餅を食べようとしたら、舟さんとサザエさんの足音が聞こえたので、あわてて口に放り込んだところ、カツオくんのほっぺがひし餅の形になってしまい、バレてしまったというもの。
戸棚の中に残っていたピンク色のひし餅を、カツオくんは台所のガスコンロに網を載せて焼いていた。
ということは、すあまタイプではなく、正月の切り餅のような普通の餅だと考えられるが、それだと味がついていないかもしれない。(砂糖が入った餅の可能性もある)
まあ、僕のような餅好きなら、何も付けなくても食べられますが…

結局、「ほんとうのひし餅」ってどういうものなんだろう。よく分からなくなってしまった。

※翌年の工藤パンの製品はこの記事後半
※工藤パンのひし餅は、この数年後、リニューアルされた


今日の秋田放送テレビの夕方のニュースを見るまで知らなかったが、秋田県内陸南部の角館(仙北市)には、独特の雛菓子があるそうだ。
ひなっこもち(テレビの表記ママ)」といい、大福の少し大きいくらいの白い餅の表面に、着色した餅生地を貼り付けてお雛様やお花、アニメキャラクターなどを描いたもの。中にはあんこが入っていて、両端をカットした笹の葉に、2個ずつ載っている。

おそらく蒸していると思われ、笹の葉に載っていることからしても、角館名物の「なると餅」や「えびす餅」と共通点があるように感じた。
テレビでは、角館町山谷地区の84歳のおばあさんを中心に一家で作る様子を紹介していた。今は、角館の中心部に持って行って売っているが、昔はどこの家でも作っていて、子どもたちが家々を回ってもらう風習があったという。
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