帝石秋田鉱業所裏の掲示の中に、「八橋油田地域図」があった。
八橋油田地域図
ちょっと分かりにくいが、「八橋油田」は、北秋田、外旭川、高野(こうや)、八橋、雄物川、新屋、浜田の各地区に区分されるらしい。そのうち外旭川から新屋までの5地区で採掘が行われている(いた?)ということだろうか。
5つの地区名は、実際の地名とズレていたり、地名ではない名称が使われている。
地名でいうと、北から下新城、飯島、外旭川、寺内、八橋、川尻、勝平、新屋といった辺り。秋田市中心部の西側をほぼ南北に貫いていることになる。
八橋以北には、今もポンピングユニットがあって、油田地帯であることをイメージしやすいが、それより南でも石油が取れるイメージはなかった。
でも、そういえば、昔(昭和末期)、秋田運河(地図では旧雄物川)に架かる新川橋~臨海バイパス「若葉町」交差点(地図の雄物川地区と新屋地区の境目)付近から、運河沿いで稼働するポンピングユニットが何台か見えたのを思い出した。今もあるかは分からない。
勝平や新屋の中心部(湧き水のある場所と重なる)にも石油があるのか。掘ったところで採算は取れないのだろうけど。
さらに、地図には、八橋油田より東側に「旭川油田」と「新秋田油田」が示されている。こんなところにも油田があったとは知らなかった。
線路との位置関係から判断するに、「旭川油田」は旭川流域の旭川地区。秋田温泉の南側から手形山のふもと(秋田高校付近)ってところか。
Wikipediaの八橋油田の項によれば、旭川油田は明治末に採掘が始まり、昭和初期にピークを迎え、1978年でもわずかに採れていたようだ。
「新秋田油田」は、なんと秋田駅のすぐ西。旭川沿い=川反かもしれないが、あの付近の旭川は江戸時代に流路が変えられた人口河川だったはず。そこから南下して、楢山、太平川(と地図にはないが猿田川)を越えて牛島をかすめて卸町、茨島まで。
なお、「新八橋油田」という名称を聞いたことがあったが、それは外旭川にあるらしいので、地図では八橋油田・外旭川地区に含まれているのだろうか。
秋田市というところは、掘ればどこでも石油が出てくるといっても過言ではない土地、といってはやっぱり過言でしょうか。
さて、
外旭川の秋田市卸売市場
イオンタウンがショッピングセンター建設を計画しているのは、この北側(上の写真奥)。
卸売市場の正面は、敷地の西側。道路を渡ると、店舗や住宅地が連なる。
その中の中古自動車屋さんの敷地の片隅に、石碑があった。
「日本一 大油田発祥の地」
裏面には由緒や設置した日付などが掘られていたが、ちょっと入りづらい場所だったのと、撮影時に急いでいたので見ないでしまった。
「貸地(帝石に土地を貸してる人たちってこと?)」関係の連合会・同盟会の創立50周年で立てたものらしく、わりと新しそう。
推測だけど、八橋油田で最初に石油が採れたのは、八橋地区とか草生津川(くそうづがわ=石油にちなむ名)流域などでなく、外旭川のここだというのが意外だった。卸売市場ができたり住宅地になったのはここ30年ほどのことだから、昔は「外旭川村」の外れの田んぼの中だったのだろう。
なお、現在も、近くの住宅地でポンピングユニットが稼働している。(記事末尾参照)
【2014年12月13日追記】
2014年12月7日付秋田魁新報の同社創刊140周年企画「秋田再探訪」の「21油田王国」より。
・ポンピングユニットと呼ばれる採油機械
→「サッカーロッドポンプ」よりはポンピングユニットのほうが装置の呼び名としては普通のようだ
・明治時代の初め、秋田市八橋戌川原(現在のJAビル付近)で地面の油を目にした油商人・千蒲善五郎が、その活用を思い立ち、本県の油田史は幕を開けた。
→石碑の発祥の地とは異なる場所
・秋田市外旭川から浜田まで南北13キロ、幅600メートルと細長い八橋油田は、国内でも珍しい平野部の油田だ。
→上の看板の地図の「秋田北地区」は新城川付近なので外旭川よりも北。そこは「黒川油田」?
・昭和初期に本格的に開発され、1960年前後をピークに、これまで約575万キロリットルを生産した日本一の油田
・1960年1月11日、八橋油田は最多日産量1075キロリットルを記録(それ以後、原油、天然ガスとも減り始める)。(その当時は、)帝石の従業員4千人のうち、八橋だけで千人もいた
(以上追記)
最後に、ネットを見ると、石油を掘る光景を見たいと思われる旅行者の方がたまにいらっしゃる。(ポンピングユニットが動いているだけだけど、その気持ちはよく分かる)でも、アクセス方法が分からなくて困ることが多いようだ。
そこで、秋田駅西口から路線バスで訪れやすい場所を以下に記しておきます。※基地が廃止される場合などもあるかと思いますので、参考程度にお願いします。バス路線や運賃は初回アップ時の内容で、改定される可能性あり。
・帝石秋田鉱業所裏のポンピングユニット(ショッピングモール「パブリ」内の「ホームセンターサンデー秋田八橋店」の裏)
県庁・寺内経由土崎線 または 将軍野線(通町経由・県庁経由どちらも) 合わせて毎時3本程度運行
「帝石前」下車 300円(1つ手前の「面影橋」で降りれば250円)
・「日本一大油田発祥の地」碑と近くのポンピングユニット(サンフェスタ外旭川内のスーパー「グランマート外旭川店」の南西にある保育園の隣)
神田線 毎時2~3本運行
「卸売市場入口」下車 340円 または「旭野団地」下車 380円
間の「八柳三丁目」「外旭川病院前」バス停だとちょっと遠い。1日2便の土崎駅行きの神田線は「旭野団地」は通らないので注意。
※ネットでも閲覧できる国土地理院の地形図では、ポンピングユニットのある場所に、「油井・ガス井」を示す四角い地図記号が記載される。複数台がまとまっている箇所では、記号は1つのことも多い。この記事後半に例があります。
【2020年7月31日追記】秋田魁新報購読者向け月刊誌「秋田さきがけ コミュニティーマガジン 郷 vol.142(2020年8月号)」によれば、
・ポンピングユニットは現在(秋田)市内に25機あり、うち15機程度が稼働。
・1日約25キロリットルの原油を生産している。
・(総称としての)八橋油田の産油の約8割は、外旭川・寺内高野産。※誌面では、ブログ本文中の「高野」地区のことを「寺内高野」としている。
【2020年8月5日補足】1993年10月28日付秋田魁新報夕刊には「八橋油田のポンピングユニット/家に囲まれ夜間休止も/苦境に耐え現役は57基」という記事があった。30年弱でかなり減ったようだ。