今日は、いちにち風が速かった。
今日は、彼女の誕生日でもあり、
今日の風のように一生を早く駆け抜けた彼女と
よく似た一日だったな~と想った。
人は、天寿をまっとうした折に一度、
そして誰からも忘れられた時にもう一度、
つまりは二度死ぬのだと謂われるが……。
そういう意味で、彼女は生きている。
旅立ちの4月26日以来、
「早逝した女優」を弔うSNSや、
そこに寄せられるコメントに確信する。
バースデーイヴ、彼女不在で盃を傾けた。
本当に早すぎて、実感がわかないから
はるばる埼玉の、わりと大きな街まで出向き、
彼女の応援団長ともいえる人生の先輩とサシ飲み。
今回に限らず、こういう時には、
静やかに横たわる湖の畔を歩きながら、
湖自身のことじゃなく、風景を語りがちになる。
例えば、ついこないだ終幕した芝居の感想や
彼女が所属していた劇団のあれこれ、
外部出演で出会った面々とバーベキューに興じたとか
他愛もない、周辺の話に、あえて明け暮れる。
おもいのほか長く呑んだ。
呑んだけれど、まるで時間が足りない。
ほとりを何周もしたのに、肝心の湖のことを
余り語ら……語れずにお開きになったから。
献盃した街は、やはり四月にさよならした
演劇ライターが住んでいた所でもあったのだ。
街でいえば。
彼女が生まれ育った処の名物のひとつ
「栗きんとん」は、我々がよく知るお節料理の、
あまーいあれではなくて、
口内の水分を持っていくタイプの和菓子だ。
初めて食べた衝撃は、彼女が劇団研究所の面接に来、
初めて会った衝撃と重なるものだった。
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