図書館から借りていた 平岩弓枝著、「はやぶさ新八御用帳(八)春怨 根津権現」(講談社)を読み終えた。本書は、南町奉行所、内与力隼新八郎が活躍する長編時代小説「はやぶさ新八捕物帳シリーズ」の第8弾目の作品で、表題の「春怨 根津権現」の他、「聖天宮の殺人」「梅屋敷の女」「世間の噂」「牛天神の女」「秋風の門」「老武士」の連作短編7篇が収録されている。一話完結、小気味良い筋立ての短編のせいもあり、読みやすく、一気に読破出来る書だ。
読んでも読んでも、そのそばから忘れてしまう老脳。
読んだことの有る本を、うっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも、
その都度、備忘録として、ブログ・カテゴリー 「読書記」に 書き留め置くことにしている。
▢主な登場人物
隼新八郎(新八、内与力、根岸肥前守の懐刀)、郁江(新八郎の妻女)
根岸肥前守鎮衛(やすもり)(南町奉行、新八郎の上司)、
宮下覚右衛門(南町奉行所用心)、高木良右衛門(南町奉行所用人)、
お鯉(南町奉行所奥仕え女中、新八郎の心の恋人)
神谷鹿之助(勘定方、郁江の兄、新八郎の義兄、幼馴染)、
大久保源太(定廻り同心)、大竹金吾(同心)、勘兵衛(元岡っ引き、鬼勘)、
お初(勘兵衛の娘、小かん)、熊吉(下っ引き)、
▢あらすじ
「聖天宮の殺人」
平井の聖天宮の境内で中川舟番所の役人真田宇吉郎が死体で発見された。中川舟番所といえば、新八郎と義兄弟の約束をした落合清四郎の勤め先。駆けつけた新八郎、「驚いたよ、俺はてっきりおぬしが殺られたかとおもったよ」。宇吉郎殺ろしの真相、動機?、下手人?、謎だらけ。宇吉郎は、婿養子で、奥方良江と間に子供は無く、養子縁組が決まっているという。小かん(お初)が持ち込んだ情報から、謎が解け始める。おくめ?、唐木屋藤十郎?、下手人は?、まさかの・・。
「梅屋敷の女」
元岡っ引きの勘兵衛の家には、女敵討のために江戸に出てきたという岡本金之助が滞在していたが・・・。二度も溺れかかり、瓦版にも書き立てられ、小かん(お初)は不審に思う。「女房だけが悪いとは思わない」?。坊さんの修行?、郷里福知山から弟の金次郎が江戸に出てきて・・・。おとし?、山本総本舗?、・・・・、「恥を聞いて頂くことになりますが・・・」、金之助は真実を語り、金之助、新八郎、大久保源吾が、蒲田村で梅屋敷と呼ばれているおとしの実家にたどり着いた。が・・・、金次郎が・・・、おとしが・・・・、金之助は、僧体のまま、諸国行脚に旅立った。なんともつらい物語である。
「春怨 根津権現」(表題作)
新八郎は、小かん(お初)に促されて根津権現を訪れ、森川兵助なる若い侍と対面するが、その直後、根岸肥前守が、城内の御坊主山崎要俊から聞いてきた話として、旗本の森川家の婿養子で当主になっている弟・直三郎が、毒を盛られたのではないかと疑っているという話を新八郎にし、森川家の家族の内情探索を下知する。森川家は、先々代の森川兵右衛門が40歳で早世後、嫡男兵太郎が家督を継いだが44歳で早世、兵太郎には弟兵助がいたが、莫大な借金返済のため、兵助を若隠居させ、山崎要俊の弟直三郎を持参金付きで養子に迎え、兵太郎の娘久代(14歳)と縁組させたことが分かった。亡き兵太郎の妻女加江はまだ30歳で美人、先々代兵右衛門の妻女おまきは?、編笠の侍とは誰?
「世間の噂」
小石川橋戸町の米屋の「丸庄」に賊が侵入したが、お杉、お貞母娘が抵抗し、しかも賊を打ち殺してしまった。北町奉行・小田切土佐守直年からは、あっ晴れとされ、金十枚の褒美が出されたが、一方で、当日留守だった亭主吉之助は、瓦版で叩かれて、気の毒な立場になり・・・・。
根岸肥前守は、小首をかしげ考え込んだ。「なにか、お気になることでも。。。」、新八郎は、念のため、「丸庄」の家族の内情を探索するよう、下知される。勘兵衛(鬼勘)、下っ引きの熊吉も動き、、光明尼?、鶴吉?、孫市?、おかく?・・・、吉之助が、首吊り?・・・、自殺?!、他殺?、荒縄?、・・・・・、謎解き、推量・・・、小かん(お初)の情報で、芸者屋「千代鶴」に駆けつけた新八郎、真実が明らかになり・・・、まさか・・・、
「牛天神の女」
仙葉屋庄兵衛が、550両という法外な金額で吉原から身請けし妾としたおきよ(お染)は、庄兵衛が急死するやいなや直ぐ加納屋徳右衛門が妾になった。庄兵衛の女房お勝、倅一郎兵衛・おてる夫婦、孫庄太郎、庄太郎に嫁いでいる、加納屋徳右衛門の孫娘お雪、庄兵衛が死んで喜ぶのは誰?、庄兵衛の死因も不審?、根岸肥前守の下知で、仙葉屋の内情探索する新八郎、お雪が仙葉屋から離縁され・・・、全てが明らかに・・・、強精剤?、「あまりお年寄りの悪口をおっしゃるのはやめていただきます。うちの殿様(根岸肥前守)だってもうすぐ古希・・」、お鯉は新八郎の顔に大きな罰点を描いた。他に行き場所の無いと居直ったおきよは、加納屋からも暇をとり、品川宿で働いている・・と大久保源太が知らせてきた。
「秋風の門」
新八郎が、偶然、野犬に襲われ立ちすくむ若い男弘之進を助け、その母親と出会うところから物語が始まる。続いて、神谷鹿之助が、覆面をした狼藉者3人に追われていた水越五郎兵衛と名乗る老武士を庇い、新八郎が駆けつけ助勢、助けたが、藩名を隠し?、偽名?、根岸肥前守が、牛久藩が持参付き養子探しをしている情報を入手、新八郎は、事件との関わり、牛久藩の内情探索を下知されたが、10日前に助勢し打ち抜きで斬った狼藉者、真田文次郎が惨殺された。真田文次郎とは?、飯島東庵、植木屋安吉、お梅・・・。常州河内郡牛久藩(藩主山口周防守弘致)の嫡男は病死、次男(若殿)の行方は不明、養子を迎えようとする派、あくまでも血筋の次男(若君)を探し擁立しようとする派、お家騒動の物語だった。若君の行方を知っている唯一の人物は家老の水越伴右衛門、元凶は、藩財政の窮乏、「とが人は少なくせよというて下さるのか」・・、「馬鹿者ども、あの仁の爪の垢でも煎じて飲め」、「御老人は、この道がよしと思われるのですか」、人は老いて秋風の悲しさを知る。武士の悲しさは、麻布の秋景色の中にじわじわと溶けていくようである。
「老武士」
向島村の根岸肥前守鎮衛(やすもり)の叔母の隠居所で、1日、叔母の相手をつとめ、帰りが夕方になってしまった新八郎、途中、いきなり、紫頭巾をした7~8人の若者集団に取り囲まれてしまう。全員抜刀し、「通行料をおいてけ」と脅かすが、新八郎には、まるで子供に見える連中。油断は出来ず構えるが・・・、「おーい、何事か」、現れたのは、一人の老武士佐々木武右衛門。両国回向院裏で、旗本峰屋主殿(ともの)の嫡男小太郎と長女雪江が殺害される事件が発生。下手人の手がかりが全く無く、埒があかない内に、御賄陸尺の倅鉄之助が、欄干にくくりつけられる事件発生、4日後には、水死体で発見される。山形広之進?、小林玄三?・・・、新八郎、大久保源吾、岡っ引き吉蔵が、事件の謎解き、真相探索する中、佐々木武右衛門が、孫のお久美を人質にされ、若者集団に取り囲まれている場に遭遇、危機一髪、無事に救出。全てが明るみに・・・、かっての教え子から不心得者が出たことを恥じ入り、道場をたたみ、諸国流浪の旅に出るという老武士の物語。しみじみ・・・。
永代橋、一ツ目橋、竪川沿い、二ツ目橋、亀沢町、本所深川、御竹蔵・・・、物語に登場する地名を、古い江戸地図でたどりながら読み進めている。
(つづく)
他人を殺めれば、ばれなくても心の負荷は堪えられぬ想いも。
時代考証に頷けます。
今日の雨で、ゆっくりされましたか?
畑、草が大変ですね。
慈雨でしょうね。
雨読、ゆっくり休みました。
雨と日射、野菜には欠かせませんが、雑草にとっても精力剤?、1週間もすれば、元の木阿弥、蔓延ります。いたちごっこですね。
コメントいただき有難うございます。