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葉室麟著 「春雷」

2024年04月22日 11時34分00秒 | 読書記

図書館から借りていた、葉室麟著 「春雷(しゅんらい)」(祥伝社文庫)を、読み終えた。
本書は、著者創作の架空の小藩、九州豊後の「羽根藩(うねはん)」を題材にして描かれた長編時代小説「羽根藩シリーズ」第3弾の作品である。先日、すでに、第1弾「蜩ノ記」、第2弾「潮鳴り」を読んでいるが、さらに、第4弾「秋霜」、第5弾「草笛物語」が有り、引き続き読んでみたいと思っているところだ。


読んでも読んでも、そのそばから忘れてしまう老脳。
読んだことの有る本を、うっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも、
その都度、備忘録として、ブログ・カテゴリー「読書記」に、書き留め置くことにしている。


▢目次
(一)~(三十)
解説 「”鬼”の生きざまを通して”正義”を問う快作 作家 澤田瞳子

▢主な登場人物
多聞隼人(たもんはやと、鬼隼人)、吉村庄助、半平、
佐野七右衛門(さのしちえもん、人食い七右衛門)、
千々岩臥雲(ちぢいわがうん、大蛇(おろち))、
楓(かえで)、弥々、
太吉・おりう、善太、幸(こう
玄鬼坊(げんきぼう)、鉄五郎、
三浦兼清(みうらかねきよ、羽根藩藩主)、飯沢長左衛門(羽根藩元筆頭家老)、

塩谷勘右衛門(羽根藩筆頭家老)、石田弥五郎(羽根藩郡奉行)、飯沢清右衛門(羽根藩次席家老)、
白木立斎(しらきりっさい
播磨屋弥右衛門(博多の豪商)


▢あらすじ等
本書は、著者創造の架空の小藩豊後羽根藩を舞台にした長編時代小説「羽根藩シリーズ」の第3弾の作品ではあるが、第1弾、第2弾の作品とは、時代も登場人物も異なり、継続性は薄く、単独の小説として読める作品だと思われる。
本書の主人公は、浪人の身から、莫大な借金の返済が出来ていない羽根藩に召し抱えられ、藩の家老にまで出世した多聞隼人。
秘めた大願成就?を果たすために、藩政を壟断(ろうだん)する新参者隼人は、鬼隼人と呼ばれ、藩の旧態勢力にとっては邪魔者であり、これを陥れ、排除しようと、断行する黒菱沼干拓工事の妨害したり、刺客を放ったり、百姓一揆を煽ったり・・・、二重三重に謀略の糸が張りめぐらせる。
一方で、欅屋敷に住む佳人楓(かえで)と隼人との関係は?
白金屋太吉が女房おりうを隼人の屋敷に送り込んだ理由とは?
15年前、浪人隼人が、羽根藩に召し抱えられた出来事の真相は?
謎が絡まって、圧倒的なサスペンスが満喫出来る。
常識的な手段では、成し遂げることが出来ないことを成すために、鬼隼人、人食い七右衛門、大蛇臥雲の三悪人は、覚悟を決め、壮絶なクライマックスを迎える。
隼人が言う。
   「わたしは、悪人とはおのれで何ひとつなさず、何も作らず、ひとの悪しきを謗り、
   自らを正しいとする者のことだと思っている」

美辞麗句を並べながら、具体的な政策を示さない旧態勢力と、金も名誉も求めず、真意を理解されることも求めず、ひたすら己の信じる正義を貫こうとした隼人の生き様、
著者は、本書で、真の悪とは何かを問い掛けているのではないかとも思う。
   「世のひとのためにーーーーー、その思いで多聞様は生きられた方なのです」
   楓もまた目に涙を浮かべてうなずいた。そのとき、遠い雷鳴が聞こえた。
   おりうの目から涙があふれた。

   蒼穹を、春雷がふるわせている。
で終っている。

 


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