図書館から借りていた、諸田玲子著、「眩惑」(ラインブックス)を、読み終えた。1996年11月30日(平成8年)発刊された、諸田玲子氏の小説家デビューの作品である。本書には、ミステリータッチ、シニカルな時代小説、「面目なき仕儀なれど」、「運の尽き」の、短編2篇が収録されている。
「面目なき仕儀なれど」
目次・「一日目」「二日目」「三日目」「四日目」「五日目」「七日目」「八日目」「十一日目」「一ヶ月後」
主な登場人物・高隹(たかとり)新吾、服部松之助、おさえ、おとき、熊蔵、寛治、日燿和尚、
「誠に面目なき仕儀なれど、叔父上さまには、私事、包み隠さず申し置き候。・・・・」
「運の尽き」
目次・「縁日」「翌日」「翌々日」
主な登場人物・安二郎、お佐和、松太郎、お勝、荒川屋仁兵衛、佐太次
「お佐和の記憶の中では、月の輪郭同様、早くも曖昧になっていた。男の顔にいたっては、見事に記憶から欠落している。・・・、お佐和は下腹にそっと手を置いた」
つい数年前まで、読書の習慣等まるで無かった爺さん、生まれて初めて図書館通いを始めたのも数年前からのことだった。そんな読書初心者に、小説の面白さを教えてくれた作家の一人に、諸田玲子氏が有ると思っている。「お鳥見女房シリーズ」、「狸穴あいあい坂シリーズ」、「あくじゃれ瓢六シリーズ」、「奸婦にあらず」、「ちょぼ」、「炎天の雪」等々、彼女の作品を次々読んできて、一気に諸田玲子氏の作風?に惹かれたものだったが、本書「眩惑」の短編2篇は、「エッ!、これが諸田玲子氏の作品?」、別人の作品のような違和感を感じてしまった。諸田玲子氏、小説家デビューの作品ならでは・・なのだろうか。2篇共、物語の最後の最後ページで、女のしぶとさ、男の愚かしさを、ダメ押ししているような場面を登場させて終わっており、結局、主人公は、誰だったのか?、考えさせられもし、ビックリさせられる作品だった。