図書館から借りていた、藤沢周平著、藤沢版新剣客伝「決闘の辻」(講談社)には、「二天の窟(宮本武蔵)」、「死闘(神子上典膳)」、「夜明けの月影(柳生但馬守宗矩)」、「師弟剣(諸岡一羽斎と弟子たち)」、「飛ぶ猿(愛洲移香斎)」の、剣豪ものの短編時代小説5作品が収録されているが、その内の「二天の窟(宮本武蔵)」を読み終えた。
藤沢周平著 藤沢版新剣客伝「決闘の辻」
にてんのあなぐら (みやもとむさし)
「二天の窟(宮本武蔵)」
剣豪宮本武蔵は、只一人の理解者だったと言える熊本城主細川越中守忠利庇護を受けていたが、忠利没後には、心身の急速な衰えは隠せず、兵法者としての生涯を締めくくるため、霊巌寺の窟に籠り、「五輪書」の執筆に取り掛かろうとしていた。その矢先、武蔵の目の前に現れた一人の若者鉢屋助九郎。助九郎は、武蔵の衰えを見抜いており、立ち合った武蔵は 実質負けたことを悟る。もし「武蔵敗れたり」の噂が広まれば、「不敗の武蔵」に汚点を残すことになる。
武蔵は、助九郎を、このまま帰してはならぬ、自分で始末を付けようと決心する。
武蔵の晩年に焦点を当てて描いた作品だが、心身衰えた武蔵の卑劣とも思える心境、所業、人物像、藤沢周平独自の解釈がなされている。
藤沢周平の作品は、本格的時代小説、伝奇小説、江戸の市井を舞台にした人情世話物、捕物小説、架空の小藩を舞台にした下級武士を描いた作品等、多岐に渡っているが、宮本武蔵のような歴史上有名な人物を主人公にした作品は珍しいようだ。短編ながら強烈なインパクトを受ける作品だと思う。
(ネットから拝借無料イラスト)