足腰大丈夫な内に出来る限り、不要雑物処分・身辺片付け整理をしよう等と思い込んでからすでに久しいが、正直なかなか進んでいない。それでもここ2~3年には、押し入れや天袋、物置、書棚等に詰まっていた古い書籍類等をかなり大胆に処分してきた。ただ、中には「これ、面白そう・・」等と目が止まり、残してしまった書籍もまだまだ結構有る。その中に、漫画家赤塚不二夫著、元東京学芸大学附属高等学校教諭石井秀夫指導の古典入門まんがゼミナール「枕草子」(学研)が有る。多分、長男か次男かが、受験勉強中に使っていた「枕草子」の解説本・参考書の一つのようだが、錆びついた老脳でもなんとか読めそうな、まんがで描いたくだけた内容、その内いつか目を通してみよう等と仕舞い込んでいたものだ。ながびく新型コロナ禍、不要不急の外出自粛中、ふっと思い出して、やおら引っ張りだしてみた。当然のこと、本格的な「枕草子」解説本、参考書とは異なり、限られたサワリの部分に絞ったものであるが、学生時代に多かれ少なかれ齧っていたはずの日本の代表的な古典、清少納言の「枕草子」も、ほとんど覚えていないし、「古典」に疎く、苦手な人間でも、十分楽しめそうで、御の字の書である。
「かわいいもの、うれしいもの」・まんがゼミナール「枕草子」 その26
第151段 「うつくしきもの」
この時代の「うつくしい」は、現代の「美しい」の意味とは違って、小さなものを愛らしく思うという感情を意味していたようだ。この段の中で、「なにもなにも小さきものはみなうつくし」との表現が有り、それを具体的に説明している段となっている。清少納言は、あまり子供好きでは無かったという説もあるが、この段では、子供への観察眼細かく、温かな眼差しが感じられる。
かわいいものは、
「瓜にかきたる幼子の顔」「かーわゆい」
チュッ、チュッ・・「ねずみ鳴きに寄って来るすずめの子」、
チュン、チュン・・「とらわれの子すずめにえさを運ぶ親」、
ハイ、ハイ・・「二つ三つばかりの幼子の急ぎ這い来る先に、小さなちりなどを目ざとく見つけ、愛くるしい指でつまんで、大人などに見せる様子」「かっわゆいー」
「尼そぎに髪をそろえた幼女のあどけなさ・・・」「かわいい!」
「殿上童がフォーマルスーツを立派に着せられて、歩んで行くのも、かわいい!」
「愛くるしい赤子をちょっとのつもりで抱いてるうちに寝入ってしまうのも、かわいらしい」
「男の子が、幼声を張り上げ朗読する声も、とてもかわいい」
「鶏のひなが足長く白く、丈の短い着物を着たような様子で、親の後先や人の後先にかしましく鳴き立てるのも、かわいい」
「雁の子」、「蓮に浮葉のほんに小さいもの」、「ひな祭りの道具」、「葵のとても小さいもの」、・・・・「小さいものは、何でもかんでも、みーんなかわゆーい」
原文だよーん
うつくしきもの。瓜(うり)にかきたるちごの顔(かほ)。雀の子の、ねず鳴きするに、をどり来る。二つ、三つばかりなるちごの、急ぎて這ひ来るみちに、いと小(ちひ)さきちりのありけるを、目ざとに見つけて、いとをかしげなるおよびにとらへて、大人などに見せたる、いとうつくし。
(注釈)
かわいらしいもの。瓜に描いた幼児の顔。雀の子が、こちらがねずみ鳴きして呼ぶと、踊るようにしてやってくる様子。2~3歳くらいの幼児が、急いで這ってくる途中に、とても小さいゴミが有ったのを、目ざとく見つけて、とてもかわらしげな指でつかんで、大人などに見せているのは、実にかわいらしい。