第五十一回昭和39年上半期
芥川賞は短編の賞だと思っていたけれど、この作品
は二百八十枚。こういう例外もあるのか、と。今、
読むとこんな理屈っぽく生きている人は、今の時代
には皆無じゃないかな、と思う。母の世代なので、母
に聞くとこの時代には毛沢東の本を小脇に抱えた人が
たくさんいたということだから、なまじ、こういう人も
いたのだろう。しかし、今では鬱と診断されてしまいそ
うな、自殺するほどの疲れ、という理由なきものは、な
んとも若さを感じさせない。その当時の人たちはそんな
に疲れていたのだろうか、今よりもっと原始的な疲れか
もしれないけれど。どの告白も同じ調子、という批判も
確かに。手紙も同じ調子でした。でも、それを覆すほど
の魅力をこの作品はもっていると思うのでした。
柴田氏はこの作品後、余りお書きにならなくなったとか、
そういう意味では貴重な作品であることは確かです。
芥川賞は短編の賞だと思っていたけれど、この作品
は二百八十枚。こういう例外もあるのか、と。今、
読むとこんな理屈っぽく生きている人は、今の時代
には皆無じゃないかな、と思う。母の世代なので、母
に聞くとこの時代には毛沢東の本を小脇に抱えた人が
たくさんいたということだから、なまじ、こういう人も
いたのだろう。しかし、今では鬱と診断されてしまいそ
うな、自殺するほどの疲れ、という理由なきものは、な
んとも若さを感じさせない。その当時の人たちはそんな
に疲れていたのだろうか、今よりもっと原始的な疲れか
もしれないけれど。どの告白も同じ調子、という批判も
確かに。手紙も同じ調子でした。でも、それを覆すほど
の魅力をこの作品はもっていると思うのでした。
柴田氏はこの作品後、余りお書きにならなくなったとか、
そういう意味では貴重な作品であることは確かです。