古民家ギャラリーうした・ガレッジ古本カフェ便り

古民家ギャラリーうしたと隣のガレッジ古本カフェで催している作品展、日々の発見!、書評、詩などを紹介していきます。

あしたはアルプスを歩こう    角田光代

2018-08-19 15:07:16 | 角田光代
講談社文庫    2004年


距離は三キロか四キロだから、大したことないな、と思うが


女の喫煙者にしたら標高二千メートル超えのところを歩くの


は苦行だろう。


文学を書くのに似ているとおっしゃっているが、まさしく、


その通りなのだろう。



その感動を率直に人に伝える、っていうのは、すごく難しい


ことだ。たしかに、角田女史の見たり、体験した、心揺らいだ


ものは伝わってきた。


その初心な(山に対して)感じが、もろに心に伝わってきて、山



のひとつにでも昇った感じになった(いや、ウソだろ?)なんてね。


イタリア、アルプスの山々をトレッキングした紀行です。


羊はバカということらしいです。
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全日本貧乏物語   赤瀬川原平

2018-08-18 23:05:26 | 赤瀬川原平
福武文庫    1991年


2018年現在のはなし、ボクはスゴい貧乏だ。でも、貧乏は



楽しい。せっぱつまってくる感じはハラハラとスリルがあって


いい。この世のどこかには、資本主義である限り、貧乏はいる



だろう。しかし、なにかを生み出せるエネルギーがあるのは、


あるいは、変革させる力を保有しているのはいつだって貧者だ。


貧乏はイメージを沸き立たせ、創造にむかわせる原動力であると


思う。



遠藤周作、東海林さだお、椎名誠、種田山頭火ほか全十一名の


貧乏話を堪能せよ!
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異類婚姻譚    本谷有希子

2018-08-17 13:01:34 | 本谷有希子
講談社     2014年~2015年


ダンナに似てきてしまった妻、似てきた二人、というと


一般論的でおもしろくはない。


しかし、このテーマで本谷女史に書かせると実にふしぎな



おもむきのストーリーができあがる。



まさに「奇才」と呼ぶにふさわしいだろう。


はなしのリアリズムなんて、どうでもいいことなのだ。


本書所収の藁の夫にしても、そんなことありえへんわ、


で終わってしまう妄想を形にし、作品にまで昇華させ


てしまうこの才能は驚くべきものを感じる。


この衝撃は川上弘美女史を読んで以来のものであった。
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しょうがの味は熱い    綿矢りさ

2018-08-15 03:12:10 | 綿矢りさ
文春文庫    2008年、2011年



くっついて、別れて、またくっつくってだけのはなしを綿矢女史が


料理すると、こうも刺激に満ちて、飽きさせない小説に仕立て上げ


られるんだ、と感心する。


ストーリーは極めて単純だ、同棲して飽きが来て、うまくいかなくな


って、奈世は突然家を飛び出して、実家に帰る。三ヶ月経って、弦は



さみしくなって奈世を迎えに行く。


インストールや蹴りたい背中を書いていたときの輝きというかヒラメキ


みたいなものは影をひそめ、熟練した作家の手腕で描いて見せた感がある。


たしかに伝説を築いたころのキラメキはないが、ボクはたしかに綿矢女史の


存在感を感じることができた。
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ハコブネ     村田沙耶香

2018-08-12 14:18:00 | 小説の紹介
集英社文庫   2010年10月



この小説の登場人物の知佳子はセックスの対象がアース、


地球だという。その昔、聖書では、男のオナニー神は地面


に穴を穿ち、その穴にペニスを突っ込んでムラムラを解消


したというから、うん、これも、原初的なアース相手のセッ


クスだな、男ならそんな感じで話しは短絡的にすんでしま


うかもしれないが、女となると、詩的で深遠になってゆく。


もしかして、ボクも男の中の男じゃないので、不確定な性


対象は女だけれど、性自体は揺らいでいる男といったところ


か。


生物学的にいっても、性別というのは、不確定なものらしいので、


人間も、昔風に、男は男、女は女、というのは、もはや、ムリが


あるのは自明のことであり、この作品によって、セックスの対象


さえもが、対人間じゃない人もいるんだ、と明らかになったろう


(まあ、創作ではあるものの)。


ボクらはもっと自由な感覚で性を捉え、実践していく必要があるみ


たいだぜ、クレイジーさやかさんの言うとおりにさ。
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お盆休みについて

2018-08-12 03:58:12 | カフェ、ギャラリー
暑い日が続きますが、古民家ギャラリーうした・Pカフェは、8月13~15日まで



お盆休みでお休みいたします。


ご了承下さい。
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安曇野の白い庭    丸山健二

2018-08-08 11:29:17 | 丸山健二
新潮文庫 平成十二年四月


おカネを持つと魂を曇らせる、という箴言は、そういうものかも


しれないなあ、と思った。


もともと、古本カフェに持ち込まれた本で、読む気はあまりなか


ったのだが、ちょっと読んだら引き込まれて、つい最後までじっ


くりと読んでしまった。


庭にかける情熱、小説にかける熱意、その情熱がこの本を熱くし


ているのだな、と思って、それがひしひしと伝わってきて、こっ


ちまで、無意味に没頭したくなってくる。


ボクも小説を書いてるんで、その気持ちは痛いほど分かるけれど


、日記文学とはひと味違った形の日常を描いた作品と捉えた。
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あと千回の晩飯   山田風太郎

2018-08-07 14:35:39 | 山田風太郎
角川文庫    1997年



風太郎先生が晩年、晩飯を食えるのはあと千回くらいだろう


というテーマに書かれたエッセイ。


風太郎先生は小柄で痩せているのに、糖尿病で白内障の手術が


できないくらいに進行していて、パーキンソン氏病だったとい


う。乱歩先生を敬愛し、漱石を崇拝していたようだ。


けど、晩飯のメニューがのっていたけれど、これじゃ、糖尿に



なるのもやむなし、と思われた。



風太郎先生の生死観を知る手がかりにもなり、奇才と呼ばれた


先生の素のお姿を垣間見られる格好のテクストになっている。
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嵐のピクニック   本谷有希子

2018-08-05 02:38:03 | 本谷有希子
講談社   2012年



21才の時に、「劇団 本谷有希子」を旗揚げって、21才? と



思い、TVなどにも出ているようだし、ミーハー気分で読んでみた。



帯には、「傑作である」とある。内容は誇大妄想とかをテーマに



していると言っていいか、イメージの飛躍があって、良いのでは



ないか、と思ったが、本谷女史はアウトサイダーなのだろうか。


まあ、アウトサイダーでもなければ、劇団なんて立ち上げないよな。



どの作品もイメージとして頭に残るものばかりだが、特にイメージして



形にしてみておもしろくなったのが、「人間袋とじ」だろう。



足の指をくっつけてみて、恋人にしもやけみたいのを剥がさせる。



その恐怖……中に宇宙人でも入っていて食べられちゃうんじゃないか、


と思わせる妙技。イメージを膨らませる、とはこのことだろう。



この人のイメージに終わりはないのだろう。
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