映画と本の『たんぽぽ館』

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私の中のあなた

2009年10月19日 | 映画(わ行)
アナが訴訟をおこした本当の理由

           * * * * * * * *

白血病に苦しむ姉ケイト。
姉のためのドナーとなるべく、遺伝子操作で生まれてきた妹アナ。
11歳のアナは、自分の体のことは自分で決める、として、
臓器提供を強いる両親を相手に訴訟を起します。

このようなストーリー紹介をみると、社会派の作品かと思うのですが、
これはやはり家族の絆の物語です。


本当は私は病気の女の子の映画が嫌いなのです。
あまりにもミエミエのお涙頂戴劇に食傷気味。
にもかかわらず、この作品を見る気になったのは、
両親を相手に訴訟というこれまでにない切り口と、
アビゲイル・ブレスリンのファンなので・・・。


実際、これは単なるお涙頂戴劇ではないのです。
まず、アナの出生自体がすごいですよね。
姉のドナーのために生まれてきた・・・。
もう、これは本人もわかっていることだろうと思うのですが、
これって自己のアイデンティティのためには非常につらいです。
倫理的にも、そんなのあり?と思いますね。
映画では、そういうために生まれてきたクローン人間を題材とした
SFもあったりします。
でも、この作品ではそこのところはわりとさらっと過ごしています。

むしろ、これまで姉の治療のために
骨髄移植などで何度も体に体にキズを付けられ、
入院を余儀なくされてきたことを問題にしています。
幼い子供では拒否することもできません。
親が子供のために、臓器を提供する。
こういう話はよくききますし、これは本人納得の上なのでいいんですよね。
けれど、こういうのはどうなのかって、やはり考えてしまいます。


始めはケイトのために一致団結、みんなで支えあう温かな家族・・・、
そのように見えたのですが、
アナの訴訟によって、次第に家族に亀裂が入ってきます。
特に母親はケイトしか目に入っていなくて、
ケイトを生かすためならどんなこともいとわない。
ほとんど狂的といってもいいほどに・・・。
これではただでさえ、他の兄妹たちはめげるかもしれない。

そんな中で、なぜかこの二人の姉妹は屈託がないのですよ。
不思議に思っていると、最後に明かされる秘密。
なぜ、アナがこんな訴訟を起したのか。
この真相は、じんわりと心に染み入ってきまして、泣けます。
・・・はい、結局泣けるのですけれどね。

運命は時として残酷ではあるけれど、
それを受け入れることも大事なのかなあ・・・。
ふたたび取り戻された絆の中で、
家族みなそれぞれが、成長したのでした。


抗がん剤のためにくりくり坊主となったケイトが、
同じ病の少年と恋をする。
そんなところも素敵でした。

ところで、キャメロン・ディアスとアビゲイル・ブレスリンって、
なんだか似ている気がするのですが・・・。
目元のあたりが。
ホンモノの母娘のようです。

また、アビゲイル・ブレスリン。
この子は、とってもかわいいというタイプではないのですが、
この作品ではところどころ、ドキリとするくらい大人びて見える。
特に憂いを含んだ表情などで。
・・・すごくいい女優になりそうな予感。
先がたのしみです。

2009年/アメリカ/110分
監督:ニック・カサベテス
出演:キャメロン・ディアス、アビゲイル・ブレスリン、アレック・ボールドウィン、ソフィア・バジリーバ、トーマス・デッガー、ジェイソン・パトリック