四十日と四十夜のメルヘン (新潮文庫)青木 淳悟新潮社このアイテムの詳細を見る |
ううむ・・・。
思わずうなってしまいます。
野間文芸新人賞受賞作というこの本。
すごい傑作か駄作かどちらかだと思います・・・。
私にはよくわかりません・・・。
この本には「四十日と四十夜のメルヘン」と
「クレーターのほとりで」の二編が納められています。
まず、「四十日と四十夜のメルヘン」。
日記風のようでもある。
日付がついている。
7月6日。
7月7日。
7月4日(あれ?)。
7月5日。
日にちの順番はめちゃくちゃだし、同じ日付が何回もくりかえし出てくる。
スーパー・メーキューとOKマートの話。
腐った梨の話。
フランス語講座の話。
チラシのポスティング。
チラシの裏に書きなぐられる小説。
・・・これはもしかして、あれでしょうかね。
ジグソーパズルのように、
いろいろなディティールがバラバラに配置されていて、
最後のピースがハマれば全貌が見えてくるという・・・。
しかし、期待もむなしく、
最後までいってなお、よくわからない全貌。
例えば私なら、のんびりと犬と散歩中の時などに、
とりとめもなくいろいろなことを考えてしまいます。
いいお天気。
雨の心配はなさそう。
そういえばこの間とうとう新しい傘を買ったんだった。
水玉模様の傘。
水玉といえば、子供のときにジョーゼットのふんわりワンピースを買ってもらって、お気に入りだったな。
それが白地に水色の水玉で。
あの頃、アパートのお隣に同い年の男の子がいて・・・・
こんな風に、つぎつぎと連想ゲーム風に思考が流れてゆく。
この本はまるでそういう思いを、
一つ一つ丁寧に書きとめたみたいな感じがします。
この本の解説で保坂和志氏が冒頭で言っています。
『私はこの文庫解説を、「おもしろくなかった」「意味がわからなかった」
と思っている人を想定して書こうと思う。』
・・つまり、かなり意味がわからないという人がいることを
想定しているようですね。
それで私も少し安心したりして・・・。
そもそも、この話、単行本と文庫本がかなり違うそうなんです。
それで、この解説の締めくくりがこう。
『冒頭に書いた「おもしろくなかった」「意味がわからなかった」人たちは、
いよいよ「?」「?」「?」になってしまったのではないかと思う・・・・・』
それはないじゃないですか。
・・・というわけで私など、最後までわからなかった一人。
結局書き手は誰?
ずっと1人暮らしに思えていた「語り手」が、
ラストでいきなり男と同棲していたりするし。
これは1人の視点で描いたものではなかったのか?
7月に腐った梨? 季節さえも虚ろだ・・・。
捨てるのだったら、なぜ買うんだ。
チラシにうずまった部屋は誰の部屋???
あえてこういう困惑を生み出すためのストーリーなのでしょうか。
老化現象でしょうか。
柔軟な思考力のないオバサンの、これも限界なのかも・・・。
もう一篇、「クレーターのほとりで」も、かなり幻惑されてしまいますよ。
壮大?な人類創生譚です。
なんとも取り留めのない物語を、あなたもお楽しみください・・・・。
満足度★★☆☆☆