信長は女だったからこそ、覇者となった!
* * * * * * * * *
織田信長は女性だった――!
「織田信長はタイムスリップした現代の高校生だった――!」に匹敵する
センセーショナルな発想です。
興味を持って読んでみました。
この著者の作品を読むのは始めてですが、
普段はヨーロッパの歴史物を主に書いている方ですね。
今作中、信長(というより明智光秀)は、バテレンの合理的な戦の仕方に学んだことになっており、
そのあたりも詳しい記述がありますが、
それこそが著者の真骨頂と伺えます。
さて、今作、織田信長は確かに女で、その正体を知るのは一部の側近のみ。
彼の父が「男ではなく女であることの発想を大事にせよ」と
彼女に家督を継がせたのです。
通常は女であれば家長となることはできない。
そのため女であることを隠して王位についたりする様々な物語がありますよね・・・。
(様々な、といってもリボンの騎士くらいしか思い浮かばないけど)
さて、織田信長の行った大胆な人材登用、
鉄砲の導入や長槍など新たな戦法の採用、
楽市楽座・・・
これらはすべて、これまでのしきたりにとらわれない女であるがゆえの発想だった、とします。
まあそれはよいとして、読み進むうちに、
これは明らかに男性が描いた女性像だなあ・・・と見えてきます。
だって、信長が斎藤道三と対面するやいなや、
いきなり濡れ場に突入したりするんですよ・・・。
彼女はおのれの体も武器と心得ていて男を操ろうとする。
道三も面白がって、彼女の援助をするというのは歴史のとおりですが。
信長が女というのはこういうことなのか・・・、
ちょっと期待した方向とは違いました。
著者が女性なら、もっと違った方向に話が進んだのでは・・・?
信長はうちわでくつろぐ時には男装をとき、
御長(おちょう)という女性の姿に戻ります。
信長の妻、お濃にはまさか自分が女性であることを隠すわけに行かないので、
真相を伝え、親友のように気兼ねなくなんでも話し合える間柄。
そのお付きの者ということにして、
素知らぬ顔で二人して明智光秀と対面したりします。
さて、そうなるとやはり気になるのは、明智光秀との関係ですね。
明智光秀は眉目秀麗(禿げてるけど)、
優秀で、かねてより信長が聞きかじっただけのバテレンの情報をよく勉強して知っている。
そしていつしか彼に思いを寄せ、信長でなく御長として彼の愛人になってしまいます。
(まさかと思うけれど光秀は御長が信長だと気づいていない)
しかし複雑な“覇者としての信長”と“女としての御長”の心。
正論ばかりで煮え切らない明智光秀に信長はついキレて、
衆目の面前で光秀を罵倒してしまう。
・・・つまり完全にヒステリーですね。
確かに信長はこういうキレ方をすると知られていますが、
それが女ゆえであった・・・というのは、同じ女性としてはがっかりです。
ついにあるとき、信長は光秀の面前で着物を脱ぎ捨て、自らの正体を明かします。
(薄々気づいていた・・・と光秀は言いますが・・・)
御長は、光秀を試すかのように無理難題を押し付けますが・・・。
う~ん、どうなのでしょう。
話としては面白かったのですが、あまり好きではない。
そういうことになるかと思います。
あ、でも、ラストは思いがけない歴史の抜け道。
めげずに最後まで読んでよかった。
ちなみに、秀吉は、信長を女と知るやいなや襲いかかってくるヒヒジジイです。
今作はTVドラマ化されていまして、
今年(2012年)12月末、フジテレビ系で2夜連続放送されるとの事。
信長には天海祐希。
光秀には内野聖陽。
う~ん、見たくもあり、見たくもなし・・・。
「女信長」佐藤賢一 新潮文庫
満足度★★★☆☆
(これも強力なプラス・マイナスで、結果普通・・・)
![]() | 女信長 (新潮文庫) |
佐藤 賢一 | |
新潮社 |
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織田信長は女性だった――!
「織田信長はタイムスリップした現代の高校生だった――!」に匹敵する
センセーショナルな発想です。
興味を持って読んでみました。
この著者の作品を読むのは始めてですが、
普段はヨーロッパの歴史物を主に書いている方ですね。
今作中、信長(というより明智光秀)は、バテレンの合理的な戦の仕方に学んだことになっており、
そのあたりも詳しい記述がありますが、
それこそが著者の真骨頂と伺えます。
さて、今作、織田信長は確かに女で、その正体を知るのは一部の側近のみ。
彼の父が「男ではなく女であることの発想を大事にせよ」と
彼女に家督を継がせたのです。
通常は女であれば家長となることはできない。
そのため女であることを隠して王位についたりする様々な物語がありますよね・・・。
(様々な、といってもリボンの騎士くらいしか思い浮かばないけど)
さて、織田信長の行った大胆な人材登用、
鉄砲の導入や長槍など新たな戦法の採用、
楽市楽座・・・
これらはすべて、これまでのしきたりにとらわれない女であるがゆえの発想だった、とします。
まあそれはよいとして、読み進むうちに、
これは明らかに男性が描いた女性像だなあ・・・と見えてきます。
だって、信長が斎藤道三と対面するやいなや、
いきなり濡れ場に突入したりするんですよ・・・。
彼女はおのれの体も武器と心得ていて男を操ろうとする。
道三も面白がって、彼女の援助をするというのは歴史のとおりですが。
信長が女というのはこういうことなのか・・・、
ちょっと期待した方向とは違いました。
著者が女性なら、もっと違った方向に話が進んだのでは・・・?
信長はうちわでくつろぐ時には男装をとき、
御長(おちょう)という女性の姿に戻ります。
信長の妻、お濃にはまさか自分が女性であることを隠すわけに行かないので、
真相を伝え、親友のように気兼ねなくなんでも話し合える間柄。
そのお付きの者ということにして、
素知らぬ顔で二人して明智光秀と対面したりします。
さて、そうなるとやはり気になるのは、明智光秀との関係ですね。
明智光秀は眉目秀麗(禿げてるけど)、
優秀で、かねてより信長が聞きかじっただけのバテレンの情報をよく勉強して知っている。
そしていつしか彼に思いを寄せ、信長でなく御長として彼の愛人になってしまいます。
(まさかと思うけれど光秀は御長が信長だと気づいていない)
しかし複雑な“覇者としての信長”と“女としての御長”の心。
正論ばかりで煮え切らない明智光秀に信長はついキレて、
衆目の面前で光秀を罵倒してしまう。
・・・つまり完全にヒステリーですね。
確かに信長はこういうキレ方をすると知られていますが、
それが女ゆえであった・・・というのは、同じ女性としてはがっかりです。
ついにあるとき、信長は光秀の面前で着物を脱ぎ捨て、自らの正体を明かします。
(薄々気づいていた・・・と光秀は言いますが・・・)
御長は、光秀を試すかのように無理難題を押し付けますが・・・。
う~ん、どうなのでしょう。
話としては面白かったのですが、あまり好きではない。
そういうことになるかと思います。
あ、でも、ラストは思いがけない歴史の抜け道。
めげずに最後まで読んでよかった。
ちなみに、秀吉は、信長を女と知るやいなや襲いかかってくるヒヒジジイです。
今作はTVドラマ化されていまして、
今年(2012年)12月末、フジテレビ系で2夜連続放送されるとの事。
信長には天海祐希。
光秀には内野聖陽。
う~ん、見たくもあり、見たくもなし・・・。
「女信長」佐藤賢一 新潮文庫
満足度★★★☆☆
(これも強力なプラス・マイナスで、結果普通・・・)