映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「海街diary5 群青」 吉田秋生

2012年12月23日 | コミックス
晴れた日は空が青い

海街diary(うみまちダイアリー)5 群青 (flowers コミックス)
吉田 秋生
小学館


            * * * * * * * * *

まずはこの本の深い青色の表紙に目を奪われます。
まさに「群青」。
この本は、この空の青さがバックを流れるテーマです。


すずと風太は、それぞれにある秘密を知ってしまいます。
そのことは誰にも話してはいけないと、口止めされてしまいました。
そして、それは確かに口に出してはいけないことだと、理解しているのです。
でも、いまお互いを知り、信頼しあっているこの二人は、
それを話して相手の意見を聞いてみたくて仕方ありません。
風太は思います。
「空はこんなに青いのに・・・いちばん話したいのに・・・話せない」
それは同時にすずの気持ちでもありました。
でもお互い、やはり口にすべきでないことは話さないのです。
うん、いい子たちですね。
いつもなら心浮き立つ青い空なのに、
なんだか重い二人・・・。


さて次は山猫亭のおっちゃんのお話。
人は見かけによらないといいますが、このおっちゃん、
エベレストの見えるところに5年ばかり住んでいたというのです。
その彼は言う。
「どんなサイアクな気分の時でも 晴れれば世界で一番蒼い空やし、
その下には神様の住んどる世界で一番高い山や。
なんでこんなにキレイやねん。
人の気ィも知らんで―とか思っとった」
「お陽さんが人の気ィにいちいち反応しとったら
エライことなってまうわ」


また、今まで苦労を重ねひたむきに生きてきた人が、
重い病気にかかっていることを知った佳乃。
「無性に腹が立ちます。神様ってやつに。
・・・それでこの仕打ちかって。
あんたケンカ売ってんのかって」
同僚はいいます。
「でも神様は人の事情をいちいち考えてはくれない。
だから神様はありがたくて・・・恐ろしいんでしょうね」


色々な人の生き様や思い・・・
そういうものを見たすずはやはり思うのです。

「晴れた日は空が青い。
どんな気持ちの時もそれは変わらない。
それだけは神様に感謝したいと思います」

人の気持とはかかわりなく、
ひたすらあるがままの自然、青い空、そして神様。
こういう不動のものが、結局は私たちの心の揺れや浮き沈みを鎮めてくれるのかも知れません。
統一したテーマの流れるこの巻は、
またまたレベルの高い一冊でありました。


緩和ケア病棟の担当となった幸。
イメージと裏腹に、仕事の鬼と化した佳乃。
謎のアフロ店長とお似合いそうな謎の千佳。
風太とともに、まだまだ心身ともに成長中のすず。
今後も楽しみいっぱいです。

「海街diary5 群青」 吉田秋生 小学館フラワーコミックス
満足度★★★★★