映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「その日まで 紅雲町珈琲屋こよみ」 吉永南央

2012年12月04日 | 本(その他)
その心意気で、生きたい

その日まで 紅雲町珈琲屋こよみ (文春文庫)
吉永 南央
文藝春秋


            * * * * * * * * *
 
コーヒー豆と和食器のお店を経営する老女・お草さんのシリーズ、
「萩を揺らす雨」の続編です。


「小蔵屋」の近くに「つづら」というライバル店が開店しました。
所狭しと商品が並んでいる和風小物店。
実は私もそういうお店をのぞくのが好きだったりしますが・・・。
このお店は当初こそ賑わっていましたが、儲かればいいという感じで、
客あしらいが悪かったり商品への愛情が感じられなかったり・・・と、
どうも評判はあまりよろしくはなく、
まあ、小蔵屋のライバルには成り得ないですね。
それよりも問題は、この店のオーナーが絡んでくる、あるできごと。


ご近所で、経営難の店のオーナーから詐欺まがいの手口で
家屋を買い叩く業者グループがいるという噂が・・・。
「つづら」のオーナーもその連中とつながりがあるらしい。
気丈なお草さんは、色々と調べ、
その中心人物たるドンと直接に対面することになるのですが・・・。


どれも他人事ではあり、余計なお世話かとも思いながら
ついおせっかいを焼いてしまうのは、
昔まだ幼い長男を亡くしてしまった苦い思いが残っているから。
彼女の中ではいつまでも胸に残っている悔いであり、
そしてまたそれこそが彼女の行動原理であったりもするのですね。


さて、ほとんどヤクザの親分のところに乗り込んでいく“姉さん”、というふうのお草さん。
さすが年の功なんですよね。
実際細腕のお年寄りに過ぎませんが、その気迫で勝負。
かっこいいです。
こんな風に年をとりたいな、と思います。


さて「小蔵屋」は、お草さんが気に入った品を、ゆったりと展示してあるようです。
こんなお店で和風のコーヒーカップを買ってみたいな、と思いました。
もちろん珈琲のお豆も。
珈琲の香とちょっとぬくもりのある上品な和風小物。
そしてお草さんのお人柄に惹かれて
きっとまた続きも読んでしまうでしょうね・・・。

「その日まで 紅雲町珈琲屋こよみ」 吉永南央 文春文庫
満足度★★★☆☆