映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

69 sixty nine

2013年10月22日 | 映画(さ行)
無軌道な若さが心地よい



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「許されざる者」の李相日監督に、脚本が宮藤官九郎
・・・ということで10年ほど前の作品ですが、興味を持ちました。


原作は村上龍。
氏の自伝的作品だそうです。
1969年。
ベトナム反戦運動が高まり、大学紛争に揺れる69年。
そうそう、あのアポロ11号の月着陸も、この年の出来事。
長崎は佐世保の高校生ケン(妻夫木聡)は、
友人のアダマとイワセを誘い、
演劇、アート、ロックのフェスティバルを開催しようと計画します。
作品は、そんな彼らの、ノーテンキな日常をコミカルに描いていきます。
時には当時の大学の学園紛争を皮肉に見つめつつ、
高校のバリケード封鎖を試みたりします。
それというのも何の思想があるわけでもなく、
ただ単に憧れのレディ・ジェーンの気をひくためだったりする。
何をやりたいのかよくわからない。
けれども何かをしないと内側のエネルギーが爆発してしまいそうだ・・・
そんな無軌道な若さが心地よい。
ケンはどこかちゃらんぽらんだけれど、発想と決断力が優れていて、
実行力、リーダーシップもすばらしい。
う~ん、観ていて楽しい。
オバサンは当時の音楽や世相を懐かしみつつ浸ってしまったのでした。
さすがクドカンの世界です。



さて、この作品の前に「クロニクル」を見たので、
こちらのケンと父親の関係に注目してみました。
(ケンたちが間違って超能力を身につけたらどんな騒ぎになったか、
そんなことを想像するだけでも楽しいのですが、
この際関係ありません!!)
ご多分にもれずケンは、ちょっと父親(柴田恭兵)が苦手のようなのです。
父親は放任主義のようで、
息子のやることにはほとんど口を出さない。
けれども、どこか息子を信頼しているようなところがあって、
息子が学校のバリケード封鎖の首謀者として停学になっても、寛容なのです。
だから本作では少なくともケンにとって父親は、
目標でもなく嫌悪する必要もなく、何のプレッシャーでもない。
むしろ最期の拠り所というふうでもある。
いいですね。
理想の父親像。
もちろん日本の作品でも父と息子の相克が描かれているものも多いですが、
アメリカ作品に比べれば、全然少ないと思います。
なぜアメリカではあんなにも父親と息子の間に緊張が走るのか・・・。
今後も深めていきたいテーマだなあ・・・。

69 sixty nine [DVD]
村上龍,宮藤官九郎
東映


「69 sixty nine」
2004年/日本/113分
監督:李相日
脚本:宮藤官九郎
原作:村上龍
出演:妻夫木聡、安藤政信、金井勇太、太田莉菜、柴田恭兵

無軌道度★★★★☆
満足度★★★★☆