映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

人類資金

2013年10月26日 | 映画(さ行)
本を読んだほうがいい(多分)



* * * * * * * * * *

敗戦直前に旧日本軍が隠匿したとされる財宝“M資金”をめぐる人々の葛藤を描きます。


金融ブローカーを名乗る詐欺師・真舟(佐藤浩市)。
彼の詐欺の手口にはよく“M資金”が出てくるのです。
ある日、石(セキ)(森山未來)という男が現れ、
M資金を管理する財団「日本国債文化振興会」に来てほしいと、
強引に真舟を連れ出すのですが、
なんと、「10兆円のM資金を50億円の報酬で盗みだしてほしい」という依頼でした。
自分の組織のお金を盗み出す・・・?
つまりは、財団内部での抗争があるということなのですね。
石を使い真舟を呼び出した“M”(香取慎吾)は、
かつて“人類資金”として託されたはずのこの莫大な資金を、
その正しい目的のために使いたいと考えているのでした…。



ロシア、タイ、アメリカ、そして日本。
4カ国に渡るロケや、ニューヨーク国連本部での撮影もあり、
そのスケールの大きさを売りにしているようなのですが・・・。
うーん、正直ちょっと拍子抜けです。
私は実は福井晴敏さんの本が大好きなんです。
ワクワク・ハラハラ・ドキドキ、
子供の頃夢中で物語の本を読みふけった、その時のようなのめり方ができるんですよね。
でもそれなのに、
なぜか映画化となったものはち~っとも面白くない。
今まで何度かそういう失望を味わってきました。
でも本作は、本を読まず、いきなり映画作品に向かったのですが、
やっぱりあんまり興奮できない。
なぜ??? 
まあ、それが分かれば苦労しませんよね。
私には実写よりもアニメにしたほうがストーリーが生きる気がするのですが・・・。
たぶん、本作も本を読めばきっと面白いに違いありません。
うーん、本当はもっと色々なエピソードの枝葉があるのに
無理に2時間ちょっとに収めようとするからなのかもしれません・・・。



特に今作について言えるのは、
まずテーマがキレイ事すぎるような気が・・・。
これなら、ふつうに痛快コン・ストーリーにしたほうがいいなあ。
その後、アジアの小国の子どもたちのためにそのお金を使ってみました~、
みたいになったほうがオシャレ。


それから、“人類資金”という壮大なミッションを抱きながら、
実のところアジアの小さな一国にPDA(携帯情報端末)を配っただけっていうのが
なんだかセコすぎるような・・・。
(いや、これがほんの手始めということなのでしょうけれど・・・)
にしてもこれでは、人類滅亡の危機を救うと言いながら、
ご町内にたまたま現れた一人の宇宙人をやっつける
・・・みたいな、チープなTVの子供番組とあまり変わらない・・・。
だからなんというか、スケール感がちぐはぐに思えてしまったわけです。
まあ、でも、国連での演説シーンではちょっぴり泣けましたけどね(^_^;) 




でも印象に残ったのは、
「人類の7割がスマホを持つどころか、電話をかけたこともない」という話。
そうなのか、
実は地球上にある「エリジウム」に、私達は住んでいる、ということなのですよね。
そういうところは、もう少し自覚したほうがいいと思いました。



2013年/日本/140分
監督:阪本順治
原作:福井晴敏
脚本:阪本順治、福井晴敏
出演:佐藤浩市、香取慎吾、森山未來、観月ありさ、岸部一徳

スケールの大きさ★★★☆☆
満足度★★☆☆☆