映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「グラスホッパー」 伊坂幸太郎

2015年11月25日 | 本(ミステリ)
3人の殺し屋 VS 普通人

グラスホッパー 角川文庫
伊坂 幸太郎
KADOKAWA / 角川書店


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「復讐を横取りされた。嘘?」
元教師の鈴木は、妻を殺した男が車に轢かれる瞬間を目撃する。
どうやら「押し屋」と呼ばれる殺し屋の仕業らしい。
鈴木は正体を探るため、彼の後を追う。
一方、自殺専門の殺し屋・鯨、ナイフ使いの若者・蝉も「押し屋」を追い始める。
それぞれの思惑のもとに―「鈴木」「鯨」「蝉」、
三人の思いが交錯するとき、物語は唸りをあげて動き出す。
疾走感溢れる筆致で綴られた、分類不能の「殺し屋」小説。


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現在映画公開中の本作、
さしあたって劇場で見ることはなさそうなので、
原作の方を読んでみることにしました。
登場人物は、自殺専門の殺し屋・鯨、
ナイフ使いの若き殺し屋・蝉、
人を道路に押し出して交通事故死させる押し屋。
そして、妻を殺され、復讐を誓う鈴木。
・・・というわけで、極めて物騒です。
彼らそれぞれのシーンが交代に入れ替わりながら描写されていきますが、
なんだかこの殺し屋たちそれぞれに親しみを感じてしまう。
それぞれに人の命などなんとも思わない、虚無的な性格、
殺人も実に淡々とこなしてしまう彼らに、
だけれどもなんだか憎みきれない何かを感じてしまいます。
そんな中で、唯一の普通人が、鈴木。
名前も普通です。
そんな彼には私達も最も自分を重ね合わせやすい。
彼は妻の復讐を果たすためにその相手組織に潜入し、
復讐のチャンスを狙おうとしているのですが、
ド素人の彼は冒頭からすぐにピンチに陥ってしまいます。
いい人過ぎる鈴木はいかにも頼りなげで、ハラハラさせられっぱなし。
そうこうするうちに、ずっと接点がなかった彼らが交差するクライマックス。
ユニークな面白さ。
これぞ伊坂ワールド。
多分後日になると思いますが、映画もみる事にはなるでしょう。

「グラスホッパー」伊坂幸太郎 Kindle版にて
満足度★★★★☆