映画と本の『たんぽぽ館』

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猿の惑星:聖戦記 グレート・ウォー

2017年10月26日 | 映画(さ行)
支配するものとされるもの



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名作「猿の惑星」をリブートした「猿の惑星:創世記(ジェネシス)」、
「猿の惑星:新世紀(ライジング)」に次ぐシリーズ第3弾。
3年に一度のペースで続きが発表されているのですが、
どうも私は内容を忘れてしまうので、この方式は苦手で・・・。
今回も見なくていいかとも思ったのですが、本作が一応最後のようなので、
やはり見ることにしました。
それにしても、邦題の「創世記」、「新世紀」、「聖戦記」と
韻も字数もうまく揃えたものですね。
お見事!



さて、ストーリーは・・・
高度な知能を得た猿と人類が全面戦争に突入してから2年。
猿を率いるシーザーは森の奥深くに身を潜めて暮らしていました。
彼は猿と人は互いに干渉しないという方法で共生していくべきと考えていたのです。

しかし、人の奇襲を受けて妻と長男を殺されてしまったことから、
敵の冷酷なリーダー・大佐への復讐を誓います。
仲間を新しい隠れ場所へ向かわせ、シーザーは3匹の仲間とともに大佐を倒す旅に出ます。
そしてその道中、口をきけない人の少女と、動物園出身のチンパンジーも加わりますが・・・。



あんなに人と猿の共存を願っていたシーザーですが、
本作では一転して「人間憎し」の立場へ向かってしまうのが悲しい・・・。
「創世記」ではアルツハイマーの新薬を猿に投与したために、
猿が高度な知能を持つに至ります。
次の「新世紀」では、猿インフルエンザのために人類が激減。
そして本作で、いよいよあの“猿が支配する”地球となるための橋渡し。
一体どうして・・・? というのはつまり、
もともと人が蒔いた災いの種、ということか。



シーザー等、群れのリーダーを失ったサルたちは
あっさり人の軍隊に捕まり奴隷のように使役されることになります。
こんなところから、本作は「人と猿の物語」を超えて、
「支配するものと、支配されるもの」、「虐げるものと、虐げられる者の物語」
であるような気がします。
人類はそういうことをいつでも繰り返してきた。
それは人種の差であったり、宗教の差であったり、
時には貧富の差、性差であったりもする。
突き詰めればおなじ「人間」なのに。
だからこれは普遍的な、虐げられる者が闘争し、解放される物語。



猿たちがそれぞれ個性たっぷりなのが良かった。
中でもチンパンジーのバッド・エイプがナイスでした。
殺伐な争いの中で、ふと心をなごませてくれます。
どこまでも心優しいオランウータンさんもよかった・・・。
それを言ったらよほど人間の大佐のほうが凶暴だし。
シーザーに助けられた人間の兵士くんは
猿たちのために何かをするのかと思ってみていたら
結局何もせず虚しく死んでいったし・・・
「地獄の黙示録」のようでもあり「大脱走」のようでもある。
細かなシーンが結構興味深くて、退屈しませんでした。



ところで、シーザーの幼い子供がコーネリアス。今回登場した少女がノバ。
・・・ということはこのまませいぜい20年後くらいがあの「猿の惑星」なのでしょうか?
いや、いくらなんでもそれではスパンが短すぎる気がする。
やはりこれは、単に原典へのオマージュということか・・・。


<シネマフロンティアにて>

2017年/アメリカ/140分
監督:マット・リーブス
出演:アンディ・サーキス、ウッディ・ハレルソン、スティーブ・ザーン、カリン・コノバル、アミア・ミラー
「猿の惑星:聖戦記 グレート・ウォー」
謎解明度★★★★☆
満足度★★★.5